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*「気になることば」があるというより、「ことば」全体が気になるのです。
*ことばやことばをめぐることがらについて、思いつくままに記していきます。
*「ことばとがめ」に見えるものもあるかもしれませんが、その背後にある、
人間が言語にどうかかわっているか、に力点を置いているつもりです。
19971214
■久しぶりの買い物
13日(土)は国語語彙史研究会で大阪女子大学へ。
そのおりにいくつか話題を仕入れたが、今日は、翌日、つまり今日の話し。
新大阪のメルパルクに泊まって、いざ京都へ繰り出したのである。
かなりごぶさたしてました。
まず京都市役所あたりの寺町に向かうのだが、地下鉄東西線ができたおかげで、安く手早く行けるようになったのは嬉しい。なんせ「京都市役所前」という駅があるのだから。
ところが、和本の入手が見込める古本屋さんはほとんどお休み。
来たのが早すぎたのかと思い、ちょっと時間をつぶす。
ありがたいことに地下街Zestも出来、レコード屋や紀伊国屋も入っているので、暇潰しにはこと欠かない。食事も手軽にできるようになった。ま、前にも食事するところはあったけれど‥‥
結局、待ってもだめだった。竹苞楼で『大日本永代節用無尽蔵』(文久4年版・2冊)を得ただけ。このお店、何度か足を運んだことがあったが、ちょっと話しかけづらく感じていて、やや奥に積み重なっていた節用集もほとんど見たことがなかった。
が、最近、『大日本〜』の文久4年版が必要になっていたことでもあり、思い切って声をかけたのである。
文久版はなんと3揃いもあった。そのなかで一番安いやつを買った。
実は、これが中身はきれい。手擦れもほとんどない。
刷りは後のものなのだが、文字はなかなかくっきりと出ている。
安いのは、表紙の禿げている部分が大きいのと、本文の2丁(袋綴じなので4ページということ)の端が破れているためという(別の本のコピーが張ってある)。
はははh、本文がきちんと読めさえすれば、こちらは万々歳。
「中部日本・日本語学研究会」のホームページがYahooに登録されました。
私としては「ホーム:社会科学:言語学:言語:日本語」で登録したつもりだったのですが、その下位の「ホーム:社会科学:言語学:言語:日本語:団体」に入っちゃいました。で、この「〜:団体」には、なんと「中部日本・日本語学研究会」しかない。Yahooさんは、この会のために、あらたなカテゴリィを作ったのですね。光栄のいたりです(単に規則としてそうなっているのかも知れませんが)。でも、「:日本語」で見えた方がよかったかなぁ。
とまれ、Yahooで「中部日本」と入力すればたどりつけるようになりました。
どうか言い触らしてやってくださいませ。
「芳名帳」に小矢野哲夫さんのメールを追加しました。
19971215
■「濃州(じょうしゅう)」
13日(土)の研究会で、まえに触れた「ひばりが丘=ビバリーヒルズ」説の先生ともお話しすることができた。
先生曰く、福井・岐阜むすぶはずだったJR越美北線(越美南線)は、なぜ越濃〜と言わないのか、と。
普通、旧国名を「〜州」というとき、頭の一字をとっていう。
武蔵なら武州、尾張なら尾州。ただし、頭の一字が同じになる国では、二字めをとる。
美作なら作州、美濃なら濃州というわけ。旧国名をめぐる作法はこのとおり。
それを踏襲すれば越美北線は変。同様に、美作がかかわる因美線もしきたりに合わない。
なるほど。でも私には答えられない問題。で、別の情報を御提供した。
室町時代の節用集だと「濃州」に「デウシウ」と振りがながありますよ、と。
前田金五郎『西鶴語彙新考』(勉誠社)にも出てくる話ではある。
漢和辞典などを調べると、「濃」をジョウと読むのは漢音で、ノウと読むのは慣用音らしい。
ジョウが正式な発音で、ノウは農・膿・儂にひかれた音ということのようだ。
これだから字音の日本語化はおもしろいなぁ、と思っていたら、現代中国語音も農・膿・儂と同じnongらしい。同じ変化が別々に起こったのか、あるいは、江戸時代以降の中国との交流で、日本にも濃ノウが定着したものか。
これを解明するとなると、私には荷が重い。
念のため、『西鶴語彙新考』を見ていたら、つぎの用例があることに気づいた。
かやうに候者は、でうしうもとすの郡に住居する者にて候(虎明本狂言・やくすい)
「でうしうもとすの郡」は濃州本巣郡。なんと、「ひばりが丘」先生の御出身地である。
「芳名帳」にYeemarさんのメールを追加しました。
19971216
■「予讃線」
岡島さんからメールをいただきました。
なるほど、予讃線なら「伊予」の「予」をとってるわけで、旧国名の二字めを採用することもあるんですね。
う〜ん、混迷する‥‥
あるいは、「予讃」という言い方が熟していることも考えられるか。
つまり、四国地方の瀬戸内側の言い方として定着していれば、それをそのまま線名にした方が便利ではある。
MS−IME97でもOAK/WINでも「予讃」は単語登録されていますので、これはいけるかも!
四国方面に行く機会があったら、尋ねたり、気象情報を聞いてみたりしたいですね。
「予讃地方の天気は‥‥」と言ってくれるかもしれませんし。
じゃ、越美北線の「越美」はどうかというと、越美地方という言い方はちょっと知りません。
MS−IME97でもでてきません。ところが、OAK/WINでは出てくる。なんなんだろう。
「芳名帳」に岡島昭浩さんのメールを追加しました。 昨日分「気になることば」につき、佐藤の懺悔(?)も載ってます。
19971217
■YZH計画
という計画に協力してほしいとのメールをいただいた。
何だか秘密めいていていいですね。YとかZとか、アルファベットのうしろの方の文字があるのがそう感じさせるのでしょうか。
メールの送り主は、熊本県天草郡大矢野町立湯島中学校の2年生、寛志・義明・圭一郎・直美・夏美さんと担任の金井義明先生です。
YZH計画。これは「湯島を全国の方言で紹介してもらおう計画」の略称だとのこと。
計画の骨子は、次の文をそれぞれの方言に訳をしてもらう、ということです。
これが、僕たちの住んでいる湯島です。
周囲4キロメートルとたいへん小さな島で、別名「談合島」とも呼ばれています。
どうしてそう呼ばれているかというと、島原の乱のときこの島で話し合いをしたり、刀をつくったりしたためだそうです。
有明海の海岸からも遠くに見ることができ、台形の形の島としても知られています。
うちの学生にも協力してもらいましょう。
ところで、天草といえば15年まえ、後輩にせがまれて3週間ほど方言調査をした思い出の地です。
メールを読んでいるうちに、海や海岸や入江や夕日や、あれやこれやが思い出されたことです。
本渡ユースの人たち、元気にしてるかな。
というわけで、私からもご協力をお願いします。
『知恵蔵』のCD−ROM、はずれでした。
19971218
■OCRのクセ
OCRソフトは、リコーの『読取物語EX』を使っている。
Windows3.1時代、比較的安くて連続処理が可能だったのが出会いのきかっけ。
以来、バージョンアップもしているし、クレームをつけたら密かに修正版を送ってもらったこともある。
リコーのカスタマーセンターのお姉さんがたの対応もいい。
もちろん、長いつきあいになれば、いろいろ不満もある。愛憎なかば、といったところか。
まず、認識時のクセが気になる。このソフトはときどき、「主/王」「夫/天」などをそれぞれ逆に認識することがある。どうもナベブタ様のものが弱い。
また、一字の認識が、妙に細かくなることがある。
「音→立日」「志→士心」なんてのはお手のもの。「言→一一一一口」というすごい作品も作ってくれた(バージョンアップで多少は軽減したようだ)。
あと、連続処理をかけると、画像を読み込むときにちょっと時間がかかる。
さらに、認識枠をかぶせるのも、ちょっと時間がかかる。
認識をおえてからも、ちょっとのあいだ、その画像を表示している。
トータルでいくと、Windows3.1用と変わらないか、おそめである。
そう、この点は、Windows3.1版はキビキビしていた。
画像の編集もやりやすかった。
バージョンアップは、かならずしもいいことばかりではないようだ。
ただ、行の切りわけは優秀な方だろう。ルビなどを元の行とともに一行と認識することはまずない。
もちろん、元の行とルビとのあいだの透き間が、たとえ1ミリでもいいから帯状になっていること、という制限がある。
別にマニュアルに書いてあるわけではないが、経験から。
だから、ルビの( )が大きめで、元の行との「帯」を断ち切るようになっていればアウトだし、スキャンの時にななめになってしまうと、途端に切りわけが不正になる。
しかし、活字との相性というのはある。
綺麗に印刷されていても、ちょっと古い活字では、ちょっと認識率がさがるようだ。
現代の活字なら、100パーセント正解もありうる。
こういう情報ってなかなか手に入らないので、御提供する次第。
19971219
■バンドルソフトの性能
『読取物語』以外のソフトを使ってみたいと思い、エーアイソフト『読んde!!ココ』を買ってみた。
定価19800円で連続認識処理ができるのは立派である。
ちょっと使った感じでは、行の切りわけがちょっと不得意のようだ。
まぁ、ほんとうにちょっと使っただけなので、真価はまだわからないが。
使い勝手も、まぁ、互角かもしれない。
ただ、誤認識した文字パターンの登録は、圧倒的に『読取物語』が上。
誤認した文字をクリックすると候補文字10字がその場で表示され、その中の一つを選ぶ。
誤認文字がほかにもあれば、同じ操作をくりかえす。
一連の訂正作業をおえた状態で、パタン辞書のメンテナンスを選択すると、文字パターンと選んだ文字とがすでに関係づけられていて、okボタンを押すだけで登録してくれる。
『読んde!!ココ』では、こういうエディタ部分と辞書部分との連携プレーはしてくれない。
文字パタンを表示させ、いちいち文字を入力することになる。
また、候補文字の表示箇所が固定しているため、いちいちカーソルを移動しなければならない。
『読取物語』になれた目からみれば、一世代前のものに見えてしまう。
とりよせてもらった『読んde!!ココ』はスペシャルセットとかで、IBMの音声読み上げソフト・プロトーカー97が付属する。
メーカーとしては、「お買い得ですよ。買わなきゃ損損」とばかりに、合計定価29600円にバツ印をつけて、16800円の新定価をアピールしている。ショップの割引があって12800円。
昨今のオフィスソフトの低価格競争もそうだが、ソフトの値段というのはあってないものなのかと思ってしまう。
しかし、このプロトーカー97がちょっと曲者。
音声自体はかなりいいのだが、クリップボード経由でしか読み上げず、それも32kbまでしか読まない。
抑揚・速さなど、いくつかカスタマイズできるが、とても9800円で売ってるソフトとは思えない。
これなら東芝音声システムのフリー版の方が、音声認識でソフトを立ち上げることもでき、はるかに多機能だ。(ま、ほとんど使ってないけど)
そのうち思わぬ使い方に気づくかもしれないし、どこかに取り柄もあるのだろう。
たとえば読み上げ辞書14万語とか、開発者向け情報を流しているとか。
要するに、どれだけ値段に見合った使いでがあるか、ということなのですが。
同年輩の同僚・服部伸さんが、ことば関係ではないが、おもろそうな本を出しているのに気づいた。
講談社選書メチエである。
私もがんばらなくっちゃ。
19971220
■「たわい(他愛)」の場合
前に、子音が挿入される発音について考えてみた。
「場合」をバワイ・バヤイなどと発音するやつである。
結構、四苦八苦した部分もあって、読みにくかったかもしれません。
いままでのやり方でいくと、今回は、もっとむずかしい例です。
が、視点をかえるとあっけなく解決してしまいました。
これまでのやり方だと、「場合」なら、baaiがbawaiになるのは前の子音bの影響、
bajaiになるのは後続のiの影響としてきました。
すなわち、その単語のなかに、挿入される子音の契機をさがしていたわけです。
ところが、今回は「他愛」をtawaiと発音するもの。
wのきっかけになる音、すなわち唇を使う音はどこにもない例です。
さあ困った。ところが、発想を逆転させればいいと気がつきました。
もとのtaaiにおいて唇が使われないからこそ、唇を使ったwが使えるのだ、ということです。
逆説めいた言い方になりましたが、そういわざるをえません。
この種の子音挿入では、当然のことながら、もとの発音との異なりは子音の有無だけであって、他の面におよびません。
いってみれば、もとの発音をできるだけ残しながら、子音だけ挿入することになります。
となると、もとの発音で使っている発音器官(舌とか声帯とか)は、子音挿入をうみだすきっかけとして動きだしてしまったら、もとの発音は保持されにくくなります。
すなわち、音の変化が、挿入された子音だけでは済まなくなる可能性があります。
となれば、もとの発音で使われていない発音器官によって子音を挿入するほかありません。
taaiの場合は、唇こそが関係していない器官です。
そこで、唇を使う音で子音を挿入しなければならない、というか挿入することができる。
で、実現されたのがw音ということになります。
マイクロソフトがWindows98ほかのOSで、標準装備の漢字種を大幅に拡大する。 喜んでいいのか、憂えるべきか、ちょっと判断しかねています。
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