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気になることば 第11集   バックナンバー   最新
19961118
■「お値打ち」

 私は埼玉県で22才まですごし、28才まで宮城県で過ごした。まさに、箱根の関を越えないで過ごして きたことになる。もちろん、旅行などはでは西へもいったが。

 だから、28で岐阜にきたときは、いろいろとまごついたものだ。初めて耳にし目にすることばだらけ。 そんななかでも中京らしさを今でも感じるのが「お値打ち」という言葉である。たとえば、こんな風に 使う。
 夜はマスターのおまかせ料理がおススメです。600〜1,000円のお料理が5品で2,500円は 絶対お値打ち! (無料配布タウン情報誌『ぷらざ』11月号より)
 お値打なモーニング &ランチが魅力のサイドバイサイド。(同じ)
 意味は「お得な」(最近はあまりに見かけないが「お徳な」という表記も あったような)と同じ。これは全国区のことばだろうが、「お値打ち」は中京圏のものだと 思う。もちろん、はじめて見たり聞いたりしても分かることばだから、あまり方言的な感じは しない。でも、「使う」ということに焦点を置けば立派な方言である。いや、まて、他の地方でも使うの かもしれないけれど。御教示お願いいたします。
19961119
■網と綱

 昨日は、なんとなく風邪をひきそうになったので、サークルKでチゲ鍋を買って帰り、帰宅直後、葛根 湯を飲んだ。今のところ、大丈夫のようだが少し頭が重い。まぁ、これくらいはバファリンか何かでやっ つけてしまおう。ともあれ、東洋の英知に、ありがとう。

 で、東洋の英知といえば、IMEである。ついこないだまでFEPとか言っていたやつ。そのベンチマ ークテストを『ASCII DOS/V ISSUE』12月号でやっている。 ATOK10・MS− IME97・WXG・VJE−Deltaなどの変換くらべである。さすが ATOK10は単独一位の 様相だが、MS−IME97も肉薄してきている。まぁ、あっしにゃ、あまりかかわりないことですが。 第二水準の漢字を部首・画数・読みなどの複合検索で素早くだせないことには仕事にならないので、そちらが 重視されるのです。わたしの場合。

 で、ベンチマークでテスターが用意した語に「情報公開法要網案」というのがある。「要網」とは何ぞ や。「要綱」じゃないのかな。テスターとライターが別人で、見誤ったのかもしれない。 いや、でも、 ATOK10とVJE−Deltaは「情報公開法羊毛案」、WXG は「情報公開法羊毛アン」に変換したとあるから、ヨウモウとやってしまったのだろう。

 でも、ちゃんと正解(?)に達したMS−IME97ってのは優秀だということか。どんな分節構造 を取り入れているのだろう。


19961120
■ぶっきらぼうな言葉から

 NHKドラマ「うちへおいでよ」(という表記だったかな)。主人公の先生をはじめ、出演の皆さん、 少しぎこちない話しぶりだ。もちろん、それが良い悪いという言うつもりはまったくない。 ぎこちなさを除けば、むしろ、べたべたしない清潔感すら感じそうだ。ひょっとしたら、 簡約日本語とかに準拠するシナリオだったりして。

 で、先週は、狂言のセクハラ事件を起こした女学生のセリフが簡約も簡約。ぶっきらぼうだった。 たしか、次のように言っていたように思う。
意外、先生にこんなに味方がいるなんて。
わたしだけ、悪者。
 ことば足らずと言ってしまえるものなのだろう。また、そういう風なことばを使う人として また場面として設定してもいるのだろう。でも、やっぱり気になる。気になるだけで、良い悪い を言うつもりはこの場合もまったくない。こういう言い方、わりと若い人が使うので しょうかね。

 夏に実家に帰ったときだったと思う。弟家族と私の家族(情けないことに父母と妹と私)で、 食事に出掛けた。帰りにはもよりのJRの駅で弟家族を降ろすことになった。すると、3歳の姪が
おばーちゃんちにだけかえるんだとおもったのにぃ
と叫んだ。最初何を言っているのかわからなかった。「お婆ちゃんちにだけ帰るんだと思ったのにぃ」 と頭の中で変換されるまで、全員が1秒はかかった。いや、妹などは、5秒たっても 分からず笑い遅れた。いつの間にこんな構文まで使えるようになったのだろうか。幼児の言語習得力 のすごさを見せつけられた思いがした。

 ぶっきらぼうなセリフを聞いて思い出したのは、まったく逆の、こんなことだった。ただ、親父 だけは別の感慨をもったらしい。「家までお前に取られちゃったなぁ」と母につぶやいていた。
19961121
■I love 優子!

 テレビの22〜23時代は、ニュース番組が目白押しだ。なかでもお気に入りは、『今日の出来事』 だった。前の女性キャスター・桜井よしこさん(岡島氏御教示。感謝!)が降りたようなので少々 さびしいが、なんせ、倉橋 ルイ子(前から知名度低かったけど、今はもうだれも知らないでしょうね) にエンドテーマ(『偶然あいましょう』?)を歌わせて いた番組でもある。義理だけでもなく見ていた。

 でも、『ニュースJAPAN』も楽しませてくれる。目玉は、安藤優子キャスターだ。この人、もとは アナウンサーなのだろうが、よく言い間違いをする。このあいだも、清原選手を「きやはら選手」と 言ってしまってから言いなおした。

 この間違えはどうして起こったのだろうか、この人はどうして間違えたのだろうか、などと 背景を考えていくのが夜の楽しみの一つ。で、「きやはら」の場合、ヨのあとのハの母音[a]を ヨの[o]の代わりに発音してしまったと考えられる。後ろの母音が前の音に影響をおよぼす ので逆行同化といわれるものだ。こう名前をつけると説明した気になってしまうが、本当の説明はこれじゃおさまらないだろう。 「逆行同化」という言葉を使う側も、使われる(説明を受ける)側も、そのメカニズムを知ってなければ 無意味だ。

 発音器官(舌とか口とか)と、それらを脳に結び付けている神経あるいは 脳の言語野(ととりあえず言っておく)の問題だと考えたい。で、神経の方がスピードが早く、 発音器官は極端に遅く、なまけものでもある。そこで、神経からの命令が順序よく実行できないために 、言い誤りが生じるのだろう。とすれば、そのような状態にした条件を考えることで、言い間違いの 本当の原因が分かるんだと思う。

 で、キヤハラの場合は何かというと、ひとつには、発音練習の不足が挙げられる。ウォーミングアップしてない から、発音器官がいよいよ怠惰に、いい加減になるのだということ。あれっ、こんな結論て、神経とか 発音器官とか持ち出さなくても言えるじゃないか。はい、そうです。特にキヤハラ問題にかぎって は。でもね、その辺に気を配れるかどうかが、大きな意味があるようにも思うんですが。

 と、今日も更新できたのは優子さんのおかげです。I love 優子!
19961122
■「全員」の「雰囲気」

 先日、Nさん(大阪北東部出身)と電話で話していたら、「フインキ」(雰囲気) という言葉がでてきた。さっそくいろいろ伺うと、結構、関西では使うという。 岡島さんがこの言い方をとりあげた わけが、いやそういう言い方の存在が初めて実感できた。

 で、私はフンイキの方が断然言いやすいのだが、Nさんはフインキの方が言いやすい という。そこで、どうしてなんだろうと考え合った。どうもアクセントがかかわる らしいとなった。が、別の日にFさん(大阪南部出身)に聞いてみると決然と「フンイキ」 としか言わないとおっしゃった。んんん、ちょっと頓挫。

 先日、「全員」という言葉をキーボードで打っていたら、はっと気づいた。 私のくだけた発音だとゼーインになるではないか。きっとーイの部分も鼻音化(鼻に息が 漏れる。鼻への通路が開かれ、鼻腔も共鳴する)しているのだろう。さらに、そうなる ことすら省略されて、ーイのまんま発音することもあるようだ。

 なんでこうなってしまうんだろう。不思議だ、不思議だ(そうです。ちょっと忙しい ので説明が面倒なんです)
野浪正隆さんからの情報です。先日の「お値打ち」ですが、 「「お値打ち」は、 神戸・大阪でも使います。商人言葉ではないでしょうか。」とのことでした。そういえば、 この商人という点を書き漏らしていました。また「 のなみは、神戸・大阪しか知りませんが、東が岐阜なら、西は、ひょっとすると関西一円 なのかもしれません」という推定もあげてらっしゃいます。やっぱり、中京風と思ったのは 東男の限界ですね。御教示、感謝にたえません。
19961123
■「どうせ、だめな女だわよ」

 昨日(ん、今日と言うべきか?)、NHK放映の『ビバリーヒルズ高校白書』が最終回を迎えた。 もうおじさんの領域に入った私だが、なぜか毎週見ていた。翻訳も大変だろうなぁという思いも ある。

 で、標記のような「〜だわよ」という言い方が使われることがある。ちょっとすねてみたりする ときに使い、言ったらその場を去るのが普通。まぁ、一種の捨てぜりふみたいなものなのだろう。 ビバリーヒルズの高校生なんだから相応にステータスはある。言葉もステータスにふさわしくない といけない。でも、人間だから、すねたくもなれば、ひがみもする。そういう背景を承知していて 訳したのが「〜だわよ」なんだろう。昨日使っていたのは、一見イケイケ風のケリーと 遊び人風のスティーブだった(メーキング風の番組だったとき、ケリーは本当にしおらしく真摯な女優になっていてびっくりしました。 スティーブはそのまんまでした)。思い返せば、この二人が一番使っていたような気がする 。その辺まで考えて日本語版を 作っているのだろうか。ともあれ、なかなかの名訳なのではないかとひそかに思っている。

 と書いているうちに思い出した。O大学B学部のH先生が (ってバレバレか)、分譲住宅地の名称に「ひばりヶ丘」が多いのは、ビバリーヒルズのステー タスをあてにしたものかもしれないと冗談まじりに言ってらっしゃった。なんて柔軟な発想だろう! 私などは、自然がいっぱいなので(=都市部から遠いのでせめて)「ひばり」という名で美しく 表したものぐらいにしか思ってなかった。

 それらにくらべて『ビバリーヒルズ高校白書』という名はどうだ。どう考えてもダサイ。
 昨日の野浪正隆さんの情報、京都はどうなっているのか気になってきました。ひょっとして昔は京都で 「お値打ち」(形容動詞)が使われていたけれど、今は使われない、大阪・神戸・岐阜などに残るという かたちで方言周圏論が成立すると面白いなぁ……と夜の思考は妄想に終始するのだった(前日記す)
19961124
■変な日本語の効果

 『ASCII DOS/V ISSUE』12月号の「資料請求 020」の広告。見た見た?
 1stMainboard、Cyrix6x86TM P200+搭載できる[小見出し]
 高速の75MHzのシステムバスをもつFICのPA−2005は評価が得られ、世の中最初の Cyrix6x86TM −P200+ プロセッサが使えるマザーボードです。
 広範な選択可能のため、ユーザは強力リューションが作れます。
 どうしてこういう日本語になるのだろう。言いたいことは分かるけど、やっぱり日本語じゃないよね。 太字以外にもほんとはおかしく感じるところがある。どこかの翻訳ソフトにかけたまま印刷に まわしたのだろうか。そうとう構文解析とか辞書とかが貧弱なやつなのかな。連体修飾は「の」だけに なってるようだし。

 いやいや、読みにくいものほど、じっくり読んでしまう(私のように)。 そこが付け目かも。でも、ここまでやると、日本語でのサポートが確実に受けられるか心配になってしまう。 やっぱり逆効果だよね。

 この会社、本当に日本で営業するつもりなんだろうか。
桃栗続報] 先日、学生に「「桃栗三年柿八年、ゆずは九年でなり盛り、梨の大馬鹿18年」 ていうのを民謡か民話関係の本で読んだことがあります」と教えてもらいました。
先達・岡島昭浩さん(福井大学)の目についたことば
気鋭・高本條治さん(上越教育大学)の耳より情報


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