予後

1 小児大脳型(CCALD)
無治療の場合は発症後2年以内に嚥下障害,寝たきりとなる症例が多い.特に7歳以下で発症した場合の進行が早い.
2 思春期大脳型(AdolCALD)
症状はCCALDと同様で急速に進行するが,発症初期は比較的緩やかに進行する傾向にある.CCALDも含めて10 %程度の症例では進行が自然に停止することがある.ただし,10~15年後に急速に進行する場合もあるので注意を要する1).
3 adrenomyeloneuropathy(AMN)
一般にゆっくりとした経過で進行するが,国内での後方視的な自然歴調査では経過10年で約半数の症例が大脳型に移行し,いったん大脳症状を呈すると急速な悪化をきたすと報告されている2).一方,欧米ではAMNの10年以上の追跡調査から約20 %が大脳型に進展すると報告されており3)、調査方法の違いに、国内での未診断のAMN症例の存在が影響している可能性も示唆される.
4 成人大脳型(ACALD)
急速に進行する例と比較的緩やかに進行する例がある.国内における自然歴調査では,死亡したACALD症例(40 %)の平均生存期間は発症後7.5年とされている2)
5 小脳・脳幹型
日本人に多く,国内における自然歴調査では,経過2年で約半数の症例が大脳型に移行する2)
6 アジソン型
年齢にかかわらずAMNや大脳型に進展することがあるので,早期診断、フォローアップが重要である.
7 発症前男性患者
ABCD1変異を有する男性患者の約35~40 %が,成人前に大脳型を発症するとされているが3),それを予測することは現時点では不可能である.
8 女性発症者
オランダにおける大規模検討によると,60代までには軽微な症状も含め80 %の女性保因者で神経学的所見がみられると報告されている4).ただし,副腎機能不全や大脳症状を呈する症例はほとんど認めない

1)Engelen M, Kemp S, de Visser M, et al: X-linked adrenoleukodystrophy (X-ALD): clinical presentation and guidelines for diagnosis, follow-up and management Orphanet. Journal of Rare Diseases 2012; 7: 51
2)Suzuki Y, Takemoto Y, Shimozawa N, et al: Natural history of X-linked adrenoleukodstrophy in Japan. Brain Dev 2005; 27: 353-357.
3)van Geel BM, Bezman L, Loes DJ, et al: Evolution of phenotypes in adult male patients with X-linked adrenoleukodystrophy. Ann Neurol 2001; 49: 186-194.
4) Engelen M, Barbier M, Dijkstra IM et al. X-linked adrenoleukodystrophy in women: a cross-sectional cohort study. Brain 2014; 137: 693-706.