岐阜大学産婦人科の診療内容
「岐阜県の最終拠点病院として、最先端の医療を提供する」
- 周産期専門医2名、婦人科腫瘍専門医6名、生殖医療専門医1名、女性ヘルスケア専門医1名、臨床遺伝専門医3名、内視鏡技術認定医9名、ロボット技術認定医4名の充実した診療体制
- 良性疾患から悪性疾患まですべての疾患の治療に対応
- 県内最多の婦人科腫瘍治療数(約170例)
- 低侵襲手術の手術件数は県内トップクラス(約360例)
岐阜大学産婦人科の診療内容を紹介します。産婦人科の主たる4分野である周産期、腫瘍、生殖、女性のヘルスケアがバランスよく発展しています。また、ロボット、腹腔鏡、子宮鏡の婦人科低侵襲手術は症例数も多く、高レベルの手術を実施しています。
周産期医療について
岐阜大学病院産婦人科は地域周産期母子医療センターであり、岐阜県全域からハイリスク症例を受け入れています。
当院で受け入れている症例には以下のような特色があります。
- 内科疾患の合併(高血圧症、糖尿病、脳血管疾患、心疾患、血液疾患、遺伝性疾患等)
- 精神疾患の合併
- 出血ハイリスク症例(前置胎盤、巨大筋腫合併等)
- 母体救命が必要な症例(常位胎盤早期剥離、産後出血等)
- 胎児異常症例(胎児発育不全、腹部疾患症例等)
その他、当施設の特徴としては以下のようなものがあります。
周産期メンタルヘルスケア
妊娠中や産後は誰もがメンタルヘルスの不調をきたしやすい時期です。特に精神疾患を合併しているとそのリスクは増加すると言われています。
当院では病棟のスタッフとチームを作り、周産期のメンタルヘルス不調に対するスクリーニングや予防、ケア、勉強会を行っています。
出生前診断
出生前診断として、NIPT(非侵襲的出生前診断)、羊水検査、精密超音波検査を行っています。 NIPTは母体血中のDNAの断片を測定することにより、胎児の染色体異常症をスクリーニングする新しい出生前遺伝学的検査です。妊娠10~15週に母体の採血を行い、トリソミー21(ダウン症候群)、トリソミー18、トリソミー13の有無を判定します。 この3つの染色体疾患の陽性的中率(検査陽性と診断した中で、実際罹患していた割合)は91.0%(トリソミー21は97.2%、トリソミー18は89.1%、トリソミー13は54.9%)、偽陰性(検査で陰性と診断したものの、実際罹患していた割合)は0.01%という高い精度で診断することができます。当院は2016年よりNIPTを認定施設として開始し、年間100件程度の検査を行っています。 また最新の超音波機器を保有しており胎児のスクリーニングや精密検査、4Dエコーなどを行っています。
遺伝カウンセリング
当院には臨床遺伝専門医と遺伝カウンセラーが常駐しており、出生前診断やその他の遺伝性疾患に対する遺伝カウンセリングを行っています。
プレコンセプションケア
プレコンセプションケアとは「妊娠前の健康管理」のことを指し、妊娠前から自身の健康状態やリスク因子を把握しケアを行うことで、妊娠合併症を減らしその後の健全な環境での子育てへつなげることを目的としています。 本来プレコンセプションケアは思春期以降、妊娠可能な年齢の全女性及びカップルを対象として行うべきものですが、当科では以下のような方を対象にプレコンセプションケア外来を行っています。
対象者
- 慢性疾患を有する者
- 精神疾患を有する者
- がんサバイバー
- 不妊,不育症患者
- 妊娠合併症の既往を有する者
- 肥満
- 喫煙者
研修会開催等
- 母体救命講習会(J-MELS)の開催
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母体急変は予告なく突然起こります。突然の母体急変に迅速かつ適切に対応するために、母体救命講習会を定期的に開催しています。当院が中心となって講習会を開催し、岐阜県内の産科施設のスタッフに参加してもらっています。岐阜県の母体救命の「最後の砦」として、臨床面でも教育面でも中心となり活動しています。
- 新生児蘇生講習会(NCPR)の開催
- 出生した新生児の15%は自発呼吸を開始するまでに何らかの処置が必要になると言われています。この出生直後の処置が適切に行われないと、新生児に致命的な後遺症を残す可能性があります。新生児蘇生をいつでも適切に行えるために、年に1,2回、院内で新生児蘇生講習会を開催しています。
- 周産期メンタルヘルス講習会の開催
- 周産期のメンタルヘルスケアについて、関係者の知識のアップデートや技術の向上、一般市民への啓発を目的に、医療関係者向けの講習会や市民公開講座を定期的に開催しています。
婦人科腫瘍(悪性疾患)について
岐阜大学医学部附属病院は都道府県がん診療連携拠点病院に指定されており、当科では子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、外陰がん、腟がんなどの婦人科悪性腫瘍に対して、手術療法、薬物療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行っています。
当科では2025年度に県内最多の170例の浸潤がん手術を行っており、婦人科がんの手術件数は増加しています。2026年度からは婦人科腫瘍専門医6名(うち指導医2名)を中心とした診療体制を整えています。また、腹腔鏡技術認定医9名、ロボット技術認定医4名が在籍し、がんの根治性と患者さんの身体への負担軽減の両立を目指した低侵襲手術を積極的に行っています。一方、進行がんなど高難度手術が必要な場合には、消化器外科、泌尿器科をはじめとする関連診療科と連携して治療を行っています。また、放射線科、放射線治療科、病理診断科との合同カンファレンスを定期的に開催し、画像診断、病理診断、臨床情報を総合して、一人ひとりに適した治療方針を検討しています。さらに、がんゲノム医療や治験・臨床試験にも積極的に取り組み、標準治療から新しい治療まで幅広い選択肢を提供できる婦人科がん診療を目指しています。
子宮頸がん
本邦における子宮頸がん検診の低受診率やHPVワクチン接種の遅れなどから、若年発症や初診時に進行がんである傾向があります。子宮頸がんでは、腫瘍の大きさ、進行期、年齢、合併症、妊娠・出産の希望などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療法を提案しています。外科的治療では、標準術式である広汎子宮全摘術を行っています。また、排尿機能など術後の生活の質にも配慮し、可能な症例では神経温存手術を行っています。放射線治療が適している場合には、放射線治療科と連携して放射線同時化学療法(CCRT)を行います。手術と放射線治療のそれぞれの特徴を踏まえ、患者さんと相談しながら治療方針を決定します。また、適応を満たす早期子宮頸がんに対しては、低侵襲手術も行っています。
若い女性の子宮頸がんに対する妊孕性温存治療
子宮頸がんは若い女性にも発症するため、将来の妊娠・出産を希望される患者さんでは、がんの根治性を十分に考慮したうえで、可能な場合には子宮を温存する治療を検討します。ごく初期の子宮頸がんでは円錐切除術により子宮を温存できる場合があります。子宮を摘出してしまうと、赤ちゃんを産めなくなってしまいます。このような若い女性の子宮頸がんに対して、子宮頸部の病変部のみを摘出し、残った子宮体部と腟をつなぎ合わせる手術「広汎子宮頸部摘出術」を行うことにより、2cmまでのがん(ⅠB1期までのがん)の場合は、将来赤ちゃんが産める希望を残すことができます。妊娠、出産前の子宮頸部浸潤癌に対し、詳細な進行期の診断と十分なインフォームドコンセントが得られたうえで、根治性と妊孕性を考慮した広汎子宮頸部切除術も行っています。
子宮体がん
閉経後の不正出血が初発症状として多い子宮体がんは、近年、未婚、未産の女性の増加とともに増加しており、婦人科がんでは最も多いがんとなっています。当科では、早期がんから進行がん、特殊組織型まで幅広く診療しています。早期子宮体がんに対しては、ロボット支援手術や腹腔鏡手術を積極的に行い、低侵襲手術を標準的な選択肢として提供しています。さらに当科では、より進行した子宮体がんなどで必要となる傍大動脈リンパ節郭清についても低侵襲手術を導入しています。不要なリンパ節摘出を避けるためのセンチネルリンパ節生検も2026年より導入したところです。従来は大きな開腹手術が必要であった術式や広範囲のリンパ節郭清が必要だった術式について、適応を慎重に判断しながら低侵襲化を進め、がんの根治性を確保するとともに、術後の疼痛軽減や早期回復を目指しています。進行がんや特殊組織型などでは、病状に応じて開腹手術、薬物療法、放射線療法なども組み合わせ、一人ひとりに適した治療を行っています。
若い女性の子宮体がんに対する子宮を取らない治療法(妊孕性温存療法)
若い女性に子宮体がんが発生した場合、その治療方法を決めるのに大変頭を悩ませることがあります。子宮体がんの標準的な治療法は手術で子宮を摘出する方法ですが、まだお子さんがいない女性の場合、この治療法だと赤ちゃんを産めなくなってしまいます。このような若い女性の子宮体がんに対して、ホルモン療法により治療をすることが可能で、子宮をとらずに将来赤ちゃんが産める希望を残すことができます。黄体ホルモン療法は、がんが子宮の内側にだけにとどまって子宮の筋肉の中に入り込んでいない場合、高分化型のがん(悪性度の低いがん)の場合に限って行うことが可能です。黄体ホルモンによる治療法は、子宮を残すことができる反面、薬が効かなかった場合、病気が進んでしまう可能性があることや、一度がんが消えてもまた出てきてしまう(再発)リスクがあることを十分に理解して治療を受けていただくことが必要です。
卵巣がん
卵巣がん(上皮性卵巣がん)は初発症状が乏しいことから進行した状態でみつかることの多い疾患です。当科においても進行期に応じて様々な治療方法を選択・提案しています。 初期の卵巣がんに対しては根治手術(ステージング手術)として、標準術式である両側の卵巣卵管(附属器)、子宮、大網の摘出およびリンパ節郭清を行っています。進行がんに対しては、術前診断として画像検査にくわえ審査腹腔鏡をおこない腹腔内を十分に観察することで腫瘍切除の範囲や術前化学療法の必要性につき評価をしています。 進行がんは手術をする際に可能な限り腫瘍を摘出するため、直腸や結腸などの消化器や肝臓・横隔膜、尿管や膀胱など腹腔内臓器の一部を切除する高侵襲手術が必要となる場合があり、岐阜大学病院においては消化器外科や泌尿器科と連携のうえ、高度な腫瘍減量手術にも対応しています。 卵巣がんは進行・再発が多い疾患ですが抗がん剤(化学療法)の感受性が高いことも知られています。術前化学療法から術後補助化学療法、再発に対する化学療法は複数存在し、それぞれの進行期や組織型、遺伝的プロファイルにそった薬物選択をしています。
若い女性の卵巣がんに対する子宮を取らない治療法(妊孕性温存療法)
卵巣がんと診断された場合には、通常両側の卵巣・卵管と子宮の摘出が必要になります。若い女性に卵巣がんが発生した場合には、将来赤ちゃんをどうしても産みたいという強い希望がある場合には、卵巣がんがごく初期の場合には、腫瘍のみを切除して、一方の卵巣と子宮を温存する妊孕性温存手術が行われることがあります。妊孕性温存手術が可能な条件は、一般的には以下の通りとされています。
- 進行期がIA期であること(片方の卵巣にがんがとどまる)
- 高分化型腺がんであること
がん薬物療法
婦人科がんの薬物療法は近年大きく進歩しています。従来の抗がん剤に加えて、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体などが導入され、がんの種類や遺伝子・バイオマーカーの特徴に応じて治療を選択する時代になっています。当科では、国内外の診療ガイドラインや最新のエビデンスに基づき、術前・術後治療から進行・再発がんに対する治療まで幅広く行っています。また、標準治療だけでなく、治験や臨床試験を通じて期待されている開発薬の選択肢を患者さんに提供することにも力を入れています。
がんゲノム医療 ― がんの特徴に合わせた個別化治療
がんは遺伝子の変化によって起こる病気です。がん遺伝子パネル検査では、がん細胞に起きている遺伝子の変化に関して、一度に多数の遺伝子を調べる(解析する)ことで、がんの特徴に基づいた治療法を検討します。がん遺伝子パネル検査を受けることで、抗がん薬の選択に関連する遺伝子の変化が明らかになり、今後の治療選択に役立つ情報が得られる可能性があります。一方でこの検査を受けても、患者さんの治療選択に有用な情報が何も得られない場合や、得られたとしても治療に適した薬剤がない場合もあります。また、解析に用いた検体の品質や量によっては、正確な結果が得られないこともあります。また遺伝性腫瘍の原因となる遺伝子の異常(生まれつき持っているがんに罹りやすい体質)があることがわかったり、遺伝性腫瘍の可能性が判明する場合があります。検査対象となる患者さんは以下の通りです。
- 標準治療がない固形がん患者さん、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了が見込まれる患者さんを含む)
- 全身状態及び臓器機能等から、がん遺伝子パネル検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した患者さん
岐阜大学医学部附属病院は、厚生労働省指定の「がんゲノム医療連携病院」です。さらに自立型エキスパートパネルを有しており、がん遺伝子パネル検査の実施から専門家による結果の検討、推奨される治療の提示まで、院内で迅速に進めることができます。なお、がん遺伝子パネル検査を行っても治療につながる遺伝子異常が見つからない場合や、遺伝子異常が見つかっても使用できる薬剤がない場合があります。ご自身が対象となるかどうかについては、現在治療を担当されている主治医とご相談ください。
治験・臨床試験 ― 新しい治療を患者さんへ
岐阜大学産婦人科では、現在の標準治療を確実に提供するだけでなく、将来の標準治療となり得る新しい治療を患者さんに届けるため、治験・臨床試験に積極的に参加しています。
当院はJGOG(婦人科悪性腫瘍研究機構)の参加施設であり、全国規模で行われる婦人科がんの臨床試験・臨床研究に参画しています。さらに、婦人科領域では全国でも限られた施設が参加しているMONSTAR研究グループにも参画しています。MONSTAR研究では、がん組織だけでなく、血液を用いたリキッドバイオプシーなどの新しい技術を活用し、がんのDNA・RNA・タンパク質などを詳細に解析します。現在は、血液中に存在する微量ながん由来DNAであるctDNA(血中循環腫瘍DNA)の情報も活用しながら、一人ひとりのがんの特徴に応じた治療選択や、新しい治療法の確立を目指す研究にも取り組んでいます。当科では今後も複数の治験への参加を予定しており、標準治療に加えて、岐阜県内では当院でしか提供できない新たな治療機会を患者さんに届けられる体制をさらに充実させていきます。
遺伝性腫瘍への取り組み
一部の婦人科がんには、生まれつき持っている遺伝子の特徴が発症に関係する「遺伝性腫瘍」があります。代表的なものとして、BRCA1/2遺伝子が関係する遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)や、子宮体がんなどの発症リスクが高くなるリンチ症候群があります。当院では臨床遺伝専門医3名を含む専門スタッフが連携し、遺伝学的検査から遺伝カウンセリング、治療、発症予防・早期発見まで一貫した診療体制を整えています。HBOCと診断された患者さんなど、適応となる方には卵巣・卵管がんの発症リスクを低下させるリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を行っており、低侵襲手術にも対応しています。
臨床研究 ― 岐阜から新しいエビデンスを
当科では、全国規模の研究に参加するだけでなく、岐阜大学が中心となって新しいエビデンスを発信する臨床研究にも力を入れています。現在多くの多施設共同研究などを進めています。また、がん治療によって早期に閉経を迎えた女性の生活の質にも着目し、こうした「オンコメノポーズ」の患者さんに対するホルモン補充療法の有用性を検討する前向き研究にも取り組んでいます。私たちは、がんを治療することだけでなく、治療後もその人らしく生活していただくことを大切にし、婦人科がんサバイバーの長期的な健康と生活の質を支える診療・研究を進めています。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC: Hereditary Breast and Ovarian Cancer)
乳がんや卵巣がんになった方の一部に、BRCA1やBRCA2という遺伝子に、がんの体質と関わる変化(変異と呼びます)があることがわかっており、HBOCと呼ばれています。卵巣癌の20%、乳癌の5-10%が、遺伝性腫瘍であるといわれています。HBOCは乳がんや卵巣がん、膵がんになりやすい体質のことでBRCA1/2遺伝子の「変異」は、次の世代に50%の確率で伝わります。BRCA1/2遺伝子検査によって、乳がんや卵巣がんになりやすいことがわかった場合、がんの予防や再発について知り、定期的に検診を受けることが早期のがん発見と治療につながります。卵巣がんや乳がんの家族歴がある方の場合、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)である可能性があります。これらの疾患は遺伝子診断により診断することも可能となっています。近年、家族性腫瘍は発がんの分子生物学的メカニズムの解明とリスク低減手術・早期発見のためのサーベイランスといった予防対策の両面から注目を集めており、当科としてもこれらの方々のご相談に応じることができます。当科ではHBOCの患者様に対する腹腔鏡などを用いた低侵襲なリスク低減手術を実施しております。
2026年からHBOCの保険診療がさらに広がりました
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ご家族のBRCA検査の対象が広がりました
HBOCと診断された方の父母・子ども・兄弟姉妹についても、がんを発症していなくてもBRCA1/2遺伝学的検査を保険診療で受けられるようになりました。 -
がんを発症していないHBOCの方も、リスク低減手術を検討できます
HBOCと診断された方で、まだ乳がん・卵巣がんを発症していない場合でも、将来のがん発症リスクを低下させるための手術を保険診療で検討できるようになりました。
BRCA1/2遺伝学的検査とは
血液を用いて、BRCA1・BRCA2遺伝子に病的バリアントがあるかどうかを調べる検査です。検査を受けるかどうかは、ご本人が検査の意味やメリット・デメリットについて説明を受けたうえで決めます。必要に応じて、検査の前後に遺伝カウンセリングを行います。
BRCA検査で病的バリアントが見つかったら
BRCA1/2に病的バリアントがあっても、必ずがんになるわけではありません。また、必ず手術を受けなければならないわけでもありません。主な選択肢は以下になります。
- 定期的な検診
- リスク低減乳房切除術(RRM):
将来の乳がん発症リスクを低下させることを目的として、乳房を切除する手術 - リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO):
将来の卵巣がん・卵管がんなどの発症リスクを低下させることを目的として、卵管・卵巣を切除する手術
- 手術を受けるかどうかは、ご本人の年齢、妊娠・出産の希望、既往歴などを考慮しながら、最適な方法を一緒に検討します。
ご家族がBRCA陽性と診断された方へ
BRCA1/2の病的バリアントは、親から子へ受け継がれる可能性があります。ご家族がBRCA1/2陽性と診断された場合には、ご自身もBRCA1/2遺伝学的検査について相談することができます。検査を受けるかどうか迷っているという段階でも、まずはご相談ください。
当科でのHBOC診療
岐阜大学産婦人科では、臨床遺伝専門医が3名在籍しており、毎週水曜日午後にがん遺伝子検査相談外来を設けています。乳腺外科、ゲノム疾患・遺伝子診療センターなどと連携してHBOC診療を行なっています。遺伝学的検査についてのご相談から、検査結果を踏まえた今後の検診・治療・リスク低減手術、妊娠・出産に関することまで、一人ひとりの状況に合わせてご相談いただけます。
「自分や家族はHBOCかもしれない」「BRCA検査を受けるべきか知りたい」「予防のための手術について知りたい」という方は、まずはご相談ください。
生殖医療について
周産期・生殖医療センターを中心とする生殖内分泌部門では、排卵障害、月経異常、不妊症に対して、西洋医学的方法ばかりでなく、漢方治療を含めた東洋医学的アプローチも積極的に取り入れた診療に対応しています。
大学病院では、診療の研鑽を通して、知識や技術によるサブスペシャリティの取得に留まらず、研究活動によって国の医療システムにも関わる醍醐味も味わうことができます。我々とともに、生殖医療および婦人科内分泌学に取り組みましょう!
子宮内膜症への対応
不妊治療への対応
不妊治療としては、適切な治療方針に基づいて、排卵誘発から、体外受精、顕微受精などAssisted Reproductive Technology(ART)と呼ばれる高度な生殖補助医療まで行っています。
小児・若年成人世代のがん患者様への対応
治療によって妊孕性(妊娠できる能力)の喪失をおこす可能性がある小児・若年成人(Children, Adolescent and Young Adult: CAYA)世代のがん患者さんに対して、診療科横断的な情報提供および意思決定支援の提供から、このリスクを回避するための精子や卵子、胚、卵巣組織の凍結保存にまで対応しております。これは全国初の地域がん・生殖医療ネットワークで「岐阜モデル」として広く知られています。
女性ヘルスケアについて
岐阜大学産婦人科では、「女性の一生をトータルでケアする」という女性医学の基本理念のもと、女性ヘルスケアの患者さんも診療しています。
女性の心身はライフステージによって大きく変化します。思春期や更年期などホルモンの不安定な時期はもちろん、妊娠や出産、不妊治療による体調の変化など、心身の不調は女性なら誰しも直面する問題です。人生100年時代をより自分らしく、健やかに生きるための医療を提供しています。
思春期~若年期
- 月経困難症
- 月経に関連した痛みが軽減できるだけで、勉強や仕事のパフォーマンスも向上します。女性の社会進出が進んだ今、月経痛は現代女性だけではなく、社会全体の課題です。そのため、薬の開発や研究が進んでおり、現在では低容量ピルなど提案できる治療方法も多くなりました。治療効果も高まっているので、月経に関連した痛みを我慢したり、我慢させたりする時代は終わりに近づいています。ぜひ我慢しないで相談してみてください。
- 月経前症候群(PMS)または月経前気分不快障害(PMDD)
- 月経前には卵巣から分泌される2つの女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)がどちらも高い状態になっています。それが急激に減少して出血(月経)が始まります。身体がこのホルモンの変動に対応できず、頭痛やめまい、お腹や乳房の張り、下痢や便秘などの身体症状が出現するのが月経前症候群です。気分の落ち込みやイライラなど、精神の症状が強い場合には月経前気分不快障害と診断される場合もあります。どちらの疾患も、ホルモンの変動を調節することで症状を軽減することができます。また、漢方療法を併用してより自分に合った治療を選択することができます。
- 無月経(原発性・続発性)および月経不順
- 満15歳を超えても初経が来ない場合は初経遅延と考えます。まずはお近くの婦人科を受診しましょう。また、一度順調に来ていた月経の周期が不安定になった場合や、3か月以上月経が止まっている場合、逆に2週間以上の出血が続く場合は、どの年代でも早期の受診をお勧めします。一般的な診察で診断がつかない場合や治療に反応しない場合には精密検査が必要です。
- 性器の異常
- 先天的な病気が原因で、初経の発来が遅れたり、自分の性に違和感を持っていたりする場合があります。適切な診断と治療で、将来予測される健康リスクを減らすことにつながります。手術を必要とする場合もあります。
プレ更年期~更年期
- 基礎疾患・合併症のある場合の治療
- 全身性エリテマトーデス、甲状腺疾患、関節リウマチなど、比較的女性に多い疾患や潰瘍性大腸炎など若年でも発症する疾患があります。女性の場合、基礎疾患の治療中に月経に関連した症状や不調に悩まされることも少なくありません。しかし、副作用の観点から一般的な低容量ピルなどの治療が難しい場合があります。当外来では、体調や服用中の薬に合わせたホルモン療法や漢方療法を検討し、治療をおこなっています。
骨盤臓器脱
骨盤臓器脱とは?
骨盤臓器脱とは、加齢や出産などにより骨盤の中で子宮や膀胱、直腸を支えている骨盤底の筋肉や靭帯(骨盤底支持組織)が緩み、これらの臓器が腟の中に下がってきたり、体外に脱出してしまう病気です。下がる臓器によって、子宮が下がる「子宮脱」、膀胱が下がる「膀胱瘤」、直腸が下がる「直腸瘤」、子宮全摘後に腟の断端が下がる「腟断端脱」などに分類され、複数の臓器が同時に下がっていることも少なくありません。
経腟分娩の回数が多い方、加齢に伴い骨盤底の組織が弱くなった方、慢性的な便秘や咳などで日常的にお腹に力がかかりやすい方に多くみられます。決して珍しい病気ではなく、出産経験のある女性の多くが加齢とともに何らかの骨盤臓器脱を経験するとも言われていますが、恥ずかしさから受診をためらい、症状を我慢しておられる方も少なくありません。生活の質(QOL)に直結する疾患として、近年女性医学の分野で特に注目されています。
症状は?
初期には自覚症状がないことも多く、健診などで指摘されて気づく方もいます。進行すると以下のような症状が現れます。
- 股の間に何かが挟まっている感じ、下垂感、違和感
- 入浴時や排便時に丸いものが触れる、脱出した組織が下着に擦れる不快感
- 排尿障害(尿の出にくさ、頻尿、残尿感、腹圧性尿失禁など)
- 排便障害(便が出しにくい、排便時に指で腟を押さえないと出ない、など)
- 性交時の違和感や痛み
進行すると脱出した粘膜が下着とこすれて出血したり、常時脱出したままとなって外出や日常生活に支障をきたすこともあります。
診断は?
問診と診察により、どの臓器がどの程度下がっているかを評価します。国際的な評価基準であるPOP-Q(Pelvic Organ Prolapse Quantification)システムを用いて脱の程度をステージ分類し、経過観察や治療方針の決定、治療効果の判定に役立てています。排尿・排便機能に関する症状の評価には、問診票(質問紙)を用いて、患者様ご自身の自覚症状やQOLへの影響も丁寧に把握するよう努めています。
治療は?
症状が軽い場合には、骨盤底筋体操(骨盤底筋トレーニング)や、腟内にリング状の器具を挿入して臓器を支えるペッサリー療法といった保存的治療から開始します。ペッサリーは手術をせずに症状を軽減できる方法ですが、定期的な交換や管理が必要であり、根本的な治療にはなりません。
症状が強い場合や、保存的治療で改善が乏しい場合、根治を希望される場合には手術療法を検討します。手術には、腟から行うアプローチ(腟式子宮全摘術、腟壁形成術、腟閉鎖術、会陰形成術など)と、お腹から行うアプローチ(腹腔鏡下手術)があり、脱の種類や程度、年齢、性交渉の有無、ご希望などを総合的に考慮して術式を選択しています。
当科では、低侵襲手術の一つとして腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC:Laparoscopic
Sacrocolpopexy)を開始いたしました。LSCは、メッシュ(人工素材のシート)を用いて緩んだ腟または子宮を、仙骨という骨の前面に固定することで、下がった臓器を引き上げる手術です。従来の腟式手術と比較して、解剖学的な修復性が高く再発率が低いとされる一方、開腹手術に比べて創が小さく術後の疼痛も少ないため、根治性と低侵襲性を両立した術式として国内外のガイドラインでも標準的な治療選択肢の一つに位置付けられています。当院では、腹腔鏡技術認定医9名が在籍し、安全な骨盤臓器脱に対する低侵襲手術を実施しております。近年、岐阜大学病院における骨盤臓器脱手術の実施件数は年々増加しております。
手術に際しては、脱の状態を十分に評価したうえで、子宮を温存するか摘出するかも含めて患者様ごとに適切な方法をご提案しています。また、排尿機能や排便機能への影響についても術前・術後を通じて評価を行い、機能面でのQOL改善を重視した診療を心がけています。
術後の生活について
腹腔鏡下手術のため、術後の回復は比較的早く、数日での退院が可能です。退院後も創が小さいため、日常生活への復帰は比較的早期に見込めます。ただし、メッシュを用いた手術のため、術後一定期間は重い物を持つ動作や激しい運動を控えていただくなど、生活上の注意点についても丁寧にご説明しています。
診療体制
骨盤臓器脱をはじめとする女性の骨盤底疾患は、産婦人科だけでなく泌尿器科・肛門科領域とも関連する疾患です。当科では、患者様一人ひとりの状態に応じた治療をご提案できる体制づくりに取り組んでいます。恥ずかしさから受診をためらっている方も、どうぞお気軽にご相談ください。
婦人科良性疾患について
子宮筋腫
症状は?
筋腫が小さいうちは、自覚症状が見られないことが多いのですが、筋腫の発生する場所や大きさにより、月経多過や月経痛、不正出血が起こり、出血が多く貧血となれば、動悸、息切れなどが現れます。不妊症の原因にもなる場合もあります。粘膜下筋腫は特に過多月経と関連が強いとされています。
治療は?
筋腫による症状が軽いものは、対症療法といって症状を軽くする治療が行われます。月経痛に対する鎮痛剤の投与や貧血に対する鉄剤の内服が行われます。 筋腫が大きく、月経過多や貧血がひどい場合には、薬物療法による保存的治療科、手術療法を行います。薬物療法では、偽閉経療法と言われ、月経を止める薬物療法GnRHアナログ製剤があります。GnRHアナログ製剤にはアゴニスト(受容体作動薬)とアンタゴニスト(受容体拮抗薬)が存在します。GnRHアゴニスト製剤は一月に一回の注射剤です。GnRHアンタゴニスト製剤は連日内服する薬剤です。半年間月経を止めることで、筋腫の縮小をはかります。ただし、この治療のみで筋腫を完全になくすことはできません。治療中は月経がとまるため、症状は軽減しますが、骨粗しょう症などの副作用のために半年しか継続できません。治療をやめると筋腫が再度増大します。また、人工的に閉経の状態にするために顔面のほてりやいらいらなどの更年期障害のような症状が出たり、骨量が減少したりすることもあります。 薬物療法で症状がとれない場合や、筋腫が不妊症の原因となっている場合には筋腫を取り除く手術療法が行われます。
子宮筋腫に対する内視鏡下手術
子宮筋腫の治療法として、上記のように薬物により症状を軽くしたり、月経を止めて一時的に筋腫を縮小させる方法がありますが、以下の場合には手術が必要になります。
- 症状が強い場合
- 大きな筋腫
- 筋腫が不妊症の原因となっている場合
当科では筋腫の手術として、内視鏡技術認定医9名、ロボット技術認定医4名、子宮鏡技術認定医1名のもと内視鏡下手術(腹腔鏡下手術、ロボット手術、子宮鏡下手術)を積極的に行っています。筋腫に対する内視鏡下手術としては以下のようなものがあります。
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腹腔鏡下筋腫核出術
臍部に2cm程の傷をつけて、そこから腹腔鏡というカメラをいれて筋腫をくりぬく手術(核出術)を行っています。他に2~3箇所の1cmほどの小さな傷から、電気メスやはさみなどを入れて筋腫をくりぬきます。筋腫のくりぬきから子宮の縫合まですべて腹腔内で行います。くりぬいた筋腫は細かく切断して、傷から体外へ取り出します。筋腫だけをくりぬき、正常な子宮は残りますから、その後の妊娠も可能です。10cm大くらいまでの大きさの筋腫ならこの方法で手術が可能です。ただしすべて体内で手術を行うため、筋腫の大きさが大きい場合や、筋腫の数が多い場合は、出血量が多くなったり、手術時間が長くなったりするため、腹腔鏡補助下筋腫核出術が行われます。
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腹腔鏡補助下筋腫核出術
上記の手術の傷に、2~3cmの傷を加えてその傷から筋腫をくりぬきます。筋腫をくりぬいた後の子宮の縫合もその傷から行うことが可能です。傷はやや大きくなりますが、ほとんど目立たず、身体への負担も腹腔鏡下筋腫核出術とほぼ変わりありません。筋腫径が大きく、個数も多いときに行われる手術です。 腹腔鏡下手術は、手術後数日で退院が可能です。退院後も傷が小さいため、退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。 -
腹腔鏡下子宮全摘術
子宮筋腫のみ摘出した際は、子宮筋腫の再発という問題があります。今後、妊娠や出産を希望なされない方には、子宮を全摘する根治手術が選択されることがあります。腹腔鏡下子宮全摘は、1000gを越える子宮にも適応を拡大しており年々手術件数が増加しております。 -
腹腔鏡下筋腫核出術
子宮の内側に飛び出した筋腫を粘膜下筋腫とよびますが、この粘膜下筋腫は子宮鏡という内視鏡を腟の方から子宮内に挿入して筋腫を削り取る手術が可能です。この手術は、お腹はもちろんどこにも傷をつけずに手術が可能です。また通常全身麻酔は必要とせず、腰椎麻酔といって、背中から針をさして下半身の痛みをとる局所麻酔にて手術が可能で、腹腔鏡下手術と比較しても術後の回復はさらに早まります。子宮の筋肉の中にできている筋腫には行うことができません。通常は3cmくらいまでの筋腫に対して手術が行われます。粘膜下筋腫でも5~6cm以上になると、一回では取りきれず数回にわけて切除が必要になることがあります。 子宮鏡下手術は、手術の翌日には退院が可能です。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
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開腹手術
筋腫の大きさが10cmを超えるようなものや、数が多いものは内視鏡での手術が難しいため、お腹を切る手術(開腹手術)が行われます。 開腹手術でも筋腫核出術が可能ですが、もうお子さんをもうける予定がない場合には子宮を全てとる手術(子宮全摘術)が行われることもあります。 開腹手術の場合には、術後8から9日間の入院が必要になり、退院後も日常生活に戻るまでには1~2週間を要します。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜が本来あるべき場所(子宮の内側)以外の場所で増えてしまう病気です。卵巣に子宮内膜症が起こると卵巣内に血液がたまり腫瘍となります。これをチョコレート嚢腫と呼びます。子宮の筋層内に子宮内膜症が起こると、子宮筋層が厚く肥厚し、子宮が腫れ上がった状態になります。これを子宮腺筋症と呼びます。いずれも、病状が進むと激しい月経痛がおこります。月経の時以外でも腹痛が起きたり、排便痛や性交時痛の原因となります。 これらの痛みに対しては、症状が軽い場合は鎮痛薬を使用した対症療法が行われますが、症状が強い場合には排卵を止める薬物を使用した内分泌療法がより効果的です。
子宮内膜症の薬物療法
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低用量ピル
微量のエストロゲンとプロゲステロンが一錠になったものを内服して、排卵を止めます。月経は毎月ありますが、子宮内膜が薄くなるため、出血量が少なく、出血時の痛みも軽くなります。子宮内膜症の症状コントロールや再発予防に有効で、これまでの中用量ピルよりも副作用が少ないことから注目されています。長期間の内服が可能ですが、子宮内膜症自体を治療するものではないため、内服を行っていても病変が進行する場合もあります。
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プロゲスチン
合成プロゲステロンを内服して、排卵を止めます。月経も止まりますが、やや不正出血の頻度が高いといわれています。痛みを抑える効果と内膜症病変の縮小効果があるといわれています。この薬も長期間の内服が可能です。 -
GnRH作動薬
月経を止める薬物療法が行われます(GnRHアナログ製剤)。GnRHアナログ製剤にはアゴニスト(受容体作動薬)とアンタゴニスト(受容体拮抗薬)が存在します。GnRHアゴニスト製剤は一月に一回の注射剤や連日使用する点鼻薬です。GnRHアンタゴニスト製剤は連日内服する薬剤です。治療開始後、2ヶ月目にはほとんどの方の排卵が止まり、月経も止まります。内膜症病変の縮小効果が最も高い薬剤ですが、更年期症状や骨の量の減少をきたすことがあり、通常半年以上は使用されません。 子宮内膜症により生じる痛みに対する効果は、どの薬剤を使用しても8割から9割の方で痛みが軽減するといわれています。しかし、薬物の効果は使用をやめるとなくなってしまうため、終了後にプロゲスチンを内服することもあります。
子宮内膜症の腹腔鏡下手術
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チョコレート嚢腫核出~癒着剥離~内膜症病変焼灼
卵巣に子宮内膜症が起こると卵巣内に血液がたまり腫瘍となります。これをチョコレート嚢腫と呼びます。お腹の中を覆っている膜(腹膜)に内膜症が起こると、お腹の中で癒着がおこります。チョコレート嚢腫が6~7cm以上に大きくなる、癒着がひどくなると、痛みの程度も強くなります。また不妊症の原因になることもしばしばです。 このような患者様には、腹腔鏡による手術を行っています。 手術は、腹腔鏡により嚢腫だけを切除する嚢腫核出術、癒着を剥離する癒着剥離術、腹膜の病変を電気メスやレーザーメスで焼いてしまう焼灼術があり、患者様のお腹の中の状態により、こられを組み合わせて手術を行っています。 腹腔鏡下手術をした場合、手術後3日くらいで退院ができます。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
卵巣嚢腫
卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術
卵巣嚢腫(良性の卵巣腫瘍)のほとんどは(かなり大きなものでも)腹腔鏡での腫瘍をとることが可能です。手術の方法も卵巣を全部取ってしまうのではなく、腫瘍の部分だけを取って、正常卵巣の部分は残すことができますから手術後も卵巣は正常に機能します。
腹腔鏡下手術をした場合、手術後3日くらいで退院ができます。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
腹腔鏡に関する情報は、低侵襲手術の項目を御覧ください。
低侵襲手術について
産婦人科には、大きく分けて「腫瘍」「周産期」「生殖」「女性医学」という4つの専門領域があります。そして、手術はそのすべての領域に関わる重要な治療のひとつです。対象となる病気や患者さんの年齢、妊娠・出産の希望、病状などによって、適切な手術方法は大きく異なります。開腹手術、腟式手術、腹腔鏡手術、子宮鏡手術、ロボット支援下手術など、それぞれの特徴を理解し、患者さん一人ひとりに適した方法を選択することが重要です。近年では、単に傷を小さくするだけではなく、治療効果や安全性を保ちながら、できるだけ身体への負担を少なくし、その後の生活や妊娠・出産なども見据えた手術が求められています。私たちは4つの専門領域を横断して幅広い知識と技術を持ち、患者さんそれぞれの状況や希望に応じた、よりよい手術を提供することを目指しています。岐阜大学では、婦人科悪性腫瘍手術について2025年度は合計140件と岐阜県最多の症例数であり、低侵襲手術(ロボット手術・腹腔鏡手術)についても2025年度は、合計280件と県内最大級の症例数です。婦人科悪性腫瘍手術、低侵襲手術については、高難度の手術もありますが、これらの手術を行う実施体制性についても、資格を有する医師数も岐阜県内で最多です。婦人科腫瘍専門医6名、産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医9名、ロボット技術認定医4名、子宮鏡技術認定医1名のもと、安全で質の高い手術を提供しております。
低侵襲手術
近年、婦人科手術では腹腔鏡手術、ロボット支援下手術、子宮鏡手術などの**低侵襲手術(身体への負担が少ない手術)**が広く行われるようになっています。 当院でも、治療効果と安全性を十分に考慮したうえで、可能な限り身体への負担を軽減できる手術を取り入れています。 良性疾患はもちろん、子宮体癌などの悪性腫瘍についても、病状や進行期などの条件を満たす場合には低侵襲手術を選択しています。当院には婦人科腫瘍を専門とする医師と内視鏡手術の技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡・ロボット)が在籍しており、腫瘍学的な安全性と低侵襲性の両方を大切にした手術を行っています。 また、低侵襲手術にはそれぞれ特徴があり、すべての患者さんに同じ術式が適しているわけではありません。病気の種類や大きさ・進行度、年齢、妊娠・出産の希望、これまでの手術歴などを総合的に検討し、一人ひとりに適した術式を選択しています。 代表的な対象疾患と術式は以下のとおりです。
| 主な疾患 | 主な条件・治療目的 | 主な術式 |
|---|---|---|
| 子宮体癌(子宮内膜癌) | 低リスク早期癌など | ロボット支援下手術、腹腔鏡手術 |
| 子宮頸癌 | 早期癌の一部 | 腹腔鏡手術など |
| 子宮内膜異型増殖症 | 子宮温存を希望しない場合 | ロボット支援下手術、腹腔鏡手術 |
| 子宮筋腫・子宮腺筋症 | 子宮摘出を行う場合 | 腹腔鏡手術、ロボット支援下手術など |
| 子宮筋腫 | 子宮温存を希望する場合 | 腹腔鏡手術、腹腔鏡補助下手術、子宮鏡手術など |
| 良性卵巣腫瘍 | ― | 腹腔鏡手術、腹腔鏡補助下手術 |
| 子宮粘膜下筋腫 | 子宮温存を希望する場合 | 子宮鏡手術 |
| 子宮内膜ポリープ | ― | 子宮鏡手術 |
- 上記は代表例です。実際の術式は、病状や患者さんの希望などを踏まえて個別に検討します。
〜一人ひとりに適した手術を〜
低侵襲手術の目的は、単に「傷を小さくする」ことではありません。 治療効果と安全性を保ちながら、術後の痛みや身体への負担を軽減し、より早く日常生活へ戻れることを目指す手術です。 一方で、病状によっては開腹手術が最も安全で確実な場合もあります。当院では特定の術式にこだわるのではなく、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術、子宮鏡手術など、それぞれの長所と短所を考慮しながら、患者さん一人ひとりに適した治療をご提案しています。 低侵襲手術について詳しくお聞きになりたい方は、かかりつけの先生を通じてご紹介いただくか、当院産婦人科へご相談ください。
〜子宮悪性腫瘍に対する低侵襲手術の拡大〜
子宮体がんに対する手術では、近年、腹腔鏡手術やロボット支援下手術などの低侵襲手術の適応が広がっています。 当院では、所定の施設基準を満たしたうえで、腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術およびロボット支援下子宮悪性腫瘍手術を実施しています。また、リンパ節転移リスクなどを考慮し、傍大動脈リンパ節までの評価が必要と判断される症例についても、適応を慎重に検討したうえで内視鏡下での傍大動脈リンパ節郭清を含む手術を導入しました。 さらに、2026年度の診療報酬改定により、子宮悪性腫瘍手術におけるセンチネルリンパ節生検が保険診療として新たに評価されるようになり、当院でも子宮悪性腫瘍に対して導入しています。 センチネルリンパ節とは、がん細胞がリンパ流に乗って最初に到達すると考えられるリンパ節です。センチネルリンパ節を同定して詳細に評価することで、リンパ節転移の有無について、より精緻な病理組織診断を行うことを目的として実施しています。 患者さんの病状や進行期、組織型などを総合的に検討し、それぞれの患者さんに適した術式やリンパ節評価の方法を選択しています。これらの低侵襲手術については、婦人科腫瘍専門医6名、産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医9名、ロボット技術認定医4名のもと実施しております。婦人科悪性腫瘍の初回手術数も年間140例と県内最の多症例数です。
〜骨盤臓器脱に対する手術〜
骨盤臓器脱は、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内臓器が下がり、腟から脱出することで、違和感や排尿・排便のしづらさなどを生じる疾患です。生命に直接かかわることは少ない一方で、日常生活や外出、運動などに影響し、生活の質(QOL)を大きく損なうことがあります。 当院では、骨盤臓器脱に対する手術治療を導入し、患者さんの年齢、症状、合併症、生活スタイル、QOLなどを総合的に考慮して、一人ひとりに適した術式を選択しています。 手術方法としては、ご自身の組織を用いて骨盤臓器を支える**Native Tissue Repair(NTR)のほか、メッシュを用いて腟や子宮を仙骨に固定する腹腔鏡下仙骨腟固定術(Sacral Colpopexy)**を行っています。仙骨腟固定術については、腹腔鏡手術やロボット支援下手術などの内視鏡手術を用いることで、身体への負担をできるだけ軽減するよう努めています。 骨盤臓器脱の治療では、必ずしもすべての患者さんに手術が必要なわけではなく、症状や希望に応じて治療方法を検討することが大切です。当院では、それぞれの治療法の特徴をご説明したうえで、患者さんと相談しながら治療方針を決定しています。 「腟から何かが出てくる感じがする」「長時間立っていると違和感がある」「排尿や排便がしづらい」などの症状でお困りの方は、年齢のためとあきらめず、お気軽に当院産婦人科へご相談ください。
〜子宮腺筋症に対する子宮温存手術への取り組み〜
子宮腺筋症に対する手術では、現在、子宮全摘術が保険診療として行われる標準的な術式です。一方、妊娠を希望される方など、子宮を温存したい患者さんに対して、腺筋症の病変部分を切除し子宮を温存する「子宮腺筋症病巣除去術」という治療があります。 子宮腺筋症病巣除去術は、現時点では一般的な保険診療として実施されている手術ではなく、一定の要件を満たした一部の医療機関において、先進医療Aとして行われています。 当院でも、子宮温存を希望される患者さんに新たな治療選択肢を提供することを目指して、子宮腺筋症病巣除去術を導入しています。現在、先進医療Aとしての実施に向けて準備を進めています(2026年10月時点)。現在、東海地区で本手術について先進医療導入を進めている施設は岐阜大学のみです。 子宮腺筋症の治療は、症状の程度や病変の大きさ・位置、年齢、妊娠希望などによって適切な方法が異なります。子宮腺筋症と診断され、子宮を温存した治療を希望される方や、今後の治療方法についてお悩みの方は、当院産婦人科までご相談ください。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、婦人科をはじめ多くの診療科で広く行われている**低侵襲手術(身体への負担が少ない手術)**の代表的な方法です。 お腹に数か所の小さな孔をあけ、腹腔内に挿入したカメラ(腹腔鏡)から映し出される映像をモニターで確認しながら、専用の細い手術器具(鉗子)を用いて手術を行います。 従来の開腹手術と比較して創部が小さいことが大きな特徴で、一般的に術後の痛みが少ない、出血量が少ない、術後の回復が早い、入院期間を短縮できるなどの利点があります。当科でも、良性疾患に対する腹腔鏡手術では、術後3~5日程度で退院される患者さんが多くなっています。 現在では、良性卵巣腫瘍、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などの良性疾患だけでなく、子宮体がんをはじめとする一部の婦人科悪性腫瘍にも腹腔鏡手術の適応が広がっています。 一方、腹腔鏡手術がすべての患者さんに適しているわけではありません。病気の種類や大きさ、進行度、過去の手術歴、癒着の程度などによっては、開腹手術がより安全で適切な場合もあります。当科では、それぞれの術式の特徴を踏まえ、患者さん一人ひとりに適した手術方法を検討しています。 腹腔鏡手術では、拡大された鮮明な術野をモニター上で共有しながら手術を行います。そのため、安全な手術を行うためには、骨盤内の解剖に関する十分な知識と、内視鏡手術特有の技術の習得が重要です。 当院には9名の日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医が在籍しており(2026年10月時点)、安全で質の高い腹腔鏡手術を提供できる体制の整備に努めています。また、手術映像を術者だけでなくチーム全体で共有できる腹腔鏡手術の特徴を生かし、若手医師への技術指導や手術教育にも取り組んでいます。
ロボット支援下手術
ロボット支援下手術は、腹腔鏡手術と同じく、お腹に数か所の小さな孔をあけて行う低侵襲手術のひとつです。術者が手術支援ロボットを操作し、高精細な3次元画像を見ながら、関節機能を備えた鉗子を用いて手術を行います。 婦人科領域では、2018年4月から良性疾患に対する子宮全摘術および早期子宮体がんに対する手術が保険適用となり、その後も適応が広がってきました。現在では、骨盤臓器脱に対する仙骨腟固定術などにもロボット支援下手術が用いられています。 当院では手術支援ロボットを、複数の診療科で共同して運用しています。婦人科でも、患者さんの病気や状態に応じてロボット支援下手術を行っています。
〜ロボット支援下手術の特徴〜
ロボット支援下手術では、高精細な3次元画像と拡大視野、自由度の高い多関節鉗子、手ぶれを抑える機能などを利用できます。そのため、骨盤の深い部分など、限られた空間でも繊細で安定した操作を行いやすいことが特徴です。 一方で、ロボットが自動的に手術を行うわけではありません。手術のすべての操作は術者が行うため、安全で質の高い手術には、通常の腹腔鏡手術と同様に、十分な解剖学的知識、手術経験、ロボット手術に特有の技術とチーム医療が必要です。 また、すべての患者さんにロボット支援下手術が適しているわけではありません。疾患の種類や進行度、手術内容、これまでの手術歴、患者さんの全身状態などを総合的に判断し、開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット支援下手術それぞれの特徴を踏まえて、適切な術式を選択しています。 近年、婦人科領域におけるロボット支援下手術は急速に普及し、手術手技だけでなく術者教育や技術評価の仕組みも整備されてきています。現在、日本産科婦人科内視鏡・ロボティクス学会では、ロボット手術についても技術認定制度が設けられており当院において3名が在籍しています。
| 特徴 | 留意点 |
|---|---|
| 高精細な3次元・拡大視野 | 触覚がなく、視覚情報をもとに操作する |
| 自由度の高い多関節鉗子 | 専門的なトレーニングが必要 |
| 手ぶれを抑えた繊細な操作 | 手術内容によっては腹腔鏡・開腹手術が適する |
| 深い骨盤内でも安定した操作 | 手術時間や準備時間が長くなる場合がある |
| 術者が座って操作できる | ― |
子宮鏡手術
子宮鏡手術は、子宮の入り口から細い内視鏡(子宮鏡)を挿入し、子宮の内側を直接観察しながら病変を治療する手術です。腹部を切開する必要がなく、婦人科領域の低侵襲手術の中でも、特に身体への負担が少ない手術のひとつです。 代表的な対象疾患には、子宮粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープなどがあります。これらは過多月経や貧血、不妊症などの原因となることがあり、病変の大きさや位置、症状、妊娠希望などを考慮して手術の適応を判断します。 手術では、子宮内に生理食塩水を灌流して視野を確保し、子宮鏡で病変を確認しながら専用の器具を用いて切除します。お腹に傷が残らず、術後の回復が早いことも大きな特徴です。当院では多くの場合、手術前日または当日に入院し、術後1日程度で退院することが可能です。
〜妊娠を希望される方に対する子宮鏡手術〜
近年、不妊症の原因となる病変を手術で治療し、妊娠しやすい環境を整える「生殖外科」という考え方が注目されています。子宮鏡手術は、子宮内腔の病変を直接観察・治療できることから、生殖外科において重要な役割を担っています。 特に妊娠を希望される患者さんでは、病変を治療するだけでなく、正常な子宮内膜や子宮筋層への影響をできるだけ少なくすることが重要です。 例えば粘膜下筋腫では、病変の大きさや位置によっては、腹腔鏡手術や開腹手術ではなく子宮鏡手術を選択することで、腹部や子宮表面を切開することなく治療できる場合があります。 当院では、病変の種類や大きさ・位置を十分に評価し、将来の妊娠も考慮しながら、できるだけ子宮への負担を少なくする治療を心がけています。
〜広がる子宮鏡による診断・治療〜
子宮鏡が用いられるのは、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫だけではありません。 近年では、子宮中隔などの子宮奇形、不妊症の原因となる子宮内病変、妊娠後に子宮内に組織が残存した場合(RPOC:胎盤遺残など)、過多月経の原因となる子宮内病変など、子宮鏡による診断・治療の対象は広がっています。 疾患や症状だけでなく、年齢や妊娠希望なども含めて総合的に評価し、一人ひとりに適した治療方法を検討しています。
〜安全で質の高い子宮鏡手術を目指して〜
子宮鏡手術は身体への負担が少ない一方で、子宮穿孔や灌流液に関連した合併症など、子宮鏡手術に特有の合併症があります。そのため、安全に手術を行うには、子宮内腔の解剖、灌流液の管理、病変に応じた手術手技など、子宮鏡手術に特有の専門的な知識と技術が必要です。 当院には、日本産科婦人科内視鏡・ロボティクス学会の子宮鏡技術認定医が1名在籍しており、さまざまな子宮内病変に対して子宮鏡による診断・治療を行っています。 また大学病院として、安全で質の高い子宮鏡手術を継続して提供できるよう、若手医師への手術教育や技術継承にも取り組んでいます。 私たちは、子宮鏡手術を行うこと自体を目的とするのではなく、子宮鏡が適切な患者さんに、治療の選択肢としてきちんと届けられることを大切にしています。 過多月経や貧血、不妊症などでお悩みの方、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、子宮奇形などを指摘された方、子宮を温存した治療について相談したい方は、当院産婦人科へご相談ください。