当センターは3次救急を担う高度救命救急センターであり、2018年4月岐阜県より認可を受け”岐阜県救急外傷センター”を標榜する県内唯一の施設です。ドクターヘリによって県内各地からバイクや乗用車同士の事故、スノーボードなどのスポーツ外傷まで多くの重症外傷の患者が搬送されます。
我々の特徴は救急医かつ整形外科医のダブルボードを掲げた医師3名(21年4月現在)で整形外傷部門を担っていることです。救命センター内に整形外科医がいることの最大のメリットは救命から機能再建まで一貫した治療が行えることです。生命を助けることは当然ですが、受傷された方がいかに社会復帰されるかを常に考えて治療を行なっています。怪我が重症であるほど、患者さんの状態は刻々と変化していきます。そのため変化する全身状態に合わせて適切な治療を進める必要があります。例えば、頭部体幹部外傷を合併した四肢の骨折治療の場合、すぐに骨折の内固定を行うと手術の影響で、全身に負担がかかり状態を不安定にしてしまう可能性があります。そのような場合には骨折部を創外固定といった仮の固定を行い、全身状態が整ったところで骨折の最終内固定を行います。この治療戦略をダメージコントロール手術といいます。我々、救命センター内の整形外傷医が担当することで治療介入はシームレスに行われていきます。繰り返しますが、これらは患者さんの救命だけでなく、社会復帰できる機能再建に結びつきものと我々は信じて日々診療にあたっています。急性期治療の後にはリハビリテーションを行い、後方支援病院でのリハビリを継続していきます。自宅退院後は関連病院または当院のフォローアップ外来で骨折部の骨癒合や日常生活動作で困っていることがないか経過観察させていただきます。
センター開設時より四肢・骨盤骨折治療の手術加療を行なっておりました。現在、外傷を専門とする整形外科医の着任、整形外傷医の増員によって手術件数は増加しています。開放骨折をはじめとした軟部組織損傷を含む外傷や、骨盤骨折や多発外傷など救命に関わる外傷が多いことが特徴です。他施設では多くの割合を占める高齢者の大腿骨頸部・転子部骨折は当院手術件数の2.5%(20年度)しかありません。また関節内骨折のうち骨折型が複雑なAO分類typeCが占める割合は56%と高くなっています。ダメージコントロール手術の一つである創外固定術や骨盤輪、寛骨臼骨折観血的整復術の割合が多く、特に骨盤輪骨折16件、寛骨臼骨折12件の手術件数は東海地区随一であり、当院での救命率の高さと外傷センターとしての集約によるものと考えています。
整形外傷部門での手術件数
手術件数(2020年:240件)
次世代の整形外傷医育成のため教育に力を注いでまいります。骨折セミナー、キャダバートレーニングなどに積極的に参加できるように支援します。また外傷治療は我々医師だけではできません。チーム医療を実践するため、手術室看護師と術前ミーティングや手術手技のセミナー、リハビリスタッフとのカンファレンスなど定期的に開催しています。
当部門では、救急医療を専門としつつ整形外傷領域を特に学びたい、という皆さんに対して積極的に門戸を開いています。当施設での研修だけでなく、希望に応じて国内留学を奨励しております。国内トップクラスの施設で研修していただき、学び得たものを当施設 に還元することで岐阜県内で怪我をされた方々により一層良い治療が届けられるものと信じています。整形外傷医を志すみなさん!ぜひ我々整形外傷チームで一緒に働きましょう。一緒に働けなくともこの分野で働いてもらえるきっかけとなることを望んでいます。ぜひ当方までご連絡をください
国内留学一例