肝胆膵外科
特色
肝胆膵外科は、肝臓、胆道(胆管、胆のう、乳頭部)、膵臓の外科治療を専門としています。 この領域は胆管や血管などが複雑に走行するため、手術も肝切除や膵頭十二指腸切除術など複雑で広範囲な切除が必要となります。一方、これらの領域にできた癌は、膵癌をはじめ悪性度が高く難治性癌の代表と言われています。また、肝胆膵領域における癌治療の特徴として、有効な化学療法が他臓器に比べ少ないため外科的切除の役割が大きく、積極的に切除を行っております。癌の浸潤が主要な血管や他臓器に及ぶ場合には、これらも合併切除し根治を目指します(図1)。このためには術前画像によるシミュレーション(図2)や他科とのカンファレンスを行い、綿密な治療プランを立て手術を行っています。また、発症時は切除困難と診断された症例に対しても、化学療法や放射線療法で腫瘍の縮小を図り、その後の根治術を行っています。手術からの早期回復のため厳重な周術期管理を行っています。一方、良性疾患や低悪性度疾患に対しては 腹腔鏡下手術など 患者様の体にやさしい 低侵襲手術を導入しています。
スタッフ
- 特任教授村瀬 勝俊
- 助教・臨床講師深田 真宏
- 助教・大学院東 敏弥
診療実績
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | ||
肝切除術 | 46 | 47 | 54 | 42 | 39 | |
葉切除 | 11 | 11 | 15 | 14 | 5 | |
区域/亜区域 | 17 | 17 | 16 | 16 | 10 | |
部分切除 | 18 | 19 | 33 | 12 | 24 | |
膵切除 | 36 | 38 | 34 | 35 | 50 | |
膵頭十二指腸切除 | 22 | 23 | 16 | 18 | 24 | |
膵体尾部切除術 | 12 | 14 | 15 | 15 | 23 | |
その他 | 2 | 1 | 3 | 2 | 1 | |
肝膵同時切除術 | 1 | 3 | 0 | 1 | 0 | |
肝切除術 | 46 | 47 | 54 | 42 | 39 | |
腹腔鏡下手術 | 11 | 4 | 9 | 9 | 9 | |
膵体尾部切除術 | 12 | 14 | 15 | 15 | 23 | |
腹腔鏡下手術 | 1 | 2 | 5 | 5 | 7 | |
胆嚢摘出術 | 33 | 41 | 49 | 57 | 57 | |
腹腔鏡下手術 | 30 | 29 | 40 | 51 | 46 | |
疾患別 | ||||||
原発性肝癌 | 18 | 19 | 28 | 25 | 14 | |
転移性肝癌 | 19 | 25 | 33 | 13 | 20 | |
胆道癌 | 14 | 10 | 16 | 16 | 9 | |
膵悪性腫瘍 | 23 | 22 | 19 | 15 | 27 |
肝切除術
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
葉切除 | 11 | 11 | 15 | 14 | 5 |
区域/亜区域 | 17 | 17 | 16 | 16 | 10 |
部分切除 | 18 | 19 | 33 | 12 | 24 |
合計 | 46 | 47 | 54 | 42 | 39 |
膵切除
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
膵頭十二指腸切除 | 22 | 23 | 16 | 18 | 24 |
膵体尾部切除術 | 12 | 14 | 15 | 15 | 23 |
その他 | 2 | 1 | 3 | 2 | 1 |
合計 | 36 | 38 | 34 | 35 | 50 |
肝膵同時切除術
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
合計 | 1 | 3 | 0 | 1 | 0 |
肝切除術
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
腹腔鏡下手術 | 11 | 4 | 9 | 9 | 9 |
合計 | 46 | 47 | 54 | 42 | 39 |
膵体尾部切除術
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
腹腔鏡下手術 | 1 | 2 | 5 | 5 | 7 |
合計 | 12 | 14 | 15 | 15 | 23 |
胆嚢摘出術
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
腹腔鏡下手術 | 30 | 29 | 40 | 51 | 46 |
合計 | 33 | 41 | 49 | 57 | 57 |
疾患別
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
原発性肝癌 | 18 | 19 | 28 | 25 | 14 |
転移性肝癌 | 19 | 25 | 33 | 13 | 20 |
胆道癌 | 14 | 10 | 16 | 16 | 9 |
膵悪性腫瘍 | 23 | 22 | 19 | 15 | 27 |
対象疾患
肝臓
良性:肝内結石症、肝嚢胞性疾患 など
悪性:肝細胞がん、肝内胆管がん(胆管細胞がん)、転移性肝腫瘍(大腸癌肝転移など) など
肝切除術
病気の状態と肝臓の機能を評価し、最適な術式を選択します。このため、CT,MRI画像から肝内部の血管走行を3D画像で確認し、手術シミュレーション(図2)を行います。
肝細胞癌
B型肝炎、C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変が進むと肝臓がん(肝細胞癌)が発症することが知られています。近年ではアルコール性肝炎、脂肪肝から発生する肝臓がんも増えています。治療はがんの数や大きさによって手術・ラジオ波焼灼療法・カテーテル治療(TAE)・抗がん剤治療を選択します。もともと肝機能が低下している症例も多く、切除後にどれだけ肝機能を残せるかも考えながら切除を計画します。
転移性肝癌
多くは大腸癌の肝転移が対称となります。転移性肝癌の場合、化学療法と連携した治療が必要となります。当初切除困難と診断された場合でも、化学療法により肝転移が小さくなることで切除が可能となり、根治を目指します。
胆道
良性:胆のう結石症、胆嚢ポリープ など
悪性:胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌(Vater乳頭部癌) など
胆道癌手術
胆道とは肝内胆管から総胆管~乳頭部までの 胆汁の流れ道のことを指します。この領域の癌の多くは黄疸をきっかけに発見されます。どこに病気ができるかにより手術は肝切除~膵頭十二指腸切除術までいくつかの術式があります。時には肝切除と膵頭十二指腸切除術を同時に行う場合もあり、この場合は10時間を超える手術となります。胆石症とは胆道に結石ができる病気で、食後の心窩部痛や胆のう炎、胆管炎をきたす場合があります。胆のう結石症の場合は、痛みや炎症など有症状となった場合に切除の対称となります。その多くは腹腔鏡下胆嚢摘出術で切除します。
膵臓
膵がん、膵管内嚢胞性腫瘍(IPMN、MCN)、膵内分泌腫瘍(インスリノーマ、ガストリノーマ等)、など
膵切除術
膵臓癌は年々増加傾向で、2014年がん統計では肝臓がんを抜き死亡原因の4位となりました。発見しづらく治療の難しいがんのひとつですが、医療技術の進歩とともに治療成績も向上しています。膵癌は浸潤傾向が強く、門脈などの周囲に浸潤していることが多く、手術では膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術に加え、門脈合併切除術など他臓器合併切除術を行います(図3ab)。また、診断時切除困難と診断された場合、化学療法を先行し、その後切除を目指します。また、良性疾患や低悪性度疾患に対しては、腹腔鏡下膵体尾部切除術を積極的に取り入れています(図4)。
図1 下大静脈合併切除し人工血管置換術を施行した肝切除
図2 肝切除における3C-CTによるシミュレーション①
図2 肝切除における3C-CTによるシミュレーション②
図2 肝切除における3C-CTによるシミュレーション③
図3a 大伏在静脈で形成したグラフト
図3b 大伏在静脈グラフトを用いた門脈再建術
(膵頭十二指腸切除術)
図4 腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除術①
図4 腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除術②