岐阜大学医学部 放射線科

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腹部

本項では主に上腹部の画像診断、とりわけ肝胆膵領域の画像診断についてご紹介します。当科では、独自の臨床研究のほか、他大学との多機関共同研究や企業との共同研究も積極的に行い、最新の機器や技術を駆使した質の高い画像診断を提供することを目的としています。

CT

当科では、岐阜大学医学部附属病院に設置されている最新のDual energy CT (DECT) 装置を用いて、患者さん一人ひとりに最適な診断と治療方針の決定をサポートしています。

Dual Energy CT (DECT)

Dual-energy CTは、異なる2種類のX線エネルギーを使用して撮影し、物質の特性に基づいた詳細な画像を生成する技術です。これにより、仮想単色X線画像や物質弁別画像を取得でき、診断精度の向上やアーチファクトの低減などが可能となります。

当科におけるDECTの活用例

下記の研究課題について最新の知見が論文掲載されています。

1.至適ボーラストラッキング法
  • Noda Y et al. Radiology. 2021;300(3):615-623.
  • Noda Y et al. Abdom Radiol (NY). 2024; Online ahead of print.
2.膵癌におけるヨード密度の定量化と化学療法の治療効果との関連性
  • Noda Y et al. AJR Am J Roentgenol. 2018;211(6):1221-1226.
3.膵癌検出における低エネルギーレベルの仮想単色X線画像の有用性
  • Noda Y et al. Clin Radiol. 2020;75(4):320.e17-320.e23.
  • Noda Y et al. Radiol Med. 2024;129(5):677-686.
4.至適Window Level設定の検討
  • Noda Y et al. Eur J Radiol. 2018;109:204-209.

Deep-Learning Image Reconstruction (DLIR)

DLIRは、深層学習技術を用いたCT画像の再構成法で、高品質な画像取得を可能にします。これにより、従来の再構成法に比べて画像ノイズの低減やアーチファクトの抑制が実現され、診断精度の向上が期待される技術です。

当科におけるDLIRの活用例

下記の研究課題について最新の知見が論文掲載されています。

1.被ばく低減
  • Noda Y et al. Br J Radiol. 2021;94(1121):20201329.
  • Noda Y et al. Abdom Radiol (NY). 2021;46(9):4238-4244.
  • Noda Y et al. Br J Radiol. 2022;95(1134):20211163.
  • Kaga T et al. Jpn J Radiol. 2022;40(7):703-711.
2.造影剤量の最適化(減量)
  • Noda Y et al. Clin Radiol. 2022;77(2):e138-e146.
  • Noda Y et al. Br J Radiol. 2022;95(1134):20211163.(被ばく低減の項目にも記載)
  • Kawai N et al. Clin Radiol. 2024;79(6):e791-e798.
3.膵癌検出能の向上
  • Noda Y et al. Eur J Radiol. 2023;159:110685.
  • Takai Y et al. Eur J Radiol. 2023;165:110960.
4.至適DLIRレベルの検討
  • Kaga T et al. Clin Radiol. 2021;76(9):710.e15-710.e24.

MRI

上腹部MRIは、肝臓、胆嚢・胆管、膵臓などの臓器を高精細に描出し、様々な疾患の診断に欠かせない検査法です。当科では最新の技術を組み合わせ、患者さん一人ひとりに最適な上腹部MRI検査を提供しています。

肝細胞特異性造影剤 (Gd-EOB-DTPA) を用いた造影MRI (EOB-MRI)

EOB-MRIは、肝腫瘍の検出や鑑別診断に優れた検査です。特に、ダイナミック撮像による血流情報と肝細胞相での機能情報を同時に取得できるため、診断精度の向上に寄与します。

当科におけるEOB-MRIの活用例

下記の研究課題について最新の知見が論文掲載されています。

1.肝機能におけるイメージングバイオマーカーとしての肝細胞分画の有用性
  • Noda Y et al. Abdom Radiol (NY). 2020;45(1):83-89.
2.膵癌及び肝転移検出におけるEOB-MRIの有用性
  • Noda Y et al. Abdom Radiol (NY). 2020;45(8):2459-2468.
3.肝機能におけるイメージングバイオマーカーとしての胆道Gd-EOB-DTPA排泄能評価の有用性
  • Noda Y et al. Eur J Radiol. 2016;85(11):2001-2007.

圧縮センシング (Compressed Sensing; CS)

CSは、撮像時間を大幅に短縮する革新的な技術です。従来撮像に比べて、高速撮像による時短検査や高精細な画像を提供します。上腹部MRIでは正確な診断のために、長時間・複数回の息止めが必要になりますが、息止め時間の短縮により患者さんの負担軽減にも繋がります。

当科におけるCSの活用例

下記の研究課題について最新の知見が論文掲載されています。

1.肝ダイナミック造影時の呼吸性アーチファクト (transient severe motion artifact) 低減の可能性
  • Kawai N et al. Magn Reson Imaging. 2019;57:111-117.
2.MR胆管膵管撮影 (MRCP) の撮像時間短縮 (約77%減)
  • Nagata S et al. Abdom Radiol (NY). 2019;44(5):1766-1772.
3.Echo Planar Imaging (EPI) 拡散強調画像への応用
  • Kaga T et al. Eur J Radiol. 2021;142:109889.
  • Kaga T et al. Eur J Radiol. 2023;167:111059.

自由呼吸下撮像 (Free-breathing imaging; FB)

上腹部MRIにおけるFBは、患者さんが呼吸を止める必要なく高品質な画像を取得可能な技術です。特に、ラジアルサンプリングやCSなどの先進的な技術を組み合わせることで、呼吸性アーチファクトを抑制し、診断精度を担保します。

当科におけるFBの活用例

下記の研究課題について最新の知見が論文掲載されています。

1.息止め不良患者さんにおける肝細胞相の自由呼吸下撮像の可能性
  • Kajita K, Noda Y, Kawai N, Matsuo M et al. Magn Reson Med Sci. 2019;18(1):4-11.
2.膵ダイナミック造影時の自由呼吸下撮像の可能性
  • Noda Y et al. Eur J Radiol. 2024;175:111445.

多機関共同研究

現在進行中の多機関共同研究も複数ありますが、下記の研究課題について最新の知見が論文掲載されています。

当科が代表機関

1.View-sharingを併用した高速MR血管撮像 (MRA) の腹部画像診断への応用
  • Noda Y et al. J Magn Reson Imaging. 2018;48(1):102-110.
2.CS併用EPI拡散強調画像の膵画像診断への応用
  • Kaga T et al. Magn Reson Med Sci. 2024; Online ahead of print.

当科が共同研究機関

1.直接作用型抗ウィルス薬 (DAA) 療法後の肝細胞癌発症に関連するEOB-MRIリスク因子の同定
  • Ichikawa S, Kawai N, Matsuo M et al. Hepatol Res. 2024;54(1):43-53.
2.子宮頸部神経内分泌癌のMRI所見の解析
  • Kitajima K, Kawai N et al. Oncotarget. 2020;11(40):3675-3686.

他診療科とのカンファレンス;胆膵ボードミーティング

2019年7月より月2回(第1・3月曜日)、消化器外科・消化器内科・放射線科の3科合同で胆膵ボードミーティングを開催しています。主に胆膵領域疾患の新規症例あるいは難渋症例の画像診断、治療方針などについてディスカッションし、各分野における最新知見の情報共有も行っています。術前診断した症例について、術後病理結果を定期的にフィードバックされるため、所謂“生きた”画像診断に繋がります。放射線診断専門医だけでなく、診断専門医取得を目指す(機構認定)放射線科専門医や専攻医も積極的に参加しており、診療科全体としての診断能力向上にも寄与しています。