岐阜県の野生鳥獣による農作物被害は3億4416万円(平成23年度)で、中でもイノシシによる被害が1番多く、その額は1億3994万円である。そのため、岐阜県各市町村では、毎年、有害鳥獣捕獲によってイノシシを何千頭も駆除している。一方、膨大な頭数のイノシシを捕殺しているのにも関わらず、被害対策および保護管理をしていく上で必要かつ根拠となる岐阜県産イノシシの生物学的知見はほとんどない。そこで本調査では、岐阜県のイノシシ頭部を各地より収集し、得られた試料より形態や遺伝子の分析を行うことで、イノシシの個体群動態や分散の傾向を把握し、今後の分布変遷や被害予測など保護管理に必要な情報を得ることを目的とする。
(1)収集試料:有害捕獲された イノシシ (成獣)の 頭部
(ウリボウが成獣と同時に捕獲された場合、可能な限り、ウリボウの頭部も含める)
(2)収集数: 各旧市町村 で オス 1 頭、メス 1 頭 の 計 2 頭
(旧市町村100(14市、55町、31村))
(3)収集期間:2013年7月1日〜10月31日
(4)収集者:有害捕獲従事者
収集者は記録用紙(別紙)に以下の項目を記入し、頭部に添付する。
○記録用紙記入者氏名/電話番号、○捕獲者氏名/電話番号、○捕獲区分、○捕獲年月日、
○イノシシ性別、○捕獲地点住所(緯度、経度)、○メッシュ番号、○捕獲方法、
○止め刺し方法、○詳細地図(緯度経度が分かる場合、不要)、
○捕獲現場写真(罠と捕獲個体を入れた周辺環境画像、Emailで添付またはCD-Rも可能)
(5)試料準備および発送:捕獲したイノシシの頭部を傷つけないように止め刺しした後、
ただちに頸部で切断し、「頭部」をビニール袋(2重)に入れて密封する。
頭部を入れた袋と記録用紙(別紙)を段ボールに入れ、原則、即日中にクール(冷凍)宅配便着払いで
下記の宛先に発送する。
〒501-1193 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学 応用生物科学部 附属野生動物管理学研究センター
TEL&FAX: 058-293-2959 担当:森部 jmoribe@gifu-u.ac.jp
・齢査定および出生月の推定
・形態異常の分析(歯数異常、歯周疾患など)
・マイクロサテライトDNAマーカーを用いたイノシシの遺伝的集団構造解析
(動物ゲノム多様性学研究室と共同研究)
・岐阜県のイノシシに寄生するダニ相と、ダニ媒介性疾病の病原体保有状況
(野生動物医学研究室と共同研究)
作業順 |
作業内容 |
作業者 |
1 |
捕獲・現場撮影 |
捕獲従事者また市町村職員 (現場で調整)
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2 |
頭部を傷つけないように屠殺し、頸部で切断 |
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3 |
記録用紙に必要事項記入 |
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4 |
段ボールで梱包(頭部(2重のビニール袋に入れ密封)・記録用紙) |
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5 |
クール(冷凍)宅配便発 着払い で発送 |
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6 |
受け取り |
岐阜大学 |
7 |
遺伝研究用・齢査定用試料の採取・分析 |
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8 |
標本化・保存 |
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9 |
成果公表 |
【論文】
・Tadano R, Nagai A, Moribe J. 2016. Local-scale genetic structure in the
Japanese wild boar (Sus scrofa leucomystax): insights from autosomal microsatellites. Conservation Genetics 17: 1125-1135
【学会発表】
・Shiori Ikushima, Ryo Tadano, Aya Nagai, Junji Moribe, Ryota Matsuyama,
Naotoshi Kuninaga, Tomoya Morimoto, Makoto Asano, Masatsugu Suzuki: Genetic
Characteristics of Japanese Wild Boars on Mt. Kinka, Gifu Prefecture, Japan.
Vth International Wildlife Management Congress 2015(2015年7月26日, Sapporo)
・Ryo Tadano, Aya Nagai, Junji Moribe: Regional-Scale Population Structure
of the Japanese Wild Boar (Sus scrofa leucomystax), as Revealed by Multilocus
Microsatellite Analysis: A Case Study from Gifu Prefecture, Central Japan.
Vth International Wildlife Management Congress 2015(2015年7月26日, Sapporo)
・只野亮, 長井文, 森部絢嗣, 横田隆博, 角田裕志:マイクロサテライト多型解析による岐阜県内におけるイノシシ地域個体群の遺伝的集団構造.日本畜産学会大会講演要旨
2014年3月27日
・只野 亮・長井 文・森部 絢嗣・横田 隆博・角田 裕志.岐阜県内で捕獲された野生イノシシのマイクロサテライトDNA多型.日本畜産学会 第116回大会 2013年3月30日(広島市)
・松山亮太,森部絢嗣,森元萌弥,貞國利夫,本井祐太,木村悟志,品川千種,淺野 玄,鈴木正嗣:岐阜県のニホンイノシシおよびツキノワグマに寄生していたマ
ダニと,その紅斑熱群リケッチアとアナプラズマの保有状況.第19回日本野生動物医学会大会 2013年8月29日
【その他】
森林のたより-岐阜県の森林・林業-2016年 2月号
「恵みの森林(もり)の住人たち」 岐阜県におけるイノシシの遺伝的特徴
※本研究は、野生動物総合対策推進事業(寄附研究部門)の一環として行われます。