岐阜大学呼吸器内科部門は高度な専門性を有するスタッフにより、患者さんを中心として最先端の医療機器・設備を駆使し、肺がん、COPD、気管支喘息、間質性肺炎といった呼吸器疾患の診断・治療を総合的に行っています。
当院は循環器内科・腎臓内科や呼吸器外科、放射線科、病理科と密に連携することで、難治性呼吸器疾患を早期に診断し、最適な治療を受けていただくことを目指しています。
1. 日本内科学会認定教育施設
2. 日本呼吸器学会認定施設
3. 日本呼吸器内視鏡学会認定施設
4. 日本臨床腫瘍学会認定研修施設
5. 日本アレルギー学会 アレルギー専門医教育研修施設
6. 日本感染症学会認定施設
7. 都道府県がん連携拠点病院
肺がんとは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。
進行するとがん細胞が周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れに乗って広がっていきます。
肺がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり88.7人(全国で約10万人)です。
年齢別にみた罹患率は40 歳代後半から増加し始め、高齢になるほど高くなります。男女別の罹患率でみると、男性は女性の2倍以上になっています。
肺がんは喫煙との関連が非常に大きく、たばこを吸わない人に比べて、吸う人が肺がんになるリスクは男性で 4.4倍、女性で2.8倍と高くなります。
また、肺がんは日本人男性のがん死亡原因の第1位、女性でも第2位になっており、今後も増加することが予想されています。
【 肺がん診断 】
肺がんの診断には画像検査による全身評価と組織診断が必要になります。
画像検査には胸部レントゲン検査、CT検査、PET-CT検査などがあります。方針決定に重要なものでありスムーズに行えるよう努めています。
組織診断には気管支鏡検査を実施します。
気管支鏡検査は、気管支鏡と呼ばれる内視鏡を口から挿入して気管支の中を観察し、がんが疑われる部位の組織や細胞を採取する検査です。
当院ではCT画像を三次元で画像構成して実際の気管支鏡とほぼ同じ画像を作成するナビゲーションシステムすなわち仮想気管支鏡(virtual bronchoscopy)(写真1)や超音波気管支鏡(EBUS)を用いた超音波気管支鏡ガイド下縦隔リンパ節針生検(EBUS-TBNA)、超音波ガイド下経皮的生検、局所麻酔下胸腔鏡(写真2)検査などを用いて、より正確、より安全に検査を行えるような工夫を行っています。
【 肺がん 薬物療法 】
肺がんの治療には大きく手術、放射線治療、抗がん剤があります。
呼吸器内科では抗がん剤治療を中心に行いますが、それぞれの専門科と連携して方針を決定し、病状によってそれぞれを併用した集学的な治療も行います。
抗がん剤には従来から用いられている細胞障害性抗がん剤、がんの増殖に関わっている分子を標的にしてその働きを阻害する分子標的薬、がん細胞が免疫にブレーキをかける場所(免疫チェックポイント)で、ブレーキをかけられないようにする免疫チェックポイント阻害薬があります。
患者さんごとに最適な治療を選択して実施していきます。
また、治療に伴う副作用を和らげる支持療法、がんの全身的な苦痛を和らげる緩和医療にも力をいれています。
● 細胞障害性抗がん剤
細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)は、細胞増殖を制御しているDNAに作用したり、がん細胞の分裂を阻害したりすることでがん細胞の増殖を抑える薬です。
● 分子標的薬
分子標的薬は、がんの増殖に関わっている分子を標的にしてその働きを阻害する薬です。EGFR(図1), ALK, ROS-1,ROS-1,BRAF遺伝子変異がある場合に投与可能で、それぞれに合った薬剤を選択します。
● 免疫チェックポイント阻害剤
私たちの体に備わっている免疫の機能には、発生したがん細胞を異物として排除する働きがあります。しかし、がん細胞はその免疫にブレーキをかけ、排除されないようにすることがあります。免疫チェックポイント阻害剤はがん細胞が免疫にブレーキをかける場所(免疫チェックポイント)(図2)で、ブレーキをかけられないように阻害する薬です。
● 抗がん剤の副作用について
使用する薬剤の種類によって副作用は異なり、その程度も個人差があります。新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなる骨髄抑制などが起こったりします。その他、全身のだるさ、吐き気、手足のしびれや感覚の低下、筋肉痛や関節痛、皮膚や爪の変化、肝臓の機能異常などが出ることもあります。
● 岐阜県のがんに関する情報(ぎふがんねっと)のページにはがんに関する多くの情報が載っています。
http://gifugan.net/
【 概 要 】
慢性閉塞性肺疾患 (COPD)(図3,4)は、たばこの煙などに含まれる有害物質に長期間曝露されることにより肺が持続的な炎症を起こし、呼吸機能の低下などを起こした状態です。
原因のほとんどが喫煙であることから、生活習慣病のひとつとして注目されています。慢性閉塞性肺疾患は中高年が発症することが多いですが、なかでも高齢になってから発症するケースが増加しています。
【 疫 学 】
2001年に行われた調査では、日本における患者数は約530万人にのぼると推定されています。
しかし、その後の厚生労働省による調査において、実際に治療を受けている患者さんは約20万人にとどまることがわかりました。このことから慢性閉塞性肺疾患は、症状があるにもかかわらず治療を受けていない方が多い病気といえます。男女別患者数は、日本では女性よりも約2.5倍男性のほうが多いとされています。
慢性閉塞性肺疾患の認知度は25%程度にとどまりますが、日本人の死因8位であり、肺炎や肺がんなど重篤な肺疾患を起こす危険性も持っています。そのため慢性閉塞性肺疾患では、早期発見と早期治療の実施が重視されています。
写真4:日本呼吸器学会提供
特発性間質性肺炎
【 概 要 】
肺は肺胞というブドウの房状の小さな袋がたくさん集まってできています。
間質性肺炎は、肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、壁が厚く硬くなるため(線維化)、酸素を取り込みにくくなる病気です。間質性肺炎の原因は様々ですが、原因不明のものを特発性間質性肺炎(IIPs)と総称します。IIPsは主要な6つの病型、稀な2つの病型および分類不能型に分類されます。
【 疫 学 】
IIPsのなかでは特発性肺線維症(IPF)が80~90%と最も多く、次いで特発性非特異性間質性肺炎が5~10%、特発性器質化肺炎が1~2%程度です。
わが国におけるIPFの調査では、発症率が10万人対2.23人、有病率が10万人対10.0人とされています。
IPFは50歳以上の男性に多くほとんどが喫煙者であることから、喫煙が「危険因子」であると考えられています。
【 発病のメカニズム 】
IIPsの原因は不明ですが、複数の原因遺伝子と環境因子が影響している可能性が考えられています。
また、IPFは未知の原因による肺胞上皮細胞(肺胞壁の構成細胞)の繰り返す損傷とその修復・治癒過程の異常が主たる病因・病態とされており、肺胞上皮細胞の機能に関与する遺伝子異常が注目されています。
【 症 状 】
初期には無症状のことが多く、病状がある程度進行してくると動いた時の息切れや痰を伴わないせきを自覚します。
【 診 断 】
問診、身体診察に加えて、胸部エックス線や胸部CT(写真4)、呼吸機能検査、運動時の血液中の酸素の量の低下の割合などから病状を評価し、病型の分類を推測します。
気管支鏡検査により肺胞の洗浄検査等を行うこともあります。最も正確な診断は肺の組織検査によって行われますが、全身麻酔による手術を必要とするため、患者さんの状態によって施行すべきか検討します。
【 治 療 】
病状がある程度進行したIPFでは、抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)により病気の進行を緩やかにできる場合がありますが、効果には個人差があります。その他の病型のIIPsでは、多くの場合ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)や免疫抑制剤が適応となります。
病気が進行すると呼吸不全となり酸素吸入が必要になることもあります。
【 生活上の注意 】
風邪などをきっかけとして急激に病状が悪化全体に蜂の巣状に変形していますし、非常に致死率の高い状態になることがあります。このようなことを防ぐために、日常の手洗い、うがいを徹底するとともに、肺炎やインフルエンザのワクチンを受けておくことが推奨されます。
【 予 後 】
IPFは一般的には徐々に肺の線維化が進行していく病気で、平均生存期間は欧米の報告では診断確定から28~52ヶ月、わが国の報告では初診時から61~69ヶ月とされていますが、病状の経過は患者さんによって様々です。
特発性非特異性間質性肺炎や特発性器質化肺炎は一般に治療がよく効きますが、中には徐々に悪化していく場合もあります。
項 目 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
外来患者数 | 11,631 | 11,497 | 11,653 | 11,464 | 11,809 | 12,826 | 14,142 | 13,989 | 14,569 | 14,542 | 13,984 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
入院患者延べ数 | 11,323 | 10,870 | 10,331 | 10,777 | 9,862 | 9,831 | 10,059 | 9,193 | 8,811 | 9,332 | 7,853 |
化学療法数 | 1,393 | 1,360 | 1,430 | 1,239 | 1,266 | 1,395 | 1,820 | 1,833 | 1,896 | 1,836 | 1,656 |
気管支鏡検査数
※ 呼吸器内科の放射線オーダ[透視]のうち名称にBFSを含むものをカウント |
404 | 363 | 360 | 375 | 296 | 298 | 330 | 238 | 236 | 272 | 222 |
胸腔鏡検査 | 2 | 4 | 7 | 7 | 7 | 5 | 11 | 12 | 7 | 12 | 11 |
胸腔ドレナージ・胸腔内トロッカー
※ 呼吸器内科の処置オーダ[ドレナージ]のうち胸腔ドレナージ(1日目)をカウント |
38 | 47 | 51 | 52 | 54 | 61 | 68 | 77 | 53 | 39 | 51 |
呼吸機能検査 | 1,343 | 1,230 | 1,359 | 1,439 | 1,357 | 1,318 | 1,380 | 1,219 | 1,071 (他科実施含む) |
448 | 419 |