18世紀の節用集 節用集の大転換期です。二つの大きな変化が節用集の運命を決定します。ポイントは「付録の増加」「検索法の開発」。特に後者は、行くところまで行った感じがします。また、このほかにもいろいろな工夫がありました。その意味で18世紀は爛熟期でした。 |
◆変化の一つは、言葉とは関係のない付録が充実したことです。歴史年表・日本地図・大名名鑑・茶道・華道・将棋・占い・作法などなど多様です。これらが、巻頭・本文頭書・巻末に配され、辞書部分以上に目立つようになりました。 |
◆もう一つの変化は、新しい検索法の開発です。『宝暦新撰早引節用集』(宝暦2・1752年刊)が口火を切りました。大胆にも伝統的な意義分類をやめ、代わりに仮名数(声)で分類しました。「白鷺」ならシ部4声を引くことになります。 | |
○仮名数引きは、言葉の形の特徴で引く点で、現代の五十音引きと同じ範疇にはいる近代的なものでした。 |
◆早引節用集に触発されて、いろいろなタイプの検索法が考案されました。 |
○宝暦12年版は、『早引節用集』の出版社が版権侵害だと決めつけて絶版にしたため、現存しないようです。天保の改革で本屋仲間が解散させられ、版権管理機構が失われたため、嘉永ごろには再刊できたのでしょう。 |
←『大成正字通』の目次の一部。 |
○こうした周到な目次を活かすには、丁数(紙の枚数)をはっきり見せることも必要。一つ上の図版で、右端に「三百六十九」ときちんと見せています。普通は、袋とじの折り目が丁数のまんなかに来るのですが、わざとずらしたんです。ここまで考えぬかれていたんですね。 |
←『増補広益好文節用集』(天保3・1832年刊)。初版『広益好文節用集』は明和8(1772)年刊なので、ここに掲げました。紙面を上下に分け、それぞれ仮名数の偶数・奇数で分類してあるんです。 |