主催者あいさつ

 神の鳥ともいわれる国の特別天然記念物ライチョウは,岐阜県のシンボル「県鳥」に指定されています。日本アルプスとその周辺域の高山帯に生息し,岐阜県では飛騨地方の飛騨市,高山市,下呂市に分布し,笠ヶ岳,乗鞍岳,御嶽山が主な生息山岳です。
 日本のライチョウが,いま絶滅の危機に直面しています。環境省や動物園等が共同で,今もっとも力を入れて保護増殖事業を進めている鳥類です。2012年に環境省が保護増殖事業を始め,生息地での生息域内保全や動物園での生息域外保全が活発に進められています。特に乗鞍岳は有数の生息地で,個体数が比較的安定しているため保全活動の拠点になっています。
 環境省のライチョウの生息域外保全は,2015年から乗鞍岳で一部の卵を採集して動物園に移動し,開始されました。動物園で人工ふ化・育雛に成功し,それらが成長して毎年繁殖しています。2019年から上野動物園(東京都),富山市ファミリーパーク(富山県),大町山岳博物館(長野県),那須どうぶつ王国(栃木県),いしかわ動物園(石川県)の各動物園で展示公開が始まっています。残念ながら岐阜県には動物園がなく,身近に観察することはできませんが,全国のすべての飼育ニホンライチョウは,岐阜県・長野県にまたがる乗鞍岳出身なのです。そして,今年,中央アルプスでのライチョウ復活事業にも発展しています。
 2019年3月には,岐阜県も「岐阜県ライチョウ保護計画」を発表し,本種の保全事業の一環として,普及啓発を本格的にスタートさせました。その一環として今回の「第19回ライチョウ会議ぎふ大会」を開催することになりました。今大会は,環境省,岐阜県,動物園,大学,保全関連団体などの取り組みを紹介し,ライチョウの現状や保全の最前線を広く知っていただくことを目的としています。また,このシンポジウムにあわせて,ライチョウの特別展を岐阜大学図書館で開催し,剥製などの貴重な標本を展示します。さらに,これを読めばライチョウのすべてが分かる本の発行を,関係者70名以上の協力を得て準備しています。大会当日に出版予定です。
 ライチョウやその生息高山を保全することは,岐阜県の場合,世界農業遺産に指定された「清流長良川の鮎」や県の文化遺産である鵜飼を保全することにもつながっているはずです。岐阜県北部にライチョウが生息できる豊かな高山環境・自然環境があることが,県内の豊かな水やアユなどの淡水生物,さらには県内の農業を育んでいることを忘れてはなりません。自然はつながっています。生物多様性の保全と文化・歴史の保全もつながっています。
 このライチョウ会議は,2004年(第5回)と2012年(第13回)に,県内の生息地である高山市内で開催されています。今大会の開催地である岐阜市はライチョウの生息地こそありませんが,先に述べたように,岐阜市には長良川鵜飼があります。県全体での意識・関心を高めるために,「第19回ライチョウ会議ぎふ大会」を岐阜市内で開催することとしました。ライチョウ保全の拠点である岐阜県民としても,皆で誇りと責任を持ちませんか!

 

 

第19回ライチョウ会議ぎふ大会実行委員長

楠田 哲士(岐阜大学応用生物科学部)

 

 

 

主催者あいさつ

(イラストは「清流の国ぎふ」のマスコット「ミナモ」です。(c)岐阜県)

 

「飛山濃水」の岐阜県のイメージ

ライチョウという希少種の保全は,岐阜県の歴史や文化の

保全にも間接的につながっています。