骨軟部
骨軟部領域は放射線科診断医の中でも苦手にしている医師が多い領域のひとつです。これにはいくつかの要因がありますが、最も大きな要因として骨軟部領域の画像診断検査数が少ないことが挙げられます。特に腫瘍性疾患の患者さんは大規模な病院に集約されるため、中小病院では画像診断に触れる機会が少ないのが現状です。しかし当院では岐阜県中から骨軟部腫瘍の患者様が来院されるため、当科では骨軟部領域の画像診断を広く経験することが可能です。
骨軟部腫瘍性疾患
当科では特に骨軟部腫瘍の画像診断に力を入れています。毎月、整形外科、病理診断科、放射線科合同のカンファレンスを開催し、診断が難しい症例については各科との密な連携のもと、診療を行っています。
このカンファレンスは「Jaffe’s Triangle」の考え方を実践するものです。Jaffe’s Triangleとは、骨軟部腫瘍の診断において、臨床所見(整形外科)、画像所見(放射線科)、病理所見(病理診断科)の3つの視点を総合的に評価することの重要性を示す概念です。一つの視点だけでは診断の確実性が低くなりますが、3つの視点を統合することで診断精度が飛躍的に向上します。
このカンファレンスは放射線科医としての診断能力向上に大きく寄与しており、それが患者さんへの正確な診断として還元されるという良い循環を生み出しています。
非腫瘍性疾患
当科では腫瘍性疾患だけでなく、非腫瘍性疾患の画像診断にも力を入れています。関節リウマチをはじめとする炎症性疾患、スポーツ障害、変性疾患など多様な病態の画像診断を経験することができます。特に関節疾患においては、X線、CT、MRIなどの各種モダリティを駆使した総合的な診断アプローチを行っており、腫瘍性疾患に劣らない豊富な症例を経験することが可能です。
学術活動と専門知識の研鑽
院内の取り組みだけではなく、日本骨軟部放射線研究会などの専門的な学会や研究会、勉強会に継続的に参加・発表することを心がけ、専門知識のアップデートに努めています。さらに、International Skeletal Society(ISS)やAsian Musculoskeletal Society(AMS)などの国際学会にも積極的に参加し、グローバルな視点での学術的な活動にも力を注いでいます。これらの活動を通じて得られた最新の知見や診断技術は、日々の診療に還元されています。
教育への取り組み
教育面においては、医学生はもちろん、研修医や若手放射線科医に対しても、骨軟部領域全般の画像診断をテーマにレクチャーを行っています。骨軟部腫瘍から非腫瘍性疾患まで幅広くカバーし、この難しいとされる領域の画像診断に実践的に触れる機会を提供しています。当科では骨軟部領域をサブスペシャリティとする放射線科医師が少なくなく、その専門性を生かした質の高い教育を実現しています。カンファレンスへの参加や実際の読影業務を通じて、段階的に専門的な知識と技術を習得できる環境を整えています。
このように当科では、骨軟部領域の画像診断について、豊富な症例経験と多職種連携による質の高い診断を提供するとともに、次世代の医師育成にも力を入れています。