内用療法
内用療法は放射線を出す薬剤を投与して、体内から放射線照射を行い治療する方法です。治療対象となる臓器や細胞に主に集まる薬剤を使用して治療を行うため、手術や化学療法に比べると体への負担が少なく、体の外側から放射線を照射する放射線治療に比べて正常な組織・臓器への副作用が少なくすることができます。
現在、当院では「甲状腺機能亢進症・甲状腺癌に対する放射性ヨウ素内用療法」「褐色細胞腫・パラガングリオーマに対する3-ヨードベンジルグアニン(I-131)内用療法」「神経内分泌腫瘍に対するルテチウムオキソドトレオチド(Lu-177)内用療法」を中心に複数の内用療法を行っています。特に131ヨウ素を用いた前者2つの治療については岐阜県内で治療ができる唯一の施設になります。
写真:内用療法に使用する特別病室
放射性ヨウ素内用療法
放射性ヨウ素(放射線が出るヨウ素)の入ったカプセルを内服する治療です。体に吸収された放射性ヨウ素が甲状腺をはじめとする病変に取り込まれ、その場所で放射線を出すことで細胞を破壊します。内服したヨウ素を効率よく体に吸収してもらうために、治療日の2週間前からヨウ素の入った食品をとらないようにして準備を行います。
甲状腺機能亢進症(Basedow病、Graves病)に対する内用療法
甲状腺機能亢進症の治療法の1つとして放射性ヨウ素カプセルを内服する治療があります。甲状腺では体調の管理に重要な甲状腺ホルモンが作られていますが、甲状腺機能亢進症はこのホルモンが過剰に作られている状況です。甲状腺ホルモンを作るために甲状腺は食事などから摂取したヨウ素を取り込んでいるため、放射性ヨウ素を内服することで甲状腺細胞の一部を破壊して過剰なホルモン産生を押さえることができます。この治療は外来で行うことができます。
甲状腺癌に対する内用療法
甲状腺癌の治療法の1つで、放射性ヨウ素カプセルを内服する治療です。患者さんの状況に応じて治療適応となるパターンは大きく3つに分けられます。
1. 甲状腺癌が手術で全て取ることができていて、転移・再発のリスクが低い患者
甲状腺癌が完全に取りきることができたと思われる患者さんでも、甲状腺の細胞はごくわずかに体の中に残っています。将来、この甲状腺細胞が癌にならないように破壊する目的で治療を行います。内服する放射性ヨウ素の量が比較的少ないため、生活上の注意を守っていただくことで外来での治療が可能です。
2. 甲状腺癌は手術で切除できているが、ごくわずかに残っている可能性がある患者
手術の際には癌細胞を周囲の組織ごと余裕を持って切り取ってくるのですが、甲状腺癌が切り取った断面のすごく近くにあったり、顔を出していたりする場合、体の中にわずかに癌細胞が残っている可能性があります。このような場合、将来的に再発や転移を起こす可能性があるため、放射性ヨウ素を使って残っている甲状腺細胞や癌細胞を破壊します。約1週間程度の入院が必要です。
3. 甲状腺癌の転移があり、全てを手術で取り除くことができない患者
手術で全ての癌の病変を取り除くことができない場合に全身に治療効果が出る内用療法が行われます。約1週間程度の入院が必要です。
3-ヨードベンジルグアニン(I-131)内用療法(ライアット®)
褐色細胞腫/パラガングリオーマという病気のうち、全てを手術で取り除くことができない患者さんに対する治療法の1つとしてこの治療があります。治療の前に3-ヨードベンジルグアニンという薬剤が病変に取り込まれるかどうかをMIBGシンチグラフィという検査で確認します。取り込まれる場合は治療適応となり、血管内に薬剤を注射する形で本内用療法が行われます。約1-2週間程度の入院が必要です。
ルテチウムオキソドトレオチド(Lu-177)内用療法(ルタテラ®)
神経内分泌腫瘍という病気に対する治療法の1つとしてこの治療があります。治療の前には薬剤が病変に取り込まれるかどうかをソマトスタチン受容体シンチグラフィという検査で確認します。取り込まれる場合は治療適応となり、血管内に薬剤を注射する形で本内用療法が行われます。数日程度の入院が必要です。