早期診断・発症前診断の推奨

1 発症後早期診断の推奨

ALDの予後改善には,神経症状のみならず,副腎不全もできるだけ早期に診断することが極めて重要である.特に大脳型に対する造血幹細胞移植では,発症早期の移植が良好な治療効果を得るうえで極めて重要であり,そのためには多彩な症状を呈するALDの症状を広く周知し,早期診断につなげることが推奨される.さらに原因未確定のアジソン病男性患者や、痙性対麻痺や脊髄小脳変性症の患者においてはALDの鑑別として血中極長鎖脂肪酸の検査は考慮すべきである。さらに近年、脊髄小脳変性症の臨床像を示す症例でペルオキシソーム形成異常症の病因であるPEX遺伝子異常の報告もあり、やはり血中極長鎖脂肪酸が重要な診断マーカーとなる可能性がある.

2 発端者の家系解析からat risk患者診断の推奨

男性ALD患者の場合、大脳型発症前からの介入により造血幹細胞移植を発症早期に実施することは,大脳型発症後の予後改善につながる.したがって,at riskの男性患者の早期発見のためには,発端者やその家系の方々に対してALDの医学的情報を十分に伝え,遺伝カウンセリングを提供することが推奨される.その際,ALDではde novoの変異もみられ,発端者の母親が必ずしも保因者であるとはかぎらないこと,発症前に診断しても現時点ではたとえ同一家系内でも病型や予後の予測はできないことに言及するべきである.男性の発症前診断を行う場合は,副腎不全とCCALDの発症年齢を踏まえ,できれば2歳,それ以降ならできるだけ早期に診断することが推奨される
家系内で,ABCD1遺伝子変異を受け継いでいる可能性のある女性の検査については,女性保因者の成人以前の発症が極めて稀なことから,遺伝学的検査は成人後に行うことが望ましい.また,児の出産を計画するに際しては,あらかじめALDの医学的情報を十分に伝え,遺伝カウンセリングを提供することが望ましい.ただし,移植ドナー候補を検討する場合には,未成年であっても検査を進めることが想定され,その場合にも十分な医学的情報の提供,検査の必要性の説明,遺伝カウンセリングの提供が必要である.

3 発症前診断男性患者のフォローアップ指針

発症前に診断しても,現時点ではどの病型になるのか,いつ発症するのかは予測できない.したがって,患者の転居や主治医の異動に影響されない継続的なフォローアップ体制の構築と指針の提示が必要である。


発症前診断男性患者のフォローアップ指針