百篇以上、三、四週間で翻訳したのだけれど、その期間は四六時中、頭が寤寐(ごび)語尾になった、念のため、寤寐とは、れっきとした漢語で、寝ても醒めてもの意。久しぶりに人に会って、「やあ、語尾沙汰してまして」などと挨拶してしまった。(156ぺ)これには共感した。おそらく嘘ではあるまい。しかし、なかなか信じてもらえないだろう。でも、私は信じます。そして、私の一時の状態も柳瀬氏ならわかってくれるだろう。
猪木や○○は△△の直弟子(じかでし)ですから‥‥と言った。やっぱりジキデシではなかろうか。もちろん、臨時的な誤用ということも考えられる。この場合、
じき【直】[一](一) 隔てるものが一つも無いこと。「−弟子(デシ)・−談判・−輸 出・−輸入」 (二)「直取引」の略。(下略。以上、アクセント表示・旧仮名表示は略 )「直弟子」はいいとしても、それ以下を私はすべてジカで読んでしまった。最後の「直 輸入」は、一拍おいてチョクユニュウが浮かんだが。
いやぁ〜、緊張しぃなもんですから……(昨日のNHK総合テレビ「スタジオパークからこんにちは」のモト冬樹の発話から)「えぇ恰好しぃ」などと使われる「しぃ」だが、随分と聞かれるようになった。東京出身のモト冬樹も使うくらいだから、そろそろ全国制覇達成か。
まちちゃんを先生と呼ぶ子らがいて神奈川県立橋本高校(上の句の表記、自信なし)多分、多くの人が知っている俵万智の歌だと思う。そして、私は、何とすごい歌だろうと関心している。 上句は五七五の伝統的な音数律にしたがっているが、実は、下句は字余りなのだ。「神奈川県立」も「橋本高校」も八字(八拍)でそれぞれ一字(一拍)ずつ余っている。
岐阜県身体障害者更生指導所 →資料を郵送する約束をにわかに思い出し、速達でだしてあげようと、深夜、大きな郵便 局へむかった。もう郵便局へあと1ブロック(この言い方も日本語では定着してきました ね。たしか、中学校の英語の時間にこの用法をはじめて習いました)というところで、足 がとまってしまった。小さからぬ看板に上のように書かれていたからである。
岐阜県身体障害者更生相談所 →
1)いきかえること。よみがえること。1)が原義だが、2)以下には悪から良ヘということが含意されているか、明示されて いる。件の看板の場合、原義によったのだと言えば言えようが、2)以下の例の方が普通 である現在、それは強弁としか受け取ってもらえないだろう。
2)精神的、物質的、社会的にたちなおること。生活の態度がたちなおること。また、 もとの状態にもどること。
3)キリスト教で、罪と滅びとのなかにある人間が、神の恵みによって、霊的に新しく なること。再生。新生。
4)不用品に手を加えて再び使用できるようにすること。
「エキス光線」という言葉は、小学一年の夏、入院している祖父の話をしていた母が、叔母としゃべっていた時、これも聞きとがめて質問したが、私生児とはちがい、今にわかるでもなかったにせよ、確たる解説はされなかった。以前にも記したが、このような報告はありがたい。ある語が、いつ使われたかを知るには、ある一定量以上の(厖大な)文献を漁る必要がある。が、この例一つあれば、かなり正確な見通しがつく。あとは、この前後を集中してさがせばいいので能率もあがる。もちろん、報告をした人の言語的・社会的な環境が、当時の一般の位置から大きくずれていたりすれば問題ですが。
しかし、大正のおわり、医療の話にレントゲンとは、いわなかったのだという、これはひとつの証明になる。(戸板康二「耳ぶくろ」『耳ぶくろ '83年版ベストエッセイ集』文春文庫・88ぺ)
23最近/レントゲン放射線の原理及使用法 白木正博 大9 二、〇〇〇これは、たまたま見た古書目録にあったもの。我ながら、タイミングが良すぎるので、びっくりした。大正9年の本なので、一見、戸板氏の記述に矛盾する。が、この本は専門家向けらしい。したがって、戸板氏の記述は、一般人が「レントゲン」を使いだした時期が専門家よりも遅かったことを示すものになる。現実的には、専門家である医者が一般人に説明するときには、当時、より一般的だった「エキス光線」(X線)を用いた、ということにもなろうか。
(一歩堂書店の目録より 『日本古書通信』第61巻第10号 1996・10 27ぺ)