疫学と遺伝形式

 原因遺伝子ABCD1はX染色体長腕のXq28上にあり、X連鎖性の遺伝形式を呈する。女性保因者も加齢とともに脊髄や末梢神経障害,尿・便失禁などの症状の出現を認めることがある.また,発端者の3~10 %前後はde novoの変異と考えられており,患者の母親が必ずしも保因者であるとはかぎらない1)

 発症頻度は米国では出生男児21,000人に1人が患者,出生女児14,000人に1人が保因者との報告がある2).国内では厚労省難治性疾患克服研究事業による1990~1999年の10年間における全国調査において3),3~5万人に1人の男性患者の頻度が推定されているが,後方視的なアンケート調査であり,おそらく欧米と同程度の男性患者が存在すると考えられている.病型別の発症頻度では,小児大脳型(CCALD) 29.9 %,思春期大脳型(AdolCALD) 9.1 %,adrenomyeloneuropathy (AMN) 25.3 %,成人大脳型(ACALD) 21.4 %,小脳・脳幹型 8.4 %,発症前 4.5 %という結果で,欧米に比べてACALDが多く,小脳・脳幹型の多さも日本人の特徴とされている.一方,本調査ではアジソン型の症例はなく,欧米でのアジソン型が6~14 %を占めることから,国内ではアジソン病の原因としてのALDが十分に周知されていない可能性も示唆される.

 2012年度におけるALDの国内難病医療受給者証保持者数は193人であったが,2016年度に厚生労働省難治性疾患政策研究班において行った全国調査では,一次調査の中間報告からの推定値として400人程度の国内患者の存在が推測されている4)

1)Shimozawa N, Honda A, Kajiwara N, et al: X-linked adrenoleukodystrophy: Diagnostic and follow-up system in Japan. J Hum Genet 2011; 56: 106-119.
2)Bezman L, Moser AB, Raymond GV, et al: Adrenoleukodystrophy: incidence, new mutation rate, and results of extended family screening. Ann Neurol 2001; 49: 512-517.
3)Takemoto Y, Suzuki Y, Tamakoshi A, et al: Epidemiology of X-linked adrenoleukodystrophy in Japan. J Hum Genet 2002; 47: 590-593.
4) 副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン作成委員会(編). 副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017. 診断と治療社. 東京