大脳型では発症をできるだけ早く疑い,早く診断して,速やかに移植を実施し,早期に療育を開始することが,その後のQOLの向上につながる.加えて,男性ALD患者すべてに対しては,副腎機能を定期的に評価し,副腎皮質ホルモン補充の治療計画を進めることが,予後に対しても重要である.
一方,近年の状況として,早期診断例や移植治療の向上により,小児大脳型(CCALD)や思春期大脳型(AdolCALD)でも神経症状の進行が抑止され,学校生活に復帰する症例も増えている.そのなかには視覚障害や聴覚障害,知的障害,運動障害,そしてそれらが重複した障害をもつ患児も含まれており,今後はこのような患児に適した教育,療育環境を整えていくことが重要である.またALD患者では外からの情報が入りにくいこともあり,興奮しやすい傾向もある.そのような場合には周囲が協力して出来るだけ患者に情報を伝えるようにすることが望まれる。また抗躁薬としてのバルプロ酸投与が有効であった症例も報告されており1),学校や家庭におけるQOLの改善にその効果が期待される.
1)Salsano E, Gambini O, Giovagnoli AR, et al: Effectiveness of valproate for the treatment of manic-like behavior in X-linked adrenoleukodystrophy. Neurol Sci 2012; 33: 1197-1199.