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19970520
■機械からの回答
はじめて触れたパソコン(愛称 satopy1号)のマザー・ボードとCPUを交換した。
なんせ前のはDX4−100でALiとかいう半端な会社のチップセットだった。
ノートン・ユーティリティのベンチマークだと、DX2−66並にしか力が生かせてない
(10.0あたりをうろうろしてました)。今度はPentium MMX 166MHz、
チップセットは430HX。ベンチマークは42〜43あたり。同ソフトの注によると
Pentium 90MHz(値20.0)の2倍の能率だと。周波数以上に伸びてて嬉しい。
マザーボード交換は2時間で終了。細かいトラブルもあったが、
CDROMドライブを認識しないのには参った。「CDROMドライブが装着されていません」だと。
システムのプロパティでも表示されない。インジケータもつくし、イジェクトもできるではないか。
接触不良も考えられるので、あらん限りのちからでコネクターを押しつける‥‥‥
だめだ。ソフト的に前の環境に戻して再起動させたが、
今度はWindows95がちゃんと立ち上がらない。お、ディスプレーも変だ‥‥‥
で、何とかバックアップしていたファイルをDOSモードでコピーしなおす。このときほど、
バックアップの大切さと、ファイラー(FD)のありがたみを知ったことはない。何とかWindows95
が立ち上がった。そして、時間がかかるので避けていたハードウエザー・ウィザードを起動したら、
なんと簡単に認識するじゃないの。
なんだ、ちゃんと見えてるじゃないか。だったら、
1)ただひとつの本当の意味での対処法をだす、
のが親切ってもんじゃないか。それがだめなら、
2)中途半端にそれらしきメッセージをだすのではなく、考えられるだけの正解案をだす、
べきだよなぁ。そうすれば8時間も無駄にしなかったのに。♪それとも〜、俺が〜、悪いのかぁ〜
まだまだ詰めが甘いよ、マイクロ・ソフト君。インターネット・エクスプローラなんぞに
かまけてないで、ちゃんとしたOSを作ってみろよ。ま、でも、Windows3.1にくらべれば
格段に親切になっていることは確かなんですがね。マックは、トラブルにぶつかったとき、
どう回答してくれるんだろうか。何でもどんどん受け付けて、ある日突然うんともすんとも
言わなくなる、という話しも聞いてますが‥‥‥ それにしても、飛ぶようにパソコンが売れていると
言われて久しい。が、果たしてどれだけの人が使いこなし、トラブルに対処できているんでしょうかね。
ペーパー商法とまでは言わないが、いまの状態のままで売りまくろうってのは、ちょっと勇み足なんでは
ないでしょうか。こんな状況が自動車だったらと思うと、背筋が寒くなってきた。
ただいま21日の午前0時半、CDROMドライブにいれた
石嶺聡子(歌は飛びきり。美形でないところも好感がもてる)のCDを聞きながら書きました。
めでたし、めでたし。
19970528
■生きていたジテンコ
まえに、自転車の言い方としてジテンコなるものが生まれた瞬間を話題にしたことがありました
(「新語誕生の現場」)。そこでは「その後、いまにいたるまで、
ジテンコの行方は杳として知れない」と結びました。ところが、先日、taijaSさんから次のような
メールをいただきました。
わたくしの育ったのは北河内ですが、小・中・高('70〜'80)と、 自転車の呼び方は、男子「ちゃりき」女子「じてんこ」でした。 放置自転車を「置きちゃり」、自転車通学を「じてんこ通(つー)」と呼ぶなど、 多少活用もしていたようです。
う〜ん、複合語まで作っていたとは。たくましく生きていたんだね。 また、第2信では、つぎのような情報もお寄せいただきました。
続報:三重県名張地方出身の友人に尋ねたら、彼女は「じてこ(てにアクセント)」 と言って育ったそうです。
何だか幼いころ生き別れになった妹にめぐりあったような気分です。
とは言え、東京のジテンコと大阪・三重のジテンコは、多分、直接的なつながりはないでしょう。
関東にも関西にもジテンシャという言い方があり、一方でチャリンコともいうような
状態だったので、混交のため偶然同じ語形が生まれたと考えたほうが自然です。
こういう例はけっこうあったりします。『日本言語地図』やその抜粋・略図集である『日本の
方言地図』(中公新書)の「かたぐるま」でもわかりますが、東京・埼玉などに
ある共通語形カタグルマが、東北とか長野とか奈良南部とか岡山内陸部などにも離れ離れになって
分布しています。これは東京からの伝播というより、周囲にカタウマ・カタクマという語形と
テングルマという語形があるので、それぞれに混交してカタグルマを生み出したものと考えられます。
そういう状況は状況として、東京でも大阪でも三重県でも女性の方がジテ(ン)コを生み出した、
あるいは使ったというのは、また別の意味で興味深いです。地理的な差異を超えて同じ語形を
生み出した根源に、言葉に対する女性の好みが反映されているように思えるからです。
前の文を書いて二日後、「さとぴー1号改」(Satopy1revolution)の調子が悪くなりました。
何でもbios.vxdというドライバだかライブラリがないというメッセージ。そんなものはWindows95に
ないように思ったのですが、とりあえず修復インストール。ところが何度やっても途中でハングアップ。
えいっ、とばかりにフォーマット。そしたらSB16経由で接続したCD-ROMがアクセス不能。仕方がないので
外付けSCSIハードディスクに、共用のパソコンからWindows95のディスクをコピー。こいつから
インストールしたところ、こんどはそのハードディスクが不調。同期転送レート10MB/sでは、
ちょっと大きめのアプリを起動するとハングアップ…… どなたか回復法をご存じなら教えてください。
というわけで、時間もネタもないわけではなかったのですが、更新を御無沙汰しました。
マシンが不調だとやる気が失せるものですね。それを打ち破ってくれた、taijaSさん。ありがとうございました。
19970529
■視点の移動
昔、非常勤さきで教えていた学生から、Windowsパソコンのことで電話がかかってきた。
私に聞くくらいだから、ほんの初心者である。その中で、「送る」の話題が出た。
これは、エクスプローラ(ファイラー)のファイル名のところで右クリックをすると出てくるメニューの一項目。
「送る」の配下に送り先が出るので、そこでボタンを放すと送ってくれる。
この「送る」が彼女には理解できないらしい。ディスクやフォルダに送るのなら分かるが、アプリケーションに
「送る」とは如何、ということのようだ。
そこで、その場合はエクスプローラから見れば「送る」、アプリケーションから見れば「読み込む」
という風に視点の移動があるとでも考えなさい、と言ってやった。さすがに(?)現代語文法を専攻しているだけあって、
また、アプリがファイルを読み込んで立ち上がったこともあったのだろうが、
非常によくわかりました、と言っていた。「お互い言語学やっててよかったなぁ」「本当に」などと
落ちもついた。めでたし、めでたし。
でももっと困るものもある。たとえば、Windows95が入ったパソコン同士では、シリアルまたは
パラレルケーブル(ただし全結線クロスだったかな)でつなぐとファイルのやりとりができるようになっている。
この設定がちょっとまごつくのだ。「ケーブル接続」というウィンドウには、
1 〇ホスト/アクセスしたいリソースのあるコンピュータ
2 〇ゲスト/ホストコンピュータのリソースへアクセスするために使うコンピュータ
でどちらかを選ぶことになる。二台のうち、どちらかをホストに、他をゲストにする必要が あるのだが、ホストにしたいコンピュータでもこの画面が当然出てくる。その場合、果たして どれだけの人が迷わず1を選べるだろうか。「アクセスしたい」というのはゲストのコンピュータから 見ての言い方である。わたしもこれで一瞬パニックに陥りました。
19970530
■「出入り口」
みずからの意志で出たり入ったりできるものは「出入り口」を通る。人間も犬や猫も
まぁそう考えられる。もちろん、これが、犬猫をあずかって子供を増やす「犬猫銀行」
なるものがあったとして、出納コーナーがあれば、「出し入れ口」とでもなるのだろう。
先日、家賃を払うために銀行のキャッシュディスペンサで預金(余金?)いくばくもない
口座からなにがしかのお金を引き出していた。すると、となりのCDでは送金をしている
らしく、「紙幣の出入り口を閉じてください」とかいうガイド・アナウンスが聞こえてきた。
僻耳だったのだろうか。
これはちょっと面白い。一番単純に考えればアナウンスを録音するときの原稿に何かあったと
いうことになる。原稿を書くときに何の気なしに「出入り口」と書いてしまった、あるいは、
「出し入れ口」のつもりで「出入口」と書いたのを「出入り口」と読んだとか。
それにしても、製品として出荷されるまでにも、何度かの動作確認とかあるんじゃないだろうか。
何せ、他人様(ひとさま)のお金をあつかうのだから。
それらのチェックをくぐり抜けてきた背景が面白そうだ。
「出し入れ口」というのはあまり聞かない言葉だが、
「出入り口」は耳なれているので警戒感も薄れるのではないか。
また、機械の機能としてはシャベリはお負けなので、一層、そういう状況になりやすいだろう。
さらに、日本人(に限ったことではないかもしれませんが)は、
自動詞・他動詞の別にやや鈍感なことがある(能格云々まで持ち出すとやっかいになりそうなので
今は置く)。私も、自分の文章を推敲しているときに、まま出くわすし、昔、夢中で書いていた論文や、
健康状態のすぐれないときに書いた教科書などを読み返すと、恥じ入ることがある。
他人の書いたものを見ていてもそうだ。そんなことと関係ありはしないか。
そのうえ、金が意志を持って(というより持ち主の意向にしたがわずに)動き回るものとして
表現されやすい。「金は天下の回りもの」なんだか宙を舞っているようだ。「羽根が生えて飛んでいく」
実感がこもってるなぁ。紙幣の「出入り口」も、これはこれで味のある言い回しなのかもしれない。
19970531
■「収載」
辞書がある言葉を載せているのを二字漢語でなんと表現しますか。
いままでみたなかでは、「登載」というのが多いような気がします。「登録」もみたことがあるかな。
でも私の語感からすると「登録」というのはちょっとしっくりきません。
何だか自動車のナンバーを陸運局に申し出なければいけないような義務的なニュアンスを感じてしまうんです。
辞書、ことに古辞書にあっては、恣意的に(と言っておきましょう。韻事の書なのだから云々と
くくれぬ面もあるので)載せてるようで違和感があるということです。
「登」が共通するせいか、やはり「登載」もちょっと。また、「搭載」と音が同じだからでしょうか、
ものものしさを感じてしまうんです。「熱追尾ミサイル搭載」とかの使い方も脳裏をよぎります。
私の場合、「MMX Pentium 搭載」が限度ですね。あ、べつに非難してるわけではありません。
あくまで好みの問題だということです。
じゃ、お前はどうしてるかって? 実は、この用語に関しては、私がはじめて節用集
(室町なかごろから昭和初期まで作られた用字集)の論文を書いたときに、
ささやかないたずらをしてみました。それは、「登載・登録」ではなく「収載」という言葉を使ったことです。
今後、私の書く論文には統一して「収載」を使おうと思いました。「収載語」「非収載」「未収載」
などと複合語にも使う…… そう決めて今日にいたっています。
この用法は、私が初めてで私自身が広めたのだ! とでもなるカッコいいんでしょうが、
たしか先例はあったと思います。いや、使用量が少ないと思っているのは私だけで、
意外に「収載」は以前から使われていたのかもしれません。また、「収載」でもものものしいと
感じる人はいるかもね。ちょっと客観的にみれば、雑誌が論文を載せるのは「収載」と言えそうだけど、
単語一つに「収載」とは如何、という感覚を持つことは考えられそうですしね。
19970601
■gooはすごい!
いや〜、たまげた検索エンジンがあるものだ。Linksの方にも出したgooです。
なんでこんなにデータがあるの? それなのにどうして速いの? たとえばですね、
「節用集」なんていう、おおよそ日常生活では知らなくてもいいような単語を検索しても、
97件ヒットします。しかも、この結果がわずか2・3秒で出てきます(日曜午後)。
以前は、Yahooでなければ日本サーチエンジンに行ってたが遅かった(特に後者)。
学術関係はodinでまだいけるでしょうか。
さて、こんなに速く検索してくれるなら、少しくらい遊んでも迷惑はかからないかなと、
いろいろやってみました。まずは、私の名前。東南アジア関係のサイトに同姓同名の方が載っている。
つぎに被リンク先(元? んんん、視点の移動がぁ……)。あれ、見知らぬページにリンクされている。
とは言え、一人でも多くの方に参照していただけるなら幸いです。
目くじら(これも面白い言葉ですね)を立てたりはいたしません。どんどん張ってください。
で、何でもヒットするのかと思うとそうでもなかったりする。「ほら貝ホットリスト」や「東京小さな旅」
からもリンクされてるのですが、これらはヒットしないのですね。そのあたりが、gooの仕組みを
知る手掛かりになるかもしれません。そういえば、ちょっと古めの情報が多いような気もします。
で、遊びの最後に「倉橋ルイ子」で検索してみました。昔ファンだった歌手なのですが、
最近はとんと御無沙汰。CDもここ数年でていません。現役時代はそこそこ売れていて、
『きょうの出来事』のエンドテーマとかも歌ってました(「偶然会いましょう」)。
アルバムも何だかかんだ含めると20枚くらいはあるんじゃないでしょうか。
でも、他の検索エンジン・人名情報サイトではぜんぜんヒットしません。
が、gooだと15件でてきました。
倉橋ルイ子情報を求めているページも見つかりました(ほとんど同志か師弟関係ですね)。
また、(多分)現在、
彼女の歌をテーマ・ソングにしている番組のページ(北海道文化放送)も見つかり、
ルイ子さんの歌声も聞くことができて感激しました(あれっ、いま東京に住んでるの?)。
というわけで是非お試しを。
19970602
■infoseekもなかなか、か?/ジテンコ補遺
なんだか検索エンジンの話ばかりで恐縮です。ま、言葉とは切っても切れない(これも面白い言い方だ)
関係にあるのでご了解を。で、gooに匹敵するものはないかと試しているのですが、
infoseekが結構いけるのではないかと思います。「節用集」で35件出てきました。
結果表示も速い部類にはいるのでまずまずかなという気がします。でも、
私のページだと「図説・江戸時代の辞書」しかヒットしないのは寂しい。「倉橋ルイ子」は6件。goo
にない情報が1件ありました。というわけで、gooで出なかったらinfoseekも悪くないのですが、
情報量としてはやっぱりgooということになりそうです。
そして、infoseekで致命的かもしれないことも発見しました。それは平仮名の連続に弱いということです。
この集でもとりあげた「じてんこ」(自転車)を検索したところ、なんと16,838件もヒットしてしまいました。
いかになんでもこれは多すぎます。おそらく「じて」と「んこ」が併存するページとか、「辞典・事典」
と解釈して結果表示してるのではないでしょうか。これでは純粋に言葉の検索をするには困ります。
で、やはりgooでも試してみましたが、ただ1件だけ示してくれました。これはちゃんと自転車の方言形と
しての記述があるページ(勝本卓さん、だと思います)です。やっぱりgooに軍配があがりますかね。
で、勝本さんの情報によると和歌山県南の田辺市でもジテ(ン)コを使うとのこと。 ただし、女性だけが使用するかどうかまでは記載されてません。 ともあれ、大阪南部(北河内)・三重中部内陸(名張市方面)とけっこう近い位置になります。 まだ情報が入手できませんが、奈良県南部とか、和歌山県北部あたりでもジテンコを使うのかもしれませんね。 あるいはそれぞれにできた語形で、通用範囲が狭いということもありえますが。
岡島昭浩さんの
「目についたことば」
高本條治さんの
「耳より情報」
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