岐阜大学医学部附属病院|精神科

理念と教育体制

教授の挨拶 岐阜大学医学部附属病院|精神科教授|塩入俊樹

岐阜大学医学部附属病院|精神科教授|塩入俊樹  岐阜大学医学部は、明治8年に設立された岐阜県公立病院附属学校にそのルーツを持ち、国立大学となってからも約半世紀が過ぎようとしているたいへん伝統のある学部です。岡田強先生が初代教授として京都大学から赴任されて以来、難波益之教授、若林愼一郎教授、小出浩之教授の時代を通して、一貫して臨床を重視し、そこに基盤を置いた研究をめざしています。私は平成20年6月に5代教授を拝命致しましたが、今後も当科の良き伝統を生かしつつ、最新の神経科学(ニューロサイエンス)の様々な手法を取り入れて、独創性に富んだ、そして患者様のためになる研究を行ってゆく予定です。
 
  岐阜大学医学部附属病院は、平成16年6月に現在の岐阜市柳戸の地に新築・移転しました。この地は東側に岐阜大学メインキャンパスがあり、山河が近く素晴らしい自然に囲まれた、病を癒すには最適な所です。私たちの臨床の場はこのような恵まれた環境の中にあります。病棟9階から眺める四季折々の山々の彩がこころを病む方々に優しく微笑みかけます。私たちは、このような自然の恵みを活かして患者様と共に“現代病”とも言えるこころの病を治療しています。
 
  現在は、臓器移植等に代表される高度先進医療が可能となった一方、価値観や生命倫理の多様化を背景としてより開かれた医療が求められています。また、高度情報化による過ストレス社会の出現、少子高齢化や過疎化、環境問題等といった諸問題に対し、医療は今まで以上に適切かつ十分な対応をすべきです。大学に籍を置く医療人の職務は、先端的生命科学に関する教育・研究に重きを置きつつも、臨床に直結した疾病の診断・治療に役立つ探索型研究を推進し、地域社会と世界の医療に貢献することです。
 
  また臨床講座での研究は、世界に通用する研究者を作ることだけが目的ではなく、そうした研究を通して臨床能力を研き、結果的に患者様のためになるものでなければなりません。従って、私が最も大切にしたい事は「まず初めに、臨床ありき」という事です。日常臨床の中に研究の閃きを感じ取れる医療人を輩出できれば、教育者冥利に尽きます。
 
  当科はこれまで、精神病理学や臨床心理学、あるいは司法精神医学、さらには小児・児童・思春期における精神医学の領域において、特に秀でた研究成果を挙げてきました。私たちはこのような伝統を引き継ぎ、さらに発展させていきます。ご承知のように、脳の解明は人類に残された大きな課題の1つであり、「21世紀は脳の時代」と言われています。ニューロサイエンスの発展によって、精神医学の研究も新たな局面を迎えています。脳機能画像(Neuroimaging)技術や分子生物学、あるいは遺伝子解析など、最新の様々な手法により、こころが少しずつ解明されようとしています。我々もこれらの生物学的な方法を用いて、こころの病をお持ちの患者様のためになる研究に邁進してゆく所存です。わが国のこれからの医療を担う若手医師の皆さん、岐阜の地で精神科医としての第一歩を私たちと共に歩んでみませんか。