2021年4月、岐阜大学医学部附属病院に「循環器センター」が設立されました。
本センターは循環器内科、心臓血管外科を中心に、多職種で構成されるものです。
岐阜大学の総力を結集して、循環器疾患に対する「高度な医療を提供」することと「断らない医療」に引き続き取り組んでいきたいと思います。また、2020年10月27日に「循環器病対策推進基本計画」が閣議決定されましたことをうけて、岐阜県においても「循環器病対策推進計画」をすすめているところです。我々にとっては大きなターニングポイントとなる1年となります。
そのような中で、新年度から6名の新しいメンバーを迎えることができました。循環器内科の増田悠人先生と呼吸器内科の酒井千鶴先生は新内科専門医制度による岐阜大学の内科専攻医第一期生として、無事3年間のトレーニングを終え、大学に戻ってきてくれました。
同じく、他病院で内科専攻医としての研修を終えた、呼吸器内科の河江大輔先生も新たに私たちの仲間に加わってくれました。
3人はこれからそれぞれの専門分野で中心的な役割を演じてくれることと思います。また、研究活動や後輩の指導に大いに期待しています。
4月から新専攻医として、一柳肇先生、高井瑞貴先生、栃洞亮太先生の3名が仲間に加わりました。
循環器内科を中心に、内科全般を幅広く学んでいただきたいと思います。そして、呼吸器内科には乾俊哉先生が来てくれました。
東京ですでに10年以上呼吸器内科医としての経験があり、即戦力として期待しています。
また、同門の明るい話題として、朝日大学病院の大橋宏重教授が第71回岐阜新聞大賞「学術部門」を受賞されましたことをこの場を借りてご報告させていただきます。
高度な医療としては、補助循環装置インペラ(Impella(R))が新たに導入され、IABPやPCPS(V-A ECMO)のみでは治療が困難な、重症心不全例で実績を上げています。
診断においては岐阜県唯一となる、FFR-CTの運用が始まりました。同じく、岐阜県唯一となるATTR心アミロイドーシスに対するタファミディス治療の導入についても、広く岐阜県内から患者さんのご紹介をいただいています。
カテーテル治療においては、高度石灰化病変に対する治療法として、従来から行っていたロータブレーターに加えてダイアモンドバック(Diamondback 360°Coronary Orbital atherectomy)も使用可能となり、治療選択の幅が広がりました。
血管内イメージングについては、血管内超音波(IVUS)と光干渉断層法(OCT)を使いわけて最適な治療を行っています。
冠動脈狭窄に対する治療適応については、冠動脈造影による見た目の狭窄度のみならず、機能的狭窄度をFFR, dPR, RFRなどの方法を用いて診断し、適応をきちんと判断したうえで治療を行っています。
新手術棟の建設が2022年4月からの運用開始に向けて着々とすすんでいます。
循環器専用の1室を含む2室のハイブリッド手術室ができます。そして、ようやく弁膜症等のSHD(構造的心疾患)に対するカテーテル治療が開始できます。
現在は、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の開始に向けて、ハートチーム一丸となって準備を進めています。
高度な医療からは良質なエビデンスの実行・創出が必要です。
エビデンスに基づいた適切な医療を安全かつ確実に地域の患者さんにお届けしつつ、そこから新たなエビデンスの創出を目指します。
呼吸器内科との連携によって、肺がん患者の心血管イベントについての研究が進行しています。
抗がん剤治療の心機能への影響についてもがん治療医と循環器内科医が合同で診療にあたっている私たちならではの視点で検証しています。また、腎臓内科との連携では岐阜県における透析患者さんのレジストリーを構築します。
透析患者においても、心血管合併症のリスクが高いことや治療抵抗例が多いことから、その克服に向けた取り組みとします。そして、新たな取り組みとしては、岐阜大学工学部、教育学部との連携により、AIを用いた医用画像診断に関する研究に取り組んでいます。
これからの発展が期待できる分野です。
Muse細胞を用いた心筋再生に関する研究も継続中です。
現在はいかに自家のMuse 細胞を効率よく誘導できるかを研究中です。
心不全領域での薬物治療の進歩は目覚ましく、さまざまな薬剤が予後改善を来すことがあきらかになりました。しかしながら、いかなる機序で心機能や予後の改善をもたらすかは十分わかっていません。
その領域にも基礎研究で切り込んでいきたいと考えています。
私たちの教室は循環器内科・呼吸器内科・腎臓内科を包括した内科学講座です。
当科で内科医としての研鑽を積んでいただければ、内科各領域の経験を積みながら循環器、呼吸器、腎臓内科それぞれの専門分野についても早い時期から研鑽することができますので、まさに新内科専門医制度にもってこいの環境であるといえます。
循環器内科に関しては、身体所見や心電図、心エコー図といった基本技能から、心臓カテーテル検査、経皮的冠インターベンションからカテーテルアブレーションといった専門的な手技まで幅広く経験してもらい、「総合力」のある循環器内科医となってもらうことができます。
若手医師や検査技師の学習の場として、「心エコーカンファランス」を毎月開催しています。
オンライン化することによって、オープンカンファランスとして広く岐阜県内の検査技師さんや医師にご参加いただいています(県外からの参加ももちろんOKです)。
医局の活動については本ホームページのトップページに表示されているFacebookをご参照ください。
コロナとの闘いはまだまだ続きますが、私たちは進化し続けます。
当科で研鑽した教室員の皆さんにはいろんな分野で大きく羽ばたいていってもらいたいと願っています。
新型コロナ終息のめどが立たず、閉塞感を感じている皆さんも多いのではないでしょうか?そんななかで私たちにできることはなにか、それは自らを磨き続けることです。
それぞれが、専門技能を極める、研究に邁進する、地域医療を支える、医学教育に従事する等、目指す方向は違っても、社会性、人間力をたかめて、信頼される医療人となるべく自らを研鑽し続けることが今こそ必要なのです。
循環器内科医、呼吸器内科医、腎臓内科医である前に内科医であれ、内科医である前に医師であれ、医師である前に信頼される社会人であれ、それが私の目指す人間教育です。
私たちは全力でそのお手伝いをします。