社会の課題にとりくむ応用生命化学科

応用生命化学科では「化学」「バイオ」と両者がコラボした教育・研究を行います。高校生のみなさんには,応用生命化学科に入学して研究の楽しさをぜひ味わっていただきたいと思います。
 
応用生命化学科は,基礎研究・応用研究にかかわらず,さまざまな課題の解決を通じて,持続可能な社会の構築に貢献していきます。さまざまな大テーマのうち,3つをご紹介します。

 
環境課題を「化学×バイオ」で解決

 

未来の社会は脱炭素!

 
持続可能な社会という言葉がありますが,現実の社会は持続可能なしくみにはなっていません。問題になるのは,有限資源である石油に依存して発電や自動車のためのエネルギー利用とプラスチックや合成繊維を含む多様なマテリアル生産が行われていること,石油のエネルギー利用の際に多量のCO2を排出して地球規模の気温上昇を引き起こしていること,の2点です。

持続可能な社会構築のために現在世界中で脱炭素(脱・石油)の研究開発が進められています。構築できなければ世界のエネルギー消費量は大きく減少せざるを得なくなり,文明の衰退や戦争を誘引する因子の顕在化が想定されます。
石油に依存している産業原料の代替可能性は,たとえば植物にあります。植物は,光合成により太陽光エネルギーを糖や油脂という化学エネルギーの形で蓄積することができます。太陽光エネルギーをベースとして,植物を用いたエネルギー固定と産業や生活での消費をバランスさせることで,持続可能な社会への道が期待できます。
 
しかし,植物栽培に適した土地はほぼ食糧生産のために使われており,エネルギー・ マテリアル生産のための土地がありません。未利用地として残っているのは耕作に適さない土地です。
こうした耕作限界地で植物を育てるためには,環境ストレスに極端に強い作物を開発する必要があります。
 
上記の大きなビジョンのもと,応用生命化学科では光合成や植物の代謝,環境適応のしくみについて研究を行っています。応用開発を見据えつつ「発見」を目的とする基礎研究にも力を入れています。
 
研究のキーワード:
バイオマス バイオエネルギー バイオリファイナリー ゲノム多型 と比較ゲノム ゲノムワイド相関解析(GWAS) バイオインフォマティクス 植物プロモーターと遺伝子発現制御 植物表現型の精密解析 光合成 遺伝子組換え植物 レポーター遺伝子 モデル植物と産業植物
 


植物のプロモーター解析

 
健康に長生きできる社会へ

 

ウェルネス:よりよく生きる

 
ウェルネス(Wellness) という言葉,聞いたことがありますか。健康(Health)とは,「病気でないとか,弱っていないということではなく,肉体的にも,精神的にも,そして社会的にも,すべてが満たされた状態にあること」と定義されています(1947年 WHO憲章)。
 
ウェルネスは,健康な状態をベースとして,さらに生きがいなどを含めた広い視野で総合的に捉えた概念です(1961年 米国にて提唱)。イメージとしては「輝くように生き生きしている状態」であり,心身ともに豊かで充実したライフスタイルの実現をめざしています。

さらなるウェルネスの実現に向けて,どのような課題の解決が必要でしょうか。順に考えてみましょう。
 
社会的な背景

社会は絶えず進化しています。経済の発展,物流のスピードアップ,情報化社会の実現などにより,時の流れは格段に速くなりました。新技術の開発は医療の高度化ももらたしています。
 
ウェルネスの課題はどこに?
 
社会の変化は,生活の変化を引き起こします。たとえば,ふだんの運動量の減少,仕事と生活のバランスの課題,インスタントや冷凍食品などで済ますこともある食事形態,機能性食素材の普及による食べ物との関わり方の変化など,さまざまな変化が生じています。その結果,健康が増進することもある一方で,健康を脅かすリスクが生じることもあるでしょう。
 
こうしたことを背景に,ウェルネスの実現には,生活習慣病の抑制,こころの健康の向上,世界のボーダーレス化に伴う感染症の予防と対策などに取り組むことが必要です。視野を広げると,人口減少や超高齢社会の課題,医療従事者の減少,医療費・介護費の増大などの社会問題も,ウェルネスの実現のために解決する必要があります。
 
未来はどうなる?
 
社会が解決に向けた取り組みを進めても,また「これまで経験したことのない」「予想もしなかった」「新しい」課題が出てくるかもしれません。ウェルネス自体が持続可能かどうかも意識する必要があります。ですから,今ある課題を解決するだけでなく,絶えず変化する社会構造からどのような課題が生じるか,先回りして考えることも大切です。これは大学でともに学ぶ私たち(教員・学生)にできるとても大きなことです。
 
私たち応用生命化学科では,「化学×バイオ」の融合によって, #希望につなげたい創薬開発,#いつまでも健やかに健康長寿の実現,#気分があがるヘルスケア技術の開発 といったテーマのもと,基礎から応用まで幅広い研究をおこなっています。一緒に課題解決に挑戦してみませんか。
 
研究のキーワード:核酸医薬 天然物創薬 低分子創薬 中分子創薬 高分子創薬 抗体医薬 神経 免疫 ウイルス 感染症 公衆衛生 生活習慣病 糖鎖 mRNA タンパク質 ドラックデリバリーシステム(DDS) 腸内細菌 発酵 ヘルスケア コスメ・サニタリー 季節栄養学 ベジタリアン 学習 睡眠

 
世界の課題は私たちの課題

 

国際性って何だろう?

 
私たちの身の回りの社会課題は身の回りだけ見ていては解決できないかもしれません。日本や世界の課題を知り,大きな視点から自分自身を見直すことも大切です。そのためには「国際性」が重要になってきます。
 
国際性って,何ですか?
 
文化的背景が異なる人々と共に活動する力です。例えば,自国の料理をふるまい,食文化の違いをお互いに説明し理解することもその一つです。
 
応用生命化学科と国際性の関係は?
 
本学科では国内外の区別なく研究者(大学教員)が共同研究するのが普通なので,海外研究者や海外からの留学生と交流する機会が多いです。国際的交流は新しいアイデアや革新的技術の創出につながります。あなたが国際的な研究に携わるのも夢ではありません。
 
国際性を身につけると,どんな利点がありますか?
 
●海外の企業人や研究者と渡り合える実践的な英語力(コミュニケーション力)を身につけることができる
●日本から見るだけでは分からない文化や発想の違い,多様性を身をもって理解できる
●海外や日本の地域課題を探求・解決する力を磨ける(グローバルで戦える企業の即戦力)
 
いいことづくめに聞こえますが,その過程では住み慣れた世界の外側に身を置き,マイノリティ(社会的少数派)としての勉学・生活も経験するでしょう。経験者でなければ分からない苦労の先に,自分の先入観を打ち破り,自分や日本の良さに気づき,自分に対する信頼感を深め,一回りも二回りも大きく成長する。その意味は,野球やサッカーの日本人選手が海外で堂々とプレーする姿からも想像できると思います。
 
英語力は必要ですか?
 
英語はできたほうがいいです。しかし,真の国際性を得るには,英語に加え,異文化適応力(異なる文化的環境に適応する力)と国際的協働力(文化的違いを乗り越え共に物事を進める力)を身につけることが重要です。
 
大学ではどのように国際性を高めることができますか?
 
さまざまなプログラムが用意されています。下の図はほんの一例ですが,これらを楽しみに入学したという学生もいますよ。 

 

 
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