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*「気になることば」があるというより、「ことば」全体が気になるのです。
*ことばやことばをめぐることがらについて、思いつくままに記していきます。
*「ことばとがめ」に見えるものもあるかもしれませんが、その背後にある、
人間が言語にどうかかわっているか、に力点を置いているつもりです。
19971206
■「食国」
比年国家裳弊衰多礼波公費在弊幾政波行給波志と所念行とも食国天下政波独知へき物仁波不有
『後二条師通記』(金田・宮腰『新訂国語史要説』大日本出版)
国語学の担当は私だけなので、通史もやらなくてはならない。
4月からはじめたのだが、12月になってやっと中古を終えたくらいだから、実は楽しんでいるのかもしれない。
昨日は「文章・文体」。普段はあまり目にしないものも出てくる。
それが引用箇所なのだ。さて、どう読んだらいいか。
まず、「所念行」で「‥‥所念。行」と二つの文に分けよう。
上の文は、とりあえず次のように読んでみた。
としごろ、国家も弊(つひ)へ衰へたれば、公(おほやけ)の費(つい)へ在るべき政(まつりごと)は、行なひ給はじと念(おも)はる。
(試訳 : ここ何年か、国家も疲弊しているので、財政を圧迫するような政治はおこないなさるまいと思える)
下の文、「食国」がひっかかる。
まずはじめに思い浮かぶのが、ヲスクニという奈良時代的な読み。
メスクニも浮かぶが、メスが平安時代の後期、統治するの意味で使ったかどうか。
とりあえず、ヲスクニを採用しておく。「知」も統治するの意味でいい。
結局、次のようになった。音読みするか訓読みするかでまようが、その差はちょっと仕様のないところだろう。
行へども、食国(をすくに)の天下(あめがした)の政(まつりごと)はひとり知るべきものにはあらず。
((もしそのような政治を)おこなっても、日本の政治というものは、専制すべきものではない)
藤原師通(1062−99)は、天皇家の専制(院政)に抵抗した。その彼らしい、牽制ともとれる意味が浮かんでくるので、まず大きな誤りはないと思う。 もし、より良い読みがありましたら御教示ください。
昨日は例の100円柿を二袋買う。 クルマを進めながら柿の木を見ていくと、木守りとおぼしい実のほかは、ほとんどない。 今年最後の柿になるかもしれない。
19971207
■懺悔/鳥居の意味
昨日分についてさっそく藤井俊博さん(同志社大)よりレスがありました。
「所念行」を「‥‥所念。行」と二分して考えたのですが、藤井さんによると宣命では「所聞行」を「きこしめす」と読むので、「所念行」で「おもほしめす」と読めるのではないか、ということでした。
なるほど。「食国」で上代語的なにおいをさせているのだから、その前後についても宣命を参照すべきだったようです。
藤井さんの読みを汲んで試訳すれば、「ここ何年か、国家も疲弊しているので、財政を圧迫するような政治はおこなうまい、とお思いになっているとしても、日本の政治は、ひとりで統治するべきものではない」というようになります。
今日は福井からppp。岡島さんとのオフミを終えてホテルに向かう途中、ちょっと面白いものを発見。
歓楽街・片町のパチンコ屋のそばのコンクリートに、赤い構造物(とはいうも大げさな)があった。
15センチほどの木材(だったか)で、鳥居を組んではりつけているのである。
江戸時代の小説の挿絵などにも見られるが、「立ち小便厳禁」のしるし。
以上、福井のホテル・リバージュ・アケボノより送信。ちょっと修正が必要かもしれませんが、とりあえず。
えー、岐阜に帰ってきました。ここからは研究室からです。
福井への行きは北陸自動車道経由。自室から岡島さんの研究室まで2時間30分ほどでした。
帰りは、九頭竜湖経由で山越えしました。岐阜県白鳥村から東海北陸自動車道で3時間20分ほどでした。
「道の駅・九頭龍」に寄れたのはちょっと嬉しかったですね。ただ、そこからは湖は見えませんが。
近くの「和泉村ふれあい会館」で案内嬢に、火曜日に降った雪の溶けぐあいを確認していざ峠越え。
19971208
■「好事(こうず)、魔多し」−−−−誤用ぎりぎり
標題をみただけで、ははぁん、と思った方もいるでしょう。
でも、ちょっと厄介な感じなんです。
まず話の前提を確認しましょう。
現代では、「好事」をコウジと読むのが普通で、
意味は「@幸先(サイサキ)がいいと思われる事。Aいい行い。」(『新明解国語辞典』3版)となります。
コウズと読む場合は「めずらしいことや変わったことに興味を持つこと。また、風流を愛すること」(『日本国語大辞典』)の意味になります。
ただ、現代でコウズと読むのは、おそらく「好事家」という熟語にかぎられるでしょう。
まぁ、コウジの方も単独ではほとんどお目にかかることはなく、成句などにかぎられそうですが。
そこで実例をごらんいただきます。
「皆、ご苦労だった。明日も忙しくなるだろうから、一杯飲(や)って早く寝てくれ。 まずは商売繁昌で目出度い」
と、景気良く茶碗を乾した。
ところが、好事(こうず)魔多し。その夜、神田天庵に押込み強盗が入り、家中の者が全員、縛られてしまった。
泡坂妻夫「泥棒番付」『びいどろの筆 夢裡庵先生捕物帳』徳間文庫
私もはじめは「好事家(こうずか)」という読みが頭にあって、それをそのまま、ルビに反映させたのだろう思ったのですが、そうとばかりも言えないらしい。
次のような例もあるからです。
こうず は 門(もん)を出(い)でず 「こうじ(好事)門を出でず」に同じ。*人情本−珍説豹の巻−前・上「好事(カウズ)は門(モン)を出(イ)でず、悪事は千里をも走る世の慣習にて」『日本国語大辞典』
あるいは、江戸語などでは、「好事」をコウズ(カウズ)と読む場合が結構あったかもしれない。
とすると、泡坂のは時代色を出すために使った、ということも考えられそうです。
誤用ぎりぎり2(シロトの浅ましさ)につき、森田康夫さんから情報をいただきました。類似表現「畜生の浅ましさ」が落語「ちはやふる」にある、とのご趣旨でした。御教示、感謝いたします。これからもよろしくお願いします。
あ、思い出した。岡島昭浩さんからも同趣旨の情報を寄せていただいてたんでした。
その節はありがとうございました。
パソコンなどを安売りする通信販売の店を見つけましたので、メモしておきます。
安いというより、旧機種在庫がある、という方が正しいのかもしれませんが。
・サクセス
・αランドショッピングモール
・大西ジム
大西ジムは新機種主体のようです。他店より割引率がいい。
ほかにもありましたら、お教えください。情報交換しましょう。
トップページのカウンター、3000人目は私でした。
19971209
■「○○に欠乏する」
12月である。うちの生協にも『知恵蔵』と『現代用語の基礎知識』が並んだ。
で、生まれてはじめて『現代用語〜』を買った。
まぁ、社会情勢のおさらいをしようという気持ちもなくはないが、2大別冊付録が魅力だった。
一つは『現代用語20世紀事典』。20世紀97年間の流行語を俯瞰するには便利かもしれない。
欲しい情報があるとはかぎらないが。
もう一つは『現代用語〜』の創刊号(1948年版)復刻版である。
立ち読みしてたら次のような言い方が載ってたので、即買い、となった次第。
ビタミンA に缺乏すると上皮組織が萎縮、乾燥して粘膜が變質して乾燥する。
ビタミンC に缺乏すると壊血病にかゝる。
現代なら「○○が欠乏する」となるところ。
また、手元のテキスト類を検索してもでて来ないので、時代性というよりは、専門性かもしれない。
医学方面でそのような使い方が多かったので、『現代用語〜』1948版にも反映されたとか。
だとしても、どうしてニ格で表示するのだろう。
いくら医学関係だからといって、「マラリアに罹る」「肺炎に罹患する」からといのうはちょっと違うか。
やはり、「思慮に欠ける」「常識に欠ける」のような「〈アルベキモノ〉に欠ける」文型を漢語「欠乏する」に応用したものか。
『現代用語〜』創刊号(1948年版)復刻版は、「予約読者記念品」と銘打ってありますから、書店に積んであるやつには付いていても、注文の場合は付いてこないでしょう。まぁ、余ったりする場合もあって首尾よく入手できることもあるのでしょうが。
藤村由加の『古事記の暗号』というのも並んでいた。
内容を見てないので何とも言えない、というのが正しい態度だろう。
が、並べておく生協も生協だが、新潮社も新潮社ではある、とつい思ってしまう。
人間は学習する動物なのだ。
19971210
■俗語の意味
▼てゆうか 話を切り出すときの意味のない前置き。
堀内克明「若者用語の解説」『現代用語の基礎知識1998』自由国民社。以下、同じ。
てゆうかぁ、直前に話された意見・考えとは、ちょっとちがう意見・考えの方がよりいいんじゃない、それを話しますよ、っていう意味とかはたらきとかあるんじゃないのぉ。
▼だもんで 文の最初につける。
直前に話された(話した)内容が、理由とか原因とかになって起こった事態について話すよ、っていう意味っていうか、はたらきがあるんじゃないのぉ。
▼それって 前置き。
「前置き」ってことは、いきなりはなしだすことを避けるってことだよねー。
ってことはさ、いきなり使うのが「それって」っていうコトバなのかなー。
「それ」には、話し相手とのあいだですでに知られている何事(何物)かをさしししめすはたらきって残ってないのかなー。
朝、ばったり会うなり「それって、あさってのコンパのことなんだけど‥‥‥」なんて使えるのかなぁ。
なんだかなぁ。
19971211
■「稀・希」
考えてみれば、幾つかのことを整理し、たちまち形をつけてしまうこのお嬢さまの能力というのは、実は希(まれ)に見るものなのかもしれない。
北村薫「覆面作家のクリスマス」『覆面作家は二人いる』角川文庫
新しくもない話だが、「希」と「稀」である。
私の場合、マレと読むところで「希」が現れると拒否反応がある。
が、漢語の場合はとたんにどうでもよくなるから、おかしなものだ。
いや、そうでもないか。
「希薄・希硫酸」はどちらでもいい。「古希・希有」はちょっとひっかかるが、まぁ、許せる。「稀少価値・稀代」は「稀」じゃないとだめのようだ。
今日はさくっと。ネタ切れです。
リブレット、どうしようか。
旧型の60は、HD810M、キーピッチ狭い、Pentiumは素の100MHz。
新型の70は、HD1.6G、キーピッチ拡大、PentiumはMMX120MHz。
wwwをめぐっているといろいろ情報がある。リブラーなる人々がいて、サウンドカードを入れるのみならず、マックOS(のようにみえるもの? よく知りません)を入れたり、Linuxを導入する人までいる。
そのなかのある人の日記を見ると、70は中継ぎモデルらしいので、今買うなら60だと。スペックからみれば60の方が中継ぎなんじゃないかと思っちゃいますが。
ま、すべての機種が中継ぎなのでしょうが。
それはそれとして気になるのは発熱。
機種によっては熱のためか、クロックダウンするらしい(よく分からん。要するに処理が遅くなることらしい)。60・70ではそうならないらしいけれど。
今使ってるビブロ5133NP/Wもけっこう熱持つから、あの小さな筐体で発熱されたらどうなるかは心配。
冬なら懐炉がわりになるかな。
19971212
■世界分布図センター
『現代用語の基礎知識1998』をパラパラめくっていたら、「世界分布図センター」という見出しを見つけた。
何を隠そう、岐阜県図書館に併設されたものなんです。
人間、身近なものについては、大したことないだろう、と思ってしまいがち。
だから、図書館の方にはたびたびお世話になっているが、センターの方には一度も足を踏み入れたことがない。
それが『現代用語〜』に載ってるんだから、ちょっとは見直したわけです。
(ま、どうせ学生たちも、見慣れた私より非常勤の先生の方が偉く見えているのでしょうね。別に私がエライ、といってるのではありません。一般論としてね)。
で、ちょっと不満なのは、ホームページをみても分かるかと思うのですが、理系・社会系情報に偏っているように見えること。
たとえば、「分布図情報提供」など。
一応、岐阜県の方言地図も載っているが、市町村ごとに語形を与えている。
そんなに単純じゃないことは言語地理学の常識だし、これを見てもわかる(いや、岐阜のこのあたりの人じゃないと分からないか‥‥)。
やはりこの分だと、きちんとした言語地図・方言地図・民俗地図などは一つも収蔵してないだろうなぁ。
とりあえず、その辺のことをうかがうべく、メールを出したが、まだ返事はないのでこれにて。
『現代用語〜』の対抗馬『知恵蔵』も買おうかと思ったりする。 目的は付録のCD-ROM。 1994年1月〜1997年8月の主要ニュースをまとめた『朝日新聞の週間報告』と『ネーチャーガイド・日本』が収録されている。とくに前者が言語データになるかも。下心ありありというわけ。
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