日本には2種類のワサビ属植物が存在します。ワサビ〔Eutrema japonicum (Miq.) Koidz.〕、そしてユリワサビEutrema tenue (Miq.) Makinoです。ワサビのなかで、太った根茎が利用されているのが『栽培品種』です。栽培品種にはさまざまな種類があり、それぞれに品種名がつけられ、品種登録されているものもあります。また、各地の自生ワサビから育成された『在来』とよばれる品種もあります。では、こうした『品種』と『野生』のワサビでは、見た目などに違いはあるのでしょうか?  
   
  【左写真と図】調査風景(2015)と2015年現在で山根が現地調査により個体収集を行った地点をプロットしました。調査地の選定は、標本調査やインターネットによる情報にくわえ、地形や地質、植生などから分布を推定して行っています。個体収集は、交配事件や形態観察、そしてex situ保全を目的としており、極端に個体数の少ない集団からは収集していません。また、なるべく株分けをして持ち帰り、もとの個体は残るようにしています。また、DNA分析用に葉も収集しています。各集団のサイズに合わせて数は調整します。また、病気などの蔓延を防止するために、一度系統保存庫で栽培した個体は外に出すことはありません。  
  実は、ワサビは野生と栽培の区別がつきにくい植物です。栽培と野生を明確に分ける形質はこれまで見つかっていません。それどころか、日本全国のワサビとユリワサビを調べた結果、両種においても中間型が存在するため、種を区別する形態的特徴を明らかにすることはできていません。両種が同所的に自生している集団では、中間型個体が見つかっています。DNA塩基配列の比較解析からも、両種を明確に区別する突然変異は見つかっていません。ただ、両種の典型的な形態は似てもにつかないものですし、基本的には好んで自生する場所は違います。  
   
       
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