岐阜大学の「トリとカエルと伴侶動物の生化学」の研究室


「鳥の目」で見るホルモン

 

  鳥は一般に繁殖,産卵と子育てが終わると換羽(羽の生えかわり)をして,(渡り鳥の場合は)渡っていく,というライフサイクルを持っています。このような鳥の生活は,さまざまなホルモンに支えられています。私たち人間は鳥の美しい姿やさえずりを愛でますが,このような美しい鳥の姿も声もホルモンの働きがあってのことと言えます。
 当研究室では,多様な鳥の世界を体内から支えているホルモン作用の共通性をさぐることを研究テーマのひとつにしています。研究は家畜(家禽)化された鳥であるニワトリを主な対象にしていますが,野鳥のライフサイクルの解明や,鳥類を含めた生態系における生物多様性の保全にも貢献することを念頭に置いて研究を行っています。


君は何ガエル?

 

 岐阜大学周辺の水田にはトノサマガエルとナゴヤダルマガエルというよく似た2種のカエルが生息しています。典型的な個体は外部形態(体の模様)で種の判別ができますが,模様にはバラエティがあり,どちらのカエルか判断に迷う個体もいます。
 濃尾平野と同様に両種が生息している長野県の伊那谷では,両種の繁殖期間が完全に重複していて,水田では異種間の抱接や種間交雑がしばしば見られることが報告されています。岐阜の水田で見られる,トノサマガエルかナゴヤダルマガエルか外部形態からは判断に迷うようなカエルも,両種の交雑個体なのでしょうか。私たちはこれらのカエルのミトコンドリアDNAを調べてみました。
 


人はなぜ犬を飼うのか

 

 イヌは世界最古の家畜といわれています。諸説ありますが,岐阜大学応用生物科学部の松村秀一先生のグループの研究によると約1万6千年前の南中国でオオカミの祖先から分岐したとされています。松村先生の最近の研究では,現在のイヌの祖先が絶滅したニホンオオカミの祖先と近縁であることが明らかになりました。
 当時の様子を知る人はだれもいませんが,ひょっとすると,イヌの祖先の中で好奇心の旺盛な個体が人間の群れ(集落)に近付き,「動物好き」の人間と接しているうちに「犬は外敵が来ると吠えて人間を守り,人間は余った食物を犬に与える」という共生のような関係が作られ,これが選択圧となって,しだいに現在のイヌに進化したのかもしれません。
 


鳥類は高血糖

 

 鳥類は「高血糖動物」です。ヒトなど,一般的な単胃動物の血糖値(約100 mg/dL)と比べて,ニワトリは2倍,ハチドリは8倍近くもあり,ヒトならば糖尿病と診断されるような高い血糖値です。血糖値が高くても鳥が健康を維持できるのはなぜでしょうか?
(写真:かつての岐阜大学オープンキャンパスで人気を集めていたニワトリ)


森の幼稚園

 

 日本でもよく紹介されるようになったドイツの「森の幼稚園」についての共同研究の紹介です。
 本研究が対象としたドイツのヘッセン州ベンスハイム市近郊の森は,森の幼稚園以外にも散歩などの目的で地域住民が幼少の頃から気軽に訪れる場となっていることがわかりました。
 また,この森の幼稚園における森林資源(樹木や草本,果実など)の利用(たとえば工作・装飾や食用)は,幼児教育のために新たに生み出されたものというよりは,この地域で過去から現在まで続く資源利用と,過去に行われて住民の記憶には残っているものの現在は「スーパーで購入できる」などの理由であまり行われることのないものの中から,森の幼稚園の目的(森の中での子どもたちの教育)に合致した資源が選ばれていました。