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岐阜大学                                              センタートップページ
応用生物科学部

ニホンジカ研究Deer research


<ニホンジカの採食が岐阜県の森林生態系に与える影響の現況調査>

ニホンジカによる森林生態系への影響と岐阜県の現状

近年の岐阜県ではニホンジカ(以下、シカ)の分布が拡大傾向にあり、捕獲数や交通事故も年々増加しています。また、シカによる農作物被害は年間4千万円にのぼります。シカ問題の特徴は、農林業被害等の人間の生活のみならず、森林生態系にも影響を及ぼすことです。他県の事例では、増えすぎたシカの過剰な採食圧によって森林の下層植生(草本やササ類、低木など)が食べつくされるとともに、希少な植物の減少・消失などの被害が発生しています。また、下層植生がなくなるとそこを住処とする昆虫類や鳥類などの小動物が減少し、また、林床の土壌が流出して小規模の土砂崩壊が起こることもあります。これらの変化は生物種間相互作用を通じて、さらに広く森林生物群集へと影響が及んでいきます。
県内においても西濃地方ではシカの過剰な採食圧によると考えられる森林の下層植生の退行が観察されていますが、シカによる森林被害に関するデータが収集されていません。岐阜県の面積の8割以上を森林が占めるため、シカによる森林生態系被害とそれに伴う森林機能の低下が今後さらに拡大・深刻化することが懸念されます。  

調査の目的

森林生態系被害に対する今後の対策やシカの個体数管理を検討するための基盤情報として、シカによる森林下層植生被害に関する現況調査を平成25年度より開始しました。本調査の実施目的は以下の通りになります。

1)シカによる森林生態系被害の現状と対策の必要性についての普及
岐阜県では、農作物被害に比べてシカによる森林生態系被害に対する関係者や県民の意識の認知が決して高いとはいえません。そこで、森林生態系被害の現状や問題点について広く知っていただくための根拠となる情報を収集して公開し、問題意識を持っていただく必要があります。

2)シカの捕獲目標設定および捕獲強化地域選定のための科学的基礎データ
 岐阜県ではシカの対策の一環として捕獲に力を入れています。平成24年からはこれまでの有害鳥獣捕獲や一般狩猟での捕獲に加え、個体数調整事業による捕獲が始まりました。しかし、科学的根拠に基づいた捕獲目標の設定や捕獲強化地域の選定が十分に行われていません。森林生態系被害やシカの個体数密度指標のデータを用いることによって、科学的な観点からシカの捕獲目標の設定や捕獲強化地域の選定が可能となります。

調査概要

<調査方法>
調査の方法として、兵庫県森林動物研究センターが開発した目視による森林下層植生退行度(Shrub-layer Decline Rank: SDR)調査を用います。調査方法の詳細については兵庫県森林動物研究センターが発行する「兵庫ワイルドライフモノグラフ4号・兵庫県におけるニホンジカによる森林生態系被害の把握と保全技術」をご参照ください。この資料は、以下のサイトよりPDF版が閲覧・ダウンロードできます。
 http://www.wmi-hyogo.jp/publication/monograph.html

<調査時期>
平成25年度より調査を開始します。調査期間は落葉性の樹木の葉や草本が茂る5月から9月頃となります。

<調査地域>
県内全域の落葉広葉樹林が対象です。平成25年度は西濃地域を中心に調査を実施し、平成26年度に全県を対象として調査を行います。

<その他の調査項目>
 下層植生の調査と共に、土壌侵食についても調査を行う予定です。また、選定地域において森林生態系および森林河川における生物・環境調査の実施を予定しています。




※本研究は、野生動物総合対策推進事業(寄附研究部門)および日本学術振興会・科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)・若手研究B(25740049)の一環として行われます。


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