さまざまな検索法
大きく四つに分類すると次のようになります。
A 仮名数引きが入るもの
・イロハ → 仮名数
・イロハ → 仮名数 → 意義分類
・イロハ → 意義分類 → 仮名数
・イロハ → 仮名数の偶数奇数 → 仮名数
・イロハ → 仮名数の偶数奇数 → 意義分類
B 仮名の順に引くもの
・イロハ → イロハ
・イロハ → イロハ(語末の仮名で)
・イロハ → 五十音(語末の仮名で)
・イロハ → イロハ → 意義分類
C 特殊な仮名の有無で引くもの
・イロハ → 特殊な仮名の有無 → 意義分類
(特殊な仮名=濁音仮名・「ん」・「う・ふ」)
・イロハ → 意義分類 → 濁音仮名の有無
Dその他
・意義分類 → イロハ → 片仮名総画数
これらのほとんどは、18世紀後半に集中します。検索法開発の過熱ぶりがよくわかりますね。
この背景には、当時の辞書の製作が、現代と同様に商業的になされていたということがあります。
つまり、他の本にない便利な検索法を編み出せば版権の保護が得られ、独占販売もできました。
こうなれば、作った分だけ利益になります。
ただ、ここまでやってしまうとタネが尽きてしまいます。
また、18世紀末の寛政の改革で無闇に新しい本を出してはいけないとお触れが出されました。
19世紀以降ではほとんど検索法の開発はおこなわれませんでした。
そこで、最終的に残ったのはどんな検索法だったのでしょうか。現代の国語辞典は、五十音の繰り返しで並んでいます。それに近いものをさがすと、イロハ→イロハという検索法になりますが‥‥‥
実は、イロハ→仮名数引きの早引節用集が残っていくのです。これは、早引節用集の出版社が、イロハ→イロハという検索法を、早引節用集の版権侵害だと指定することができたからでした。現代の目からみて、どんな点が版権侵害なのか、見当もつきません。たとえ、江戸時代だからといって、それがまかり通ったというのも考えにくいことです。いろいろ調べていくと、そうなった背景は一応推測できますが、早引節用集の出版社が強引に事を進めたことに変わりはないようです。