呼吸器外科
特色
原発性肺癌,転移性肺癌,肺良性腫瘍,縦隔腫瘍,肺嚢胞性疾患,肺感染症などの呼吸器全般の手術を行っています。低侵襲手術を目指し,内視鏡併用手術を積極的に行っています。呼吸器センターカンファレンスを開き,内科、外科、放射線科などが専門的な立場から議論し,患者さんにとって最適な治療方針を決定しています。また心臓血管外科,消化器外科とも合同でカンファレンスを行い,消化器癌や心臓疾患を持つ呼吸器疾患患者に対しても,安全に手術可能です。
症例数・治療・成績
過去5年間の主な呼吸器外科手術数は,下記のごとくです。
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
肺悪性疾患(原発性肺癌、転移性肺癌) | 121 | 130 | 139 | 159 | 167 |
肺嚢胞性疾患 | 22 | 14 | 15 | 19 | 15 |
縦隔疾患 | 11 | 19 | 13 | 23 | 18 |
肺良性腫瘍 | 7 | 7 | 0 | 11 | 9 |
胸膜・胸壁腫瘍 | 3 | 2 | 5 | 5 | 6 |
感染性疾患 | 9 | 2 | 7 | 5 | 1 |
原発性肺癌の5年生存率
ここ数年は手術症例が増加傾向で,2018年の手術症例数は222例でした。胸腔鏡手術を積極的に行い,近年はエンドカメレオンという術中に視野方向を容易に調整することができるハイビジョン硬性鏡を導入し,より安全で精度の高い手術が可能となっています。2003年からは胸腔鏡のみの手術も行っており,術後も順調に経過されています。また2018年よりロボット手術を導入し、痛みの少ない手術が可能となってきました。 原発性肺癌はI~II期に対しては外科切除を原則としています。III期以上に対しては縦隔リンパ節の転移の陽性の有無をPET、縦隔鏡または経食道エコー下針生検を用いて診断し,陽性症例に対しては術前化学療法を施行しています。IA期の5年生存率は84.2%です。早期肺癌に対しては,胸腔鏡を用いた低侵襲手術を積極的に行っております。一方すりガラス陰影を呈する末梢小型肺癌に対しては,肺の生理学的機能を駆使した区域切除を積極的に行い,呼吸機能の温存をめざした身体にやさしい手術が可能です。隣接臓器合併切除を要する局所進行肺癌に対しても心臓血管外科,整形外科の協力のもと安全に手術が可能です。小細胞癌はI期で手術を行っています。2012年2月には岐阜県初のロボット支援肺葉切除術を施行し成功させました。2018年から大学病院に最新鋭のロボットであるDaVinci Xiが導入され、現在まで総ロボット手術症例数は14例となり、今度も増加していく予定です。 近年単孔式の肺葉切除術の報告が散見されるようになってきましたが、当科でも約3.5cmの単孔式の肺葉切除術を開始しました。エンドカメレオンを用いることで通常のカメラと比較し周囲の観察も行いやすく安全な手術も可能です。通常の胸腔鏡手術と比較しても孔が1カ所であるため痛みも少なく大変好評を得ております。
当科における原発性肺癌の5年生存率
Stage | n | 5年・生存率 |
---|---|---|
IA | 545 | 84.2 |
IB | 243 | 69.4 |
IIA | 97 | 59.9 |
IIB | 50 | 49.0 |
IIIA | 127 | 48.7 |
IIIB以上 | 38 | 44.9 |
ロボット支援下手術
単孔式肺葉切除
転移性肺癌は原発巣がコントロールされた症例に対して手術を行っています。両側転移であっても縮小手術である部分切除、区域切除を駆使し,術後呼吸機能の温存と根治性を目指した手術を積極的に行っています。その後新たな再発病変が出現しても、換気血流シンチを用いてより正確な術後予測肺機能を計算し、可能であれば積極的に手術を行っております。
縦隔腫瘍は胸腺腫が2018年は9例であり,完全切除が望めない浸潤性胸腺腫では化学療法後に手術を施行しています。また大血管の合併手術も施行しています。嚢腫例は胸腔鏡下で手術を行っています。 2017年からは剣状突起下に約3cmの皮膚切開で前縦隔腫瘍(胸腺腫、奇形腫、嚢胞性腫瘍)の手術を行っております。術後の痛みも少なく早期の退院も可能です。
重症筋無力症に対する拡大胸腺摘除術に対しても剣状突起下アプローチによる内視鏡手術を行っており,若年女性からも好評を得ています。
肺嚢胞性肺疾患は,原則的に胸腔鏡下に手術を施行しています。巨大肺嚢胞に対しては,ティッシュリンクという電気凝固装置を用い、巨大嚢胞を焼灼し縮小させて安全に手術を施行しています。
肺感染症は,肺アスペルギローマに対する胸腔鏡下肺葉切除術,膿胸症例に対する胸腔鏡を併用した掻爬術などを行っています
悪性胸膜中皮腫に対しては胸膜肺全摘術以外に胸膜剥皮術を行い、呼吸機能を温存した手術が可能となりました。