不 幸 | 幸 せ |
私はおそろしい孤島に漂着し、救い出される望みがない。 | しかしほかの連中は溺れたのに、溺れないで生きている。 |
私は全世界から、いわば選り出されて引き離され、みじめな状態にいる。 | だが私は船の乗組員全部のなかから一人だけ選び出されて、死を免れている。私を奇蹟的に助けてくれた神はこの状態から私を救うこともできる。 |
私は人間から引き離され、人間社会から追放されて孤独な人間になっている。 | だが不毛な土地でも食糧をあたえられ、飢え死にしないですんでいる。 |
私には着るものがない。 | しかし私が打ち上げられた場所はアフリカの海岸で見たような危害を加えそうな野獣は見えない。もしアフリカ海岸で難破していたらどうだったか。 |
私には話し相手や慰める人がいない。 | しかし不思議に神が船を浜辺近くまで押し流してくれたので、必要なものをたくさん運びだすことができた。これだけあれば不足ないし、それに生涯間に合うだろう。 |