岐阜県ドクターヘリは、2011年2月から、当院高度救命救急センターが岐阜県より委託を受け、その事業を行っています。
現在、平均して年間400〜500件程度出動していますが、現在も要請・出動件数ともに増加傾向です。
消防との連携も年々充実しており、岐阜県内の救急医療においてドクターヘリが必要不可欠なものとなっていると言えます。
出動件数(月別)
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 合計 | |
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平成28年度 | 27 | 31 | 35 | 40 | 30 | 36 | 27 | 31 | 32 | 31 | 26 | 46 | 392 |
平成27年度 | 31 | 45 | 35 | 28 | 25 | 28 | 31 | 33 | 38 | 26 | 30 | 40 | 390 |
平成26年度 | 46 | 43 | 40 | 49 | 32 | 34 | 38 | 28 | 32 | 35 | 34 | 40 | 451 |
平成25年度 | 28 | 40 | 28 | 37 | 39 | 36 | 38 | 24 | 31 | 28 | 41 | 36 | 406 |
平成24年度 | 28 | 24 | 21 | 33 | 28 | 33 | 33 | 27 | 23 | 31 | 24 | 41 | 346 |
平成23年度 | 12 | 20 | 10 | 24 | 18 | 19 | 23 | 20 | 19 | 24 | 28 | 33 | 250 |
出動区分別(件数)
平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | |
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現場要請 | 110 | 170 | 203 | 213 | 204 | 199 |
転院搬送 | 114 | 149 | 159 | 194 | 143 | 141 |
出動後キャンセル | 26 | 27 | 44 | 44 | 43 | 52 |
総出動件数 | 250 | 346 | 406 | 451 | 390 | 392 |
岐阜県は南北に約150㎞の広がりをもち、北部の飛騨地方からは高速道路の整備が進んだとはいえ、近隣の高次医療機関まで2〜3時間を要する地区も多くあります。
基地病院の岐阜大学医学部附属病院から県最北地域までは30〜40分で到達可能であり、大幅な時間短縮と同時に適切な医療介入が開始されることになり、重症患者さんには何よりも朗報です。
また、岐阜県は山間が多くを占める共に、スキー場やゴルフ場などの数も全国有数を誇るスポーツが盛んな地区であり、これらで発生する重症傷病者にも迅速に対応しています。
とりわけスキー場やゴルフ場関係者の現場の方の協力のもと、できる限り傷病者に早く接触できるように、現場直近、つまりスキー場駐車場内やゴルフ場敷地内に着陸できる体制を積極的にとり活動しているのも当ドクターヘリ運行の特徴でもあります。
天候が許す限りで、午前8:30~午後5時まで(6月7月は午後6時まで)が待機時間です。
奥美濃~飛騨地方にも15〜30分圏内での到達が可能です。
スキー場の駐車場に着陸、医師看護師は現場に走ります。
ゴルフ場で傷病者が発生した場合、条件があえば現場直近に着陸する事もあります。
出動にはパイロットである機長と整備士、医師1名、看護師1名で搭乗します。
基地病院の岐阜大学医学部附属病院高次救命治療センター内には多くの訓練(座学も含む)と、規定回数の飛行回数を経て認定された10数名のヘリ担当医師(通称フライトドクター)と、6名のヘリ担当看護師(通称フライトナース)がおり、日々各1名ずつで専任要員として待機しております。
ドクターヘリの活動は傷病者が発生した現場から、119番通報を通して要請される場合と(現場救急)と、病院間で重症患者さんを搬送する場合(転院搬送)の2つのパターンがあります。
いずれも消防を通しての要請になります。
ドクターヘリは一般市民の方が直接要請することはできません。
傷病者が発生して119番通報がなされると、状況に応じて消防から岐阜大学医学部附属病院の通信センターに要請が入り、その日のヘリスタッフが現場に向かう事になります。
院内どこにいても、要請が入ってから3〜5分で離陸するような待機をしています。
119番通報が入った場合、救急車が現場に向かうのと同時に、状況に応じてドクターヘリも現場に向かい医療チームが投入されることになります。
県内では多くのスポーツ関連イベントやスポーツ施設があります。
スキー場やゴルフ場に関しては、スキー場は全国4番目、ゴルフ場は全国7番目といずれも全国屈指の数を誇ります。
しかしこのようなスポーツ施設の多くは山間に位置することが多く、いざ急病人が発生すると病院までの治療開始には非常に時間がかかります。
このような事例でもドクターヘリは活躍し、救急要請があってから岐阜大学を離陸し、たいていの施設には15-20分で到達するため、医師による診療開始時間が大幅に短縮し、かけがえのない命の救命に大きく貢献しています。
一例でありますが、右図は県内ゴルフ場で発生した患者さんの内訳を示しています。
注目すべきは、28%(14例)の心肺停止患者が発生している一方で、現場のかたの適切な判断、応急処置から、ドクターヘリスタッフの高度な医療につながることで、救命の連鎖が成り立ち、14例の心肺停止患者さんのうち6例が社会復帰にいたるという驚くべき効果がでています。
通常、山間でいざ心肺停止になれば、病院までたどりつくにも1時間前後かかることも多く、救命自体困難を極めます。
CPA28%(14例)中
6例でROSC社会復帰に至っている。
Q. ドクターヘリを呼ぶと、費用はいくらかかりますか?
A. 搬送には費用はかかりませんが、保険診療としての往診料、救急搬送診療料というのがかかります。
また処置や治療を行った場合はそれに相当する医療費(保険診療として)が発生します。
これらの費用は、後日、岐阜大学医学部附属病院から患者様に請求がされます。
Q. ドクターヘリの事業体型はどのようですか?
A. 国と県の補助金でドクターヘリ事業は運営されています。
岐阜県の場合は、県から岐阜大学医学部附属病院高次救命治療センターが運営を委託されています。
Q. ドクターヘリに付き添いの家族などは同乗させてもらえますか?
A. 原則、ヘリコプター搬送時にご家族の同乗はさせていただいておりません。
患者様が乳幼児など特別な場合は、場合によってはご搭乗いただくこともあります。
Q. ドクターヘリはどこでも着陸できますか?
A. 基本的には、消防と当センターの間で予め決められた離発着場に着陸し、医療スタッフを患者様のもとに投入します。
現時点(2014年10月)では760カ所程度が設定されています。
場合によっては、それ以外にも傷病者発生現場直近に安全確保される場所があればそこに着陸することもあります。
Q. ドクターヘリの内部はどのようになっていますか?
A. 写真のように、人工呼吸器やシリンジポンプ、除細動器など集中治療に最低限必要な医療器械は備えています。
いわば「空飛ぶICU(集中治療室)」です!!
機体後方からキャビン内を見た写真
機体前方からキャビン内を見た写真
Q. フライトドクターにはどうやったらなれますか?
A. フライトドクターとは、正式には日本航空医療学会が認定する、日本航空医療学会認定指導者の資格を有する医師の
呼称です。
各施設ごとにフライトドクターになる基準は異なっています。
当院では認定指導者とともに実機で30例以上の経験をつむこと、救急現場で必要ないくかの基本処置を救急指導医のもとで一定件数行い認定されること、そして救急関連の心肺蘇生や外傷初期診療に関する講習会を受講すること、など一定条件をクリアすれば一人前のフライトドクターとして診療にあたることができます。