内田勝セミナー 卒業論文スタイルガイド(第5.3版)

岐阜大学 地域科学部 地域文化講座・内田勝研究室)



2000年10月1日 第1版作成
2022年6月5日 最終更新(第5.3版)


岐阜大学地域科学部 地域文化学科 地域文化講座 内田勝

出典の表示法については、日本社会学会編集委員会『社会学評論スタイルガイド』
https://jss-sociology.org/bulletin/guide/)を参考にしました。


目次


0 はじめに

 0.1 なぜ「スタイルガイド」が必要なのか?

 0.2 参考にしたウェブサイト

 0.3 「基本的な約束事」について


1 基本的な約束事

 1.1 書式

 1.2 全体の構成

 1.3 

 1.4 目次

 1.5 本文

 1.6 論文要旨


2 引用と注

 2.1 引用の出典を示す注

 2.2 短い引用

 2.3 長い引用

 2.4 引用文の一部省略

 2.5 引用をする上での注意点

 2.6 内容を補足するための注


3 参考資料リスト

 3.1 参考資料リストは文献注と連動している

 3.2 参考資料リストの項目を並べる順序

 3.3 参考資料リストの書式——書籍の場合

 3.4 参考資料リストの書式——雑誌記事などの場合

 3.5 参考資料リストの書式——インターネット上の情報(一般的なもの)

 3.6 参考資料リストの書式——インターネット上の辞典・事典

 3.7 参考資料リストの書式——文字情報以外の資料


0 はじめに



 0.1 なぜ「スタイルガイド」が必要なのか? [目次に戻る]

 論文を書く上でもっとも重要な注意点のひとつに、「他人の考えを、自分自身の思い付きであるかのように偽って使ってはならない」ということがあります。そのため、論文の中で他人の文章を引用または参照した場合、その出典を明示しなければなりません。

 出典を示すときの要点は、あなたが引用した言葉を「誰がいつ、何という場(本・雑誌記事・ウェブサイトなど)で言ったか」です。その発言をどういう人が、どんな時代背景で行ったかということは、発言の意味を解釈する上で重要です。しかしそれ以上に大事なのは、引用の出典として詳しいデータを挙げておけば、興味を持った読者が引用元の資料を自分で探し出し、引用箇所の前後の文脈を確かめることができる、ということです。引用の出典を示すとは、あなたの文章から引用元の資料に「リンクを張る」ことにほかなりません。読者がリンクをたどって引用元の資料に移動し、あなたの論文では紹介しきれなかったその資料の面白さを味わうことができれば、あなたの論文自体の使用価値はさらに高まるわけです。

 出典を示すにはいろいろな方式がありえます。セミナー発表のレジュメや期末レポートであれば、引用する文献・資料も少ないので、聞き手や読者にわかるように工夫してあればどんな方式でもよいのですが、卒論ともなると参考資料も多く、引用のたびに詳しい書誌情報を載せていたのでは繁雑すぎますし、かと言って引用の出典をすべて「注」として最後にまとめるのも、そのたび本文と注を行ったり来たりせねばならず、読みにくくて仕方がありません。(人文科学の学術書の多くが巻末のこうした「注」で膨れ上がっているのは、不合理極まりない悪弊であると、個人的には思います。)もっと合理的な出典の示し方を採用したほうがよさそうです。

 というわけで、この「卒業論文スタイルガイド」の中心は、「引用の出典を、本文の邪魔にならない程度に簡潔に、かつ興味を持った読者が容易に元の本や記事を探し出せる程度に詳しく示すには、どうすればいいか?」という問いに対する答です。


 0.2 参考にしたウェブサイト [目次に戻る]

 実は、英語論文の場合、出典を示す方式は分野ごとにほぼ定まっています。たとえば私の専門である英語圏文学の分野では、『MLA英語論文の手引』(MLA Handbook)というマニュアルがあり、どんな資料を引用するときはどういう形で注を付けるか、といったことが事細かに定められています。

 日本語論文でも同じようなマニュアルはないだろうか、と探してみたところ、インターネット上で、日本社会学会編集委員会が作製した『社会学評論スタイルガイド』(https://jss-sociology.org/bulletin/guide/)というものを見つけました。タイトルから分かるように、これは社会学の学術誌に投稿する人のためのマニュアルなのですが、実際には社会学以外の分野でも使える、非常に合理的な方式であると思いました。そこで内田セミナーの卒論では、基本的にこの方式を採用することにします。したがって以下の文章は、『社会学評論スタイルガイド』のもっとも基本的な部分を抜き出したもの、ということになります。ただし内田セミナーの卒論では引用資料の多くが日本語文献になると予想されることを考慮して、若干アレンジを加えました。ここには書かれていない細かい点を確かめたければ、『社会学評論スタイルガイド』のサイトで確認してください。


 0.3 「基本的な約束事」について [目次に戻る]

 引用についての話に移る前に、「1 基本的な約束事」として、内田セミナーでの卒業論文の書式についてまとめてみました。書式や構成について、決まった型があったほうが書きやすいのではないかと思ったのです。もちろん、この定型に従っていたのでは自分の書きたいことが表現できない、というのであれば、定型からある程度逸脱することもやむを得ないでしょうが、その場合はあらかじめ私に相談してください。

 ただし言うまでもないことですが、当セミナーでの卒業研究は、常識的に「論文」と見なされる構成と文体で発表しなければなりません。随筆・日記・小説・戯曲・詩・絵画・音楽・ダンスなどの方式のみで卒業研究を発表することは禁止します。


1 基本的な約束事

 

 1.1 書式 [目次に戻る]

 論文は、A4サイズのワープロ書類として清書、印刷し、大学生協などで入手できる厚紙の表紙を付けて綴じたものを、学務係に提出すること。なお、指導教員(つまり私)には、Microsoft Word形式(.docx)またはテキストファイル形式(.txt)にしたものを、電子メールによって提出することが望ましい。内田セミナー卒業論文のひな形(Microsoft Word形式)はここからダウンロードできる。

 論文はA4サイズ横書きで、日本語で執筆するものとする。

 論文の長さは、2万字以上とする。注や参考資料リストは2万字のうちに含めない。A4サイズで1ページ40字×35行(1,400字)とした場合、本文だけで15ページ以上になる計算である。

 1 ページあたりの文字数は、上にあるように、全角文字で40字×35行を目安とする。文字の大きさは10ポイント前後になるはずである。(もちろんこれはあくまで目安であって、厳密に守る必要はなく、ワープロソフトの都合でたとえば43字×36行とか42字×34行になってもかまわない。)なお行間には、読みやすさを考えてある程度スペースを空けること。

 ページ番号は各ページ下部の中央に付けるものとする。(それが困難であればページ下部中央でなくてもよいが、ページ番号は必ず付けること。万一、ワープロにページ番号を振る機能がなければ、そこだけ手書きで書くこと。)

 和文には全角文字、欧文(アルファベット)および算用数字(アラビア数字)には半角文字を使用する。和文を書くときは、句読点やカッコ記号なども、全角文字を使用すること。和文の中にアルファベットを混ぜる場合は、そこだけ半角にする。(「NHK」ではなく「NHK」とする。)

 和文の句読点は、「。」「、」または「.」「,」のどちらの方式を用いてもよいが、全体を通してどちらかに統一すること。


 1.2 全体の構成 [目次に戻る]

 基本的には[扉、目次、本文(序論、第1章、第2章、第3章、結論)、注、参考資料リスト]といった構成をとること。もちろん、「序論」を省いたり、章の数が2になったり5になったりしてもかまわない。


 1.3  [目次に戻る]

 扉(最初のページ)には、上から、論文の題目、大学名と学部名(岐阜大学 地域科学部)、提出月(たとえば「2012年1月」)、学籍番号、氏名を書く。

 なお、論文を綴じるときに使う厚紙の表紙(生協で購入できる)には、扉と同じ内容を記入すること。


 1.4 目次 [目次に戻る]

 目次には、本文の各章(標題も付ける)と注、参考資料リストの最初のページ番号を記入する。


 1.5 本文 [目次に戻る]

 上の1.2にあるように、原則的には「序論、第1章、第2章、第3章、結論」という形をとるものとする。「序論」とか「結論」というような言葉遣いに違和感を覚える場合は、「はじめに」「おわりに」などの言葉を使ってもよい。

 各章には必ず標題を付けること。つまり「第1章」だけではなく、たとえば「第1章 『生きている実感』とは何か」といったタイトルを付けること。序論や結論に標題は必要ないが、もちろん付けてもよい。

 「章」の下位区分として「節」を設けてもよい。ただしその場合、それぞれの節に標題を付け、たとえば、「第1節 失われた『生の実感』」というように小見出しを作ること。「節」という言葉遣いに違和感を覚える場合は、たとえば「1 失われた『生の実感』」といった処理をしてもよい。


 1.6 論文要旨 [目次に戻る]

 論文提出と同時に論文要旨(A4用紙1枚)を提出する。論文要旨の決定稿を学務係に提出する数日前に、必ず第一稿を私(内田)に提出すること。私への提出日については、内田セミナーウェブサイト内のページ「内田セミナー 卒論提出までのスケジュール」を参照。

 論文要旨は、学生が提出した原稿をそのまま写真製版して学部全体で冊子にまとめるため、様式が細かく定められている。地域科学部の掲示板に掲示されている様式に従って作製すること。定められた様式に従った論文要旨のひな形(Microsoft Word形式)はここからダウンロードできる。なお、この論文要旨は、論文提出後に行われる卒業論文発表会の資料としても用いられるばかりか、学部の公式資料として学外にも公開されるので、心して作成すること。


2 引用と注



 2.1 引用の出典を示す注 [目次に戻る]

 引用したり要旨を紹介した文献を示す注(以下、文献注と略記)は、本文中の適切な個所に、カッコ書きの割注で記載する。文献注のカッコは全角の丸カッコ(  )を用いる。

 文献注は、後述の「参考資料リスト」と連動するものであり、

(著者名 出版年: 引用ページ)

という簡潔な方式で表記する。詳しい書誌データは「参考資料リスト」のほうを見ればわかる仕掛けである。

[例]

【本文中での表記】

「演ずるということは、つまるところ、自分のコンテクストと、演ずべき対象のコンテクストを摺り合わせることなのだ」と、劇団主宰者の平田オリザは語っている(平田 1998: 168)。

【参考資料リストでの表記】

平田オリザ、1998、『演劇入門』、講談社[現代新書]。

 著者名と出版年のあいだには半角のスペースを入れ、出版年のあとに半角コロンと半角スペースを入れてから引用ページを半角数字で記入する。「p.」「pp.」といった記号は使わない。

 引用が複数ページにわたる場合は、たとえば(吉見 1994: 127-9)のように、最初と最後のページを記入する。最後のページは最初のページと異なる桁だけ表記すればよい。

 引用した本が共著の場合は、(鶴見・清野 2000: 99-100)のように、著者名をナカグロ(・)でつなぐ。共著者が3名以上の場合は、(高橋ほか 1965: 18)のように、ファースト・オーサー(最初に名前が挙がっている著者)の名前のうしろに「ほか」をつける。

 編書の場合は(栗原編 1996: 38-9)、編者が2人の場合は(伊藤・橋本編 1998: 3)、編者が3人以上の場合は(花田ほか編 1999: 25)、というように表記する。

 同じ著者が同じ年に発表した複数の資料を用いた場合、それぞれの資料は出版年のあとに小文字のアルファベット(a, b, c...)を付けることで区別する。たとえば(荒俣 1998a: 32-3)(荒俣 1998b: 108)のように表記するわけである。

 同姓の別の著者による資料を用いた場合は、文献注でもフルネームを記載して区別する。つまり(村上龍 2000c: 15)(村上隆 1999: 235-6)のように表記する。

 単行本がのちに文庫化されたものを用いたりして、引用した版の出版年が元の版と異なっている場合、文献注では引用した版の出版年を記載し、初版の出版年は「参考資料リスト」のほうに載せればよい。ただし本文中でも初版の年を強調したい場合は、(宮台 [1997] 2000b: 146)のように、著者名のあとに半角スペースおよび半角の角ガッコ [ ] を挿入してそこに記載する。

 当セミナーでは、翻訳書の場合も、通常の和書と同じ扱いをして、たとえば(ブルデュー 1990: 8-9)のように、(原著者名 訳書出版年: 引用ページ)という形で表記する。文献注で訳者の名前を挙げる必要はない。原書の出版年は「参考資料リスト」のほうに載せればよいが、本文中でも示しておきたい場合は、(ブルデュー [1979] 1990: 8-9)のように、著者名のあとに半角スペースおよび半角の角ガッコ [ ] を挿入してそこに記載する。

 翻訳を使わず原書を直接参照した場合は、和書の場合と同様、(著者名 出版年: 引用ページ)の形で(Willis 1979: 22-3)のように表記する。この場合、( )のみ全角文字で、カッコの中はすべて半角文字になる。原書と訳書のページをともに表記する方式については、『社会学評論スタイルガイド』を参照のこと。

 一つの文や段落で同時に複数の文献を参照した場合には、(奥田 1983; 倉沢編 1990; 高橋編 1992)のように、文献と文献のあいだを半角セミコロンと半角スペースでつないで表示する。

 上述のような文献注の記載法は、すでに十分に簡略なものなので、同じ資料を続けて何度か引用する場合も「同書」「前掲論文」といった表現は使わず、その都度(著者名 出版年: 引用ページ)の形で記載する。もちろん、それではあまりに繁雑になって読みにくくなる場合は、独自の記載法を考案してもよい。ただしその場合、注などでその旨を明記すること。

 筆者の署名がない新聞記事を引用するときは、本文中で(『中日新聞』2000年9月22日、夕刊、18面)というように出典を注記するだけでよく、「参考資料リスト」に載せる必要もない。ただし、署名記事の場合は、一般の書籍や論文と同じように扱い、「参考資料リスト」にも載せること。

 商業雑誌の無署名記事の扱い方については、「3.4 参考資料リストの書式——雑誌記事などの場合」を参照。

 辞典・事典の項目を引用・参照したときの出典表記については「3.4 参考資料リストの書式——雑誌記事などの場合」にある、論文集やアンソロジーの中の1編だけを用いた例に準じる。インターネット上の辞典・事典については、「3.6 参考資料リストの書式——インターネット上の辞典・事典」を参照。

 なお、映画、音楽、テレビ番組など、文字情報以外の資料を参照・引用する場合の処置については、「3.7 参考資料リストの書式——文字情報以外の資料」を参照のこと。


 2.2 短い引用 [目次に戻る]

 資料から短い文章を引用するときは、本文中にカギカッコ「 」でくくるかたちで引用をおこなう。ここで言う「短い文章」とは、1.1で述べた書式(1ページ40字×35行)で、3行以内に収まる程度の長さの文章である。

 引用する文章の中でカギカッコ「 」が使われている場合は、そのカッコを二重カギカッコ『 』に変えて引用する。

 文献注を付ける位置は、引用文が終わってカギカッコをとじた直後である。ただし、引用が終わるのが文の途中であれば、その文の最後の句点(。)の直前に入れてもよい。


[例](どちらの方式も可)

【カギカッコ「 」の直後】

作家の荒俣宏によれば、「『未来』ということばが、真の意味で人々の関心を惹いたのは、十九世紀半ば以降のことである」(荒俣 2000: 7)という。

【句点(。)の直前】

作家の荒俣宏によれば、「『未来』ということばが、真の意味で人々の関心を惹いたのは、十九世紀半ば以降のことである」という(荒俣 2000: 7)。

【引用の出典】荒俣宏、2000、『NHK人間講座 パリ・奇想の20世紀』日本放送出版協会。


 2.3 長い引用 [目次に戻る]

 文献から長めの文章を引用するときは、前後各1行ずつあけ、かつ、左側を全角で2字分字下げして、引用であることを明示すること。引用部分をカギカッコ「 」で囲むことはしない。ここで言う「長めの文章」とは、1.1で述べた書式(1ページ40字×35行)で、4行以上の長さの文章である。長い引用の場合、文献注を入れる位置は、引用の最後の句点(。)の直後、というのが慣例である。

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[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

■日本社会におけるヨーロッパ製ブランド品の意味について、山田登世子は次のように述べている。

■■ブランド品の歴史的コンテキストは——エルメスがその典型であるように——結局のところ、顧
■■客としての貴族の存在につきている。ところが大量消費社会ニッポンは、そんな歴史的なオリジ
■■ン(根拠・起源)から切れたところでヨーロッパ・ブランドに接しているといわざるをえない。
■■わたしたちにとって、ブランド品のオーラは、もはやモデルとしての貴族などとはほど遠いもの
■■なのだ。(山田 2000: 65)

■それでは、日本におけるブランド品の「オーラ」とはいったい何なのか? 本来の顧客である貴族の
存在を想定しないままで、商品はどんなオーラを持ちうるというのだろうか? 山田は続けてこう書く。

■■そう、そのオーラは、根拠の定かでない「物語のざわめき」のようなものにすぎない。メディア
■■で語られ、口コミで語られる実体のない夢のざわめき。それがブランドの魅力をかたちづくって
■■いるのである。だから、「正統的」な見方からすれば「似あわない」ものでも少しもかまわない
■■のだ。何かキラキラした不思議なファンタジーがまとわりついているもの、それが現代のブラン
■■ドなのだから。(山田 2000: 65)


【引用の出典】山田登世子、2000、『ブランドの世紀』マガジンハウス。

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 引用文が複数の段落にわたる場合は、段落の冒頭をさらに1字下げる。

 ページの4分の3を越えるような極めて長い引用は、極力避けること。長すぎる引用は、あたかも字数を埋めるためだけに、自分の主張に直接関連があるわけでもない文章を故意に長々と引用しているかのような印象を与え、論文の評価を著しく下げることにつながる。

 複数ページにわたるような極端に長い引用がどうしても必要な場合は、本文の字数にカウントされない「注」に回すか、「参考」として論文の末尾に付けるなどの工夫をすること。


 2.4 引用文の一部省略 [目次に戻る]

 引用文の省略箇所は、3点リーダ(…)を2回続けて打つ(……)ことで表す。

[例]

吉見俊哉はあるインタビュー記事の中でこう述べている。「文化研究にとって大切なのは……先人たちの知に学びながら、自らが存在している場所と歴史のなかの現在を問うていくような真にクリティカルな視点なのです」(吉見 1996: 21)。

【引用の出典】吉見俊哉、1996、「社会学の25人(6)吉見俊哉」(インタビュー記事)『AERA Mook 社会学がわかる。』朝日新聞社、20-1。

 引用文の中ですでに「……」が使われていたりして誤解を招きかねない場合、「……」の代わりに「(中略)」などを用いてもよい。


 2.5 引用をする上での注意点 [目次に戻る]

 引用をおこなうにあたってもっとも大事なことは、原文どおりの引用をすることである。誤字・宛字・脱字などもそのまま転記し、当該語句の上に(ママ)とルビをふらなければならない。

 もちろん、引用文の語尾を勝手に書き換えてはいけない。「である」体の本文に「ですます」体の引用文をうまく組み込むためには、引用を語尾の直前で切って次のような工夫をする。

[例]【引用文の元の形は2.4の[例]を参照。】

吉見俊哉によれば、文化研究にとって大切なのは「先人たちの知に学びながら、自らが存在している場所と歴史のなかの現在を問うていくような真にクリティカルな視点」である(吉見 1996: 21)。

 引用文に割り込むかたちで引用者が補足説明を入れる必要があるときには、全角の亀甲カッコ〔  〕を用いてもよい。

 言うまでもないことだが、引用元の著者の主張をねじ曲げるような引用をしてはならない。

[例]【やってはならない悪質な例。引用文の元の形は2.4の[例]を参照。】

吉見俊哉によれば、文化研究にとって大切なのは、先人たちが積み上げた「完成された学問体系を学習する姿勢」(吉見 1996: 21)にほかならないのであって、そのためには「自らが存在している場所と歴史のなかの現在を問うていくような真にクリティカルな視点」(吉見 1996: 21)など持たないほうが賢明なのである。


 2.6 内容を補足するための注 [目次に戻る]

 内容補足のための注は、文脈上、本文中では記述しにくいが、どうしても言及しておかなければならないことを述べるために用いる。

 本文に注を付けるには、本文中の当該個所に上付き文字で 1) というように注番号をふる。この場合、数字も丸ガッコも半角文字を用いること。カッコ記号と連接する場合には、「……」2) というようにカッコ記号の後ろの位置に付ける。句読点と連接する場合には,……3)、……4)。というように句読点の前の位置に付ける。

 本文全体に対する注をまとめて論文の末尾、本文のすぐ後に書く。本文が終わったところで改ページして、ページの上に[注]という見出しを付けること。章ごとに見出しを付け、その章への注を書く。注番号は章ごとに 1) から始めてよい。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

[注]

第1章 日常生活にひそむ「物語」

■1)■日本社会におけるブランド品の特殊な意味については、山田登世子『ブランドの世紀』を参照
■■■のこと。山田によれば、日本でブランド品が持つオーラとは、メディアや口コミで語られる
■■■「根拠の定かでない『物語のざわめき』のようなもの」にすぎないという(山田 2000: 65)。
■■■(以下省略)


3 参考資料リスト



 3.1 参考資料リストは文献注と連動している [目次に戻る]

 本文中で言及もしくは引用した資料は、漏れのないようにすべてを参考資料リストに記載しなければならない。逆に、参考資料リストにあげられた資料は、かならず本文中に対応する文献注がなければならない。論文を書くうえで参考にした資料であっても、本文で文献注を付けて引用・参照したのでなければ、参考資料リストに載せてはならない。


 3.2 参考資料リストの項目を並べる順序 [目次に戻る]

 参考資料リストは論文の末尾、注の後に置く。注が終わったところで改ページして、ページの上に[参考資料リスト]という見出しを付けること。

 参考資料リストの項目を並べる順序については、まず日本語の資料(外国語から日本語に訳された資料を含む)をファーストオーサー(最初に名前が挙げられている著者)の姓のアイウエオ順に並べ、その後に欧文の資料を姓のアルファベット順に並べる。

 カナ表記された欧米の人名については、一般的な参考文献リストでは姓を先、名を後にして「ブルデュー,ピエール」のように記載することが多いが、内田セミナーの参考資料リストでは「ピエール・ブルデュー」とそのまま記載する。ただし「姓のアイウエオ順に並べる」という原則は崩れないので、たとえば「ピエール・ブルデュー」という著者名の項目は、アイウエオ順としては「ぴ」ではなく「ぶ」が入る箇所に並べる。なお、芸名などで姓・名の区別が定かでない場合は、最初の単語のアイウエオ順で並べる。したがって「レディー・ガガ」は「が」ではなく「れ」が入る箇所に並べる。

 なお、カナ表記された欧米の人名については、本文内の文献注では「姓 出版年: ページ番号」という書式を原則とする。姓・名の区別が定かでない場合はフルネームを書く。例としては、(ブルデュー 1990: 8-9)(レントリッキア・マクローリン編 1994: 25)(レディー・ガガ 2011)といった形になる。

 欧文文献については、『社会学評論スタイルガイド』の「4. 文献」<https://jss-sociology.org/bulletin/guide/document/> のページより「4.2 欧文の文献」を参照。欧文文献については、姓を先、名を後にして記載する。したがって、Pierre Bourdieu という人名は Bourdieu, Pierre と記載することになる。

 以上のような原則に基づいて参考資料リストの項目を並べると、たとえば次のような順序になる。それぞれの項目の書式などについては、「3.3 参考資料リストの書式——書籍の場合」以降の記載を参照。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

浅利慶太(台本・演出)、1991、『ミュージカル 李香蘭』(作曲: 三木たかし)劇団四季。
荒俣宏、2000、『NHK人間講座 パリ・奇想の20世紀』日本放送出版協会。
市川崑(監督)、1961、『黒い十人の女』(脚本: 和田夏十)大映。
井上雄彦、1991-6、『SLAMDUNK』(全31巻)集英社。
井上雄彦、1998-、『VAGABOND』(現在18巻、刊行中)講談社。
(「いまなぜ宮本武蔵か」)、2000、「マンガ『バガボンド』600万部メガヒット いまなぜ宮本武蔵か」
■■『週刊朝日』朝日新聞社、105(16)[4月7日号]: 42-4。
内田樹、2011、「コピペはダメだよ、について」『内田樹の研究室』2011年1月9日
■■(2022年6月3日取得, http://blog.tatsuru.com/2011/01/09_1554.html)。
神山重彦、2021、「のぞき見」『物語要素事典』
■■(2022年6月3日取得, https://www.lib.agu.ac.jp/yousojiten/)。
樹林ゆう子、1999、「ブックオフ 素人商法が生んだ成長」『AERA』朝日出版社、12(37)
■■[9月13日号]: 26-7。
ポール・ドゥ・ゲイほか著、暮沢剛巳訳、2000、『実践カルチュラル・スタディーズ——ソニー・
■■ウォークマンの戦略』大修館書店(原著1997)。
河野真太郎、2021、「笑うべきか泣くべきか、それが問題だ 土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度
■■について』」『NHK_PR』NHK、2021年5月22日(2022年6月3日取得, https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/
■■post/original.html?i=29226)。
瀬尾光世(脚本・演出)、1945、『桃太郎 海の神兵』(音楽: 古関裕而)松竹動画研究所(松竹
■■ホームビデオ、VHS)。
高山宏、「道化」『コトバンク』[日本大百科全書](2022年6月3日取得)。
戸田奈津子(字幕翻訳)、1998、『恋におちたシェイクスピア』(監督: ジョン・マッデン)
■■Miramax Film Corp. and Universal Studios(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、
■■DVD)。
中野美代子、1997、「漢字の神話学——文字空間としての」柳瀬尚紀編『日本の名随筆 別巻74
■■辞書』作品社、94-104(原著 1986)。
(「2000年代」)、2018、「2000年代のセールスランキングトップは? 『遙か』『コルダ』に『ときメモGS』――
■■乙女ゲームの歴史をNo.1とOnly Oneでプレイバック【乙女ゲームLabo】」『ビーズログ.com』
■■KADOKAWA Game Linkage、2018年4月23日(2022年6月3日取得, https://www.bs-log.com/
■■20180423_1282020/)。
野田昌宏(出演)、1998、「日本SFの黎明期」『NHK人間大学 宇宙を空想してきた人々』NHK教育
■■テレビ、1998年9月10日。
野谷文昭(講義)、2019、「第01回 スペイン」『ヨーロッパ文学の読み方―近代篇』放送大学、2019年度開講
■■(2022年6月3日取得, https://v.ouj.ac.jp/view/ouj/#/navi/player?co=10523
■■&ct=V&ca=1220)。
花田達朗・吉見俊哉・コリン・スパークス編、1999、『カルチュラル・スタディーズとの対話』
■■新曜社。
原民喜、1995、『ガリバー旅行記』講談社[文芸文庫](原著 1951)。
ビーチ・ボーイズ、1966、「駄目な僕」(作詞: トニー・エイシャー、作曲: ブライアン・ウィルソン)
■■『ペット・サウンズ』東芝EMI(CD)。
平田オリザ、1998、『演劇入門』講談社[現代新書]。
ファットボーイ・スリム、1998、「ギャングスター・トリッピング」『ロングウェイ・ベイビー!!』
■■ソニー・ミュージックエンタテインメント(CD)。
ピエール・ブルデュー著、石井洋二郎訳、1990、『ディスタンクシオンⅠ』藤原書店(原著1979)。
フジ子・ヘミング(ピアノ演奏)、2000、「月の光」(ドビュッシー作曲)『憂愁のノクターン』
■■ビクター エンタテインメント(CD)。
村上信明・松本正・星野渉、1999、「街の書店はオンライン書店と共闘せよ」『季刊・本とコン
■■ピュータ』トランスアート、10[1999年秋号]: 151-61。
村上龍、1997、『ラブ&ポップ ——トパーズ II 』幻冬舎[文庫](原著 1996)。
山田登世子、2000、『ブランドの世紀』マガジンハウス。
吉見俊哉、1994、『メディア時代の文化社会学』新曜社。
————、1995、『「声」の資本主義——電話・ラジオ・蓄音機の社会史』講談社。
————、1996、「社会学の25人(6)吉見俊哉」(インタビュー記事)『AERA Mook 社会学が
■■わかる。』朝日新聞社、20-1。
————・水越伸、1997、『メディア論』放送大学教育振興会。
笠智衆(主演)、1953、『東京物語』(監督: 小津安二郎) 松竹大船(松竹ホームビデオ、VHS)。
レディー・ガガ、2011、「ボーン・ディス・ウェイ」『ボーン・ディス・ウェイ』ユニバーサル・
■■ミュージック(音楽配信)。
フランク・レントリッキア、トマス・マクローリン編、大橋洋一ほか訳、1994、『現代批評理論——
■■22の基本概念』平凡社(原著 1990)。
イアン・ワット著、藤田永祐訳、1999、『小説の勃興』南雲堂(原著 1957)。
Broadbent, Jeffrey, 1998, Environmental Politics in Japan: Networks of Power and Protest,
■■New York: Cambridge University Press.
Douglas, Jack ed., 1970, Understanding Everyday Life, Chicago: Aldine.


 3.3 参考資料リストの書式——書籍の場合 [目次に戻る]

 参考資料リストの基本的な形式は、

【著者名、出版年、『タイトル——サブタイトル』出版社名。】である。

 ちなみに、出版年というのは、本の奥付において「第1刷発行」あるいは単に「発行」と書かれている年のことである。もしもその本の奥付に、「1977年3月15日 発行、1999年12月15日 7刷」と書いてあったとすれば、出版年は1977年のほうである。

 文庫や新書の場合も、「講談社学術文庫」「岩波新書」といった書き方ではなく、「講談社」「岩波書店」というように、出版社名だけを書く。ただし、全角の角ガッコ[ ]によって文庫・新書であることを示してもよい。

 ひとつの文献の記載が複数行にわたるときは、2行目以降は全角で2文字分字下げする。

 同一著者の複数の資料を記載するときは、2つめ以降の資料の表示には、氏名の代わりに、————(4倍ダッシュ)を用いる。

 同一著者の文献に、単著のほかに、編書や、その著者がファーストオーサー(最初に名前が挙げられている著者)となった共著や共編書がある場合には、単著、単独の編書、共著、共編書の順にリストアップする。

 同一のカテゴリーに複数の資料がある場合には、出版年の早いものから順に記載する。

 同一著者の同一カテゴリーの同一年度の資料が複数ある場合には、1994a、1994bなどと、出版年の末尾に小文字のアルファベットを順につけて区別する。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

【単著の場合】

平田オリザ、1998、『演劇入門』講談社[現代新書]。

吉見俊哉、1994、『メディア時代の文化社会学』新曜社。
————、1995、『「声」の資本主義——電話・ラジオ・蓄音機の社会史』講談社。

【共著の場合】

吉見俊哉・水越伸、1997、『メディア論』放送大学教育振興会。

【共編書の場合】

花田達朗・吉見俊哉・コリン・スパークス編、1999、『カルチュラル・スタディーズとの対話』
■■新曜社。

【翻訳書の場合】〔当セミナーでは、原著の出版年を(原著 1964)といった形で表すことにする。〕

ポール・ドゥ・ゲイほか著、暮沢剛巳訳、2000、『実践カルチュラル・スタディーズ——ソニー・
■■ウォークマンの戦略』大修館書店(原著1997)。

フランク・レントリッキア、トマス・マクローリン編、大橋洋一ほか訳、1994、『現代批評理論——
■■22の基本概念』平凡社(原著 1990)。

イアン・ワット著、藤田永祐訳、1999、『小説の勃興』南雲堂(原著 1957)。

【文庫本などの元の版の出版年を示したい場合】〔当セミナーでは、元の版の出版年を(原著 1964)といった形で表すことにする。〕

原民喜、1995、『ガリバー旅行記』講談社[文芸文庫](原著 1951)。

村上龍、1997、『ラブ&ポップ ——トパーズ II 』幻冬舎[文庫](原著 1996)。

 上に挙げた例のうち、翻訳書や文庫について原著の出版年を表記する方法は、内田セミナー独自のルールである。この方式であれば、翻訳書や文庫版だけしか入手できなくても、原著がいつ出たのかをはっきりさせることができる。なお、欧文文献の表記法や、原書と翻訳書の書誌情報をともに表記する方式については、『社会学評論スタイルガイド』を参照のこと。

【複数巻の場合(長編マンガなど)】

 基本的な形式は、「著者名、出版開始年-終了年、『タイトル』(巻数)出版社名。」とする。現在も刊行中の場合は、出版開始年の後にハイフンを書き、巻数を書くところに「(現在…巻、刊行中)」と書く。

[例]

井上雄彦、1991-6、『SLAMDUNK』(全31巻)集英社。

井上雄彦、1998-、『VAGABOND』(現在18巻、刊行中)講談社。

 なお、複数巻の著作物からの引用を示す注は、基本的に(著者名 出版年, 引用した巻: 引用ページ)の形式を取るものとするが、文脈からどの著作物を引用しているかが明らかな場合は、(引用した巻: 引用ページ)だけでもよい。

 たとえば、『SLAMDUNK』第14巻の26ページを引用した場合、(井上 1991-6, 14: 26)とするか、文脈からどの作品を引用しているかが明らかな場合、(14: 26)のように示す。


 3.4 参考資料リストの書式——雑誌記事などの場合 [目次に戻る]

 雑誌記事の場合、基本的な書式は、

【著者名、出版年、「論文のタイトル」『雑誌名』発行元、巻(号): 論文の初ページ-終ページ。】

である。

 巻の番号がなく号番号だけの雑誌であれば、最後の部分が【号: 論文の初ページ-終ページ。】となる。週刊誌などで、巻数・号数よりも「9月13日号」といった表記の方が分かりやすい場合、当セミナーでは、号数の後に半角角ガッコ[ ]を挿入し、そこに[9月13日号]といった情報を記載してもよいことにする。

 論文集やアンソロジーの中の1編だけを参照した場合についても、ほぼ同様の書式を使えばよい。すなわち、

【著者名、出版年、「論文のタイトル」本の編者名『本のタイトル』出版社名、論文の初ページ-終ページ。】となる。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

樹林ゆう子、1999、「ブックオフ 素人商法が生んだ成長」『AERA』朝日出版社、12(37)
■■[9月13日号]: 26-7。

村上信明・松本正・星野渉、1999、「街の書店はオンライン書店と共闘せよ」『季刊・本とコン
■■ピュータ』トランスアート、10[1999年秋号]: 151-61。

中野美代子、1997、「漢字の神話学——文字空間としての」柳瀬尚紀編『日本の名随筆 別巻74
■■辞書』作品社、94-104(原著 1986)。

 商業雑誌の無署名記事を引用する場合、二つの方法が考えられる。

 たとえば、雑誌『週刊朝日』に載った無署名記事「マンガ『バガボンド』600万部メガヒット いまなぜ宮本武蔵か」から引用したい場合、一度だけの引用であれば、引用文の後にカッコ書きで(「マンガ『バガボンド』600万部メガヒット いまなぜ宮本武蔵か」『週刊朝日』朝日新聞社、105(16)[2000年4月7日号]: 44)のように書誌情報と引用したページ番号を表記してもかまわない。

 しかし上のような長い文献注がわずらわしく感じられる場合や、同じ無署名記事から何度も引用したい場合は、その記事の略称を適当に考えて(この場合ならたとえば「いまなぜ宮本武蔵か」)、それを他の文献の著者名と同等に扱う。この場合、本文中の文献注には(「いまなぜ宮本武蔵か」44)のように書けばよく、参考資料リストのほうに次のような書式で書誌情報を書く。この例では略称が「い」で始まっているので、参考資料リストの中ではアイウエオ順の「い」の位置に置くこと。
 
[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

(「いまなぜ宮本武蔵か」)、2000、「マンガ『バガボンド』600万部メガヒット いまなぜ宮本武蔵か」『週刊朝日』
■■朝日新聞社、105(16)[4月7日号]: 42-4。


 3.5 参考資料リストの書式——インターネット上の情報(一般的なもの) [目次に戻る]

 インターネット上のウェブページやブログ記事を参考資料として挙げる場合、基本的な書式は、

【著者名、公表年または最新の更新年、「当該情報のタイトル」『オンライン雑誌などのタイトル』発行元の団体名、公表または更新された年月日(あなたが情報を取得した年月日, URL)。】

である。一般の出版物の「発行元」に当たる団体がはっきり分かる場合は、ウェブサイト名の後にそれも表記することが望ましいが、そういう場合は多くないかもしれない。また上の書式の「あなたが情報を取得した年月日」は、「…年…月…日取得」という形で記載する。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

河野真太郎、2021、「笑うべきか泣くべきか、それが問題だ 土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度
■■について』」『NHK_PR』NHK、2021年5月22日(2022年6月3日取得, https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/
■■post/original.html?i=29226)。

内田樹、2011、「コピペはダメだよ、について」『内田樹の研究室』2011年1月9日
■■(2022年6月3日取得, http://blog.tatsuru.com/2011/01/09_1554.html)。

 著者不明のウェブページを引用する場合は、無署名の雑誌記事の例に準じて、ページ名に適当な略称を付け、それを他の資料の著者名と同等に扱って参考資料リストに載せる。引用したウェブページの公表年も最新の更新年も不明であれば、年号は省略せざるをえない。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

(「2000年代」)、2018、「2000年代のセールスランキングトップは? 『遙か』『コルダ』に『ときメモGS』――
■■乙女ゲームの歴史をNo.1とOnly Oneでプレイバック【乙女ゲームLabo】」『ビーズログ.com』
■■KADOKAWA Game Linkage、2018年4月23日(2022年6月3日取得, https://www.bs-log.com/
■■20180423_1282020/)。

 e-ラーニングによる講義の内容がインターネットで公開されている場合、基本的な書式は、

【講義担当者(講義)、開講年、「当該授業のタイトル」『講義シリーズのタイトル』講義の主催者または会場、講義の開講年月日または年度(あなたが情報を取得した年月日, その講義内容を公開しているURL)。】

である。

[例](字下げのスペースは「■」で表した。)

野谷文昭(講義)、2019、「第01回 スペイン」『ヨーロッパ文学の読み方―近代篇』放送大学、2019年度開講
■■(2022年6月3日取得, https://v.ouj.ac.jp/view/ouj/#/navi/player?co=10523
■■&ct=V&ca=1220)。

 3.6 参考資料リストの書式——インターネット上の辞典・事典 [目次に戻る]

 一般に、単語の基本的な意味を調べるために国語辞典や外国語の辞典を引いた場合、それらの辞典をいちいち本文中で注記したり「参考資料リスト」に含める必要はない。

[例](悪い例。ここまでやる必要はない。)

「satire」という英語の単語は「風刺」を意味する(「satire」『Weblio辞書』[研究社 新英和中辞典])。「風刺」とは社会や人物の欠点を遠回しに批判することである(「風刺」『コトバンク』[デジタル大辞泉])。

 ただし、辞典の項目の文面をそのまま引用したり、ある事柄について辞典にどう記載されているかを重視して参照・引用した場合は、本文中で注記する必要がある。

[例]

「文化」と「文明」という二つの言葉の意味の違いについて、ある国語辞典にはこう書いてある。「『文化』と『文明』の使い分けは、『文化』が各時代にわたって広範囲で、精神的所産を重視しているのに対し、『文明』は時代・地域とも限定され、経済・技術の進歩に重きを置くというのが一応の目安である」(「文化」『コトバンク』[デジタル大辞泉])。

 無料で使える統合型オンライン辞書サイトである『コトバンク』(https://kotobank.jp/)や『Weblio辞書』(https://www.weblio.jp)などの項目を参照・引用する場合、当セミナーでは原則として、本文中で(「女性誌」『Weblio辞書』[デジタル大辞泉])とか(「出版」『コトバンク』[日本大百科全書])というように、(「項目名」『統合型オンライン辞書サイト名』[参照した辞典・事典の名前])の形式で出典を注記するだけでよく、それらの辞典・事典の項目を「参考資料リスト」に載せる必要はない。

[例]

日本初の本格的な女性誌は、1884(明治17)年に創刊された『女学新誌』である(「女性誌」『コトバンク』[日本大百科全書])。

サイバーカスケードとは、インターネット上の世論形成における現象の一つであり、特定のサイトや掲示板などでの意見交換において「ある事柄への賛否いずれかの論が急激に多数を占め、先鋭化する傾向をもつ」現象を指す(「サイバーカスケード」『コトバンク』[デジタル大辞泉])。

 ただし、項目の著者独自の見解を重視して参照・引用した場合は、一般のインターネット上の情報と同じように扱い、本文中で引用注を付けるとともに「参考資料リスト」に載せるべきである。その場合、「参考資料リスト」には〈著者名、「項目名」『統合型オンライン辞書サイト名』[参照した辞典・事典の名前](取得日)。〉の形式で記載すればよく、項目独自の煩雑なURLを「https://kotobank.jp/word/%E9%81%93%E5%8C%96-103426」のように記載する必要はない。使用した統合型オンライン辞書サイトと項目名が分かれば、容易に記事そのものにたどり着けるからである。

[例]

【本文中での表記】

「道化(どうけ)」とは他者を笑わせることで生計を立てる人々を指すが、高山宏は社会の中で「道化」が果たす役割についてこう述べている。「〔道化とは〕硬直しつつある共同体が自らを活性化するために要請する、笑いを方法とした安全弁なのだということができるし、それで社会が賦活(ふかつ)するとすれば、道化には古代の民俗的豊穣儀礼にまで淵源(えんげん)するとおぼしい活性化機能があるのだということになる」(高山)。

【参考資料リストでの表記】

高山宏、「道化」『コトバンク』[日本大百科全書](2022年6月3日取得)。

 なお、有料の統合型オンライン辞書サイトである『JapanKnowledge』(https://japanknowledge.com/)などを用いた場合も、『コトバンク』などの場合と同様に、(「項目名」『統合型オンライン辞書サイト名』[参照した辞典・事典の名前])の形式で出典を注記すればよい。

 『ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)の項目については、基本的に上記の辞典・事典と同様の書式を用いればよいが、『ウィキペディア』においては頻繁に記事が書き換えられるため、あなたが情報を取得した年月日を記載するのが望ましい。したがって本文中での注記は(「推理小説」『ウィキペディア』2009年10月29日取得)といった形になる。
 なお、各分野の専門家が項目を執筆している『日本大百科全書』(小学館)や『世界大百科事典』(平凡社)などの百科事典に比べると、誰もが記事を書くことができ、意図的に誤った情報を書き込むことさえできる『ウィキペディア』は、内容の信憑性がはるかに低い。そのため、自分の主張が学術的に正当であることの根拠として『ウィキペディア』を参照・引用してはならない。卒業論文で『ウィキペディア』を用いることが許されるのは、匿名筆者たちの独特な見解を紹介する場合、および他の参考資料が見つからない特殊な分野(従来の学術研究の対象になっていないポップ・カルチャーなど)に関する項目を、信憑性の低さを十分理解したうえで参照・引用する場合に限られる。詳しくはセミナーの授業中に配布した資料「引用の作法について」(https://www1.gifu-u.ac.jp/~masaru/seminar/in-yo.html)を参照。

 上で取り上げたような著名なサイト以外の、専門的な事典サイトの項目については、一般のインターネット上の情報と同じように扱い、本文中で引用注を付けるとともに「参考資料リスト」に載せる。

[例]

【本文中での表記】

神山重彦の『物語要素事典』は、夫が妻をのぞき見た結果として正体を知られた妻が去る物語の実例として、 『古事記』におけるトヨタマビメの挿話、日本の昔話『鶴女房』、およびクードレットの『メリュジーヌ物語』を挙げている(神山 2021)。

【参考資料リストでの表記】

神山重彦、2021、「のぞき見」『物語要素事典』
■■(2022年6月3日取得, https://www.lib.agu.ac.jp/yousojiten/)。

 ちなみに、インターネット版ではない印刷媒体(紙の本)の辞典・事典についての扱いは、「3.4 参考資料リストの書式——雑誌記事などの場合」にある、論文集やアンソロジーの中の1編だけを用いた例に準じる。


 3.7 参考資料リストの書式——文字情報以外の資料 [目次に戻る]

 書籍、雑誌、ウェブサイトといった文字情報については、「参考資料リスト」に載せる際の書式がすでにほぼ完成されているが、映画、音楽、テレビ番組など、文字情報以外の資料を「参考資料リスト」に載せる場合については、決まった形式がなく、『社会学評論スタイルガイド』でもまったく触れられていない。

 もちろん、一般の書籍や雑誌記事の中では、たとえば「市川崑の『黒い十人の女』(1961、大映)においては、……である」というように、必要最小限の情報を本文中で紹介するだけでかまわない場合が多い。しかし、3.1で述べた「本文中で言及もしくは引用した資料は、漏れのないようにすべてを参考資料リストに記載しなければならない」という原則に照らして考えれば、当セミナーの卒論ではこのような場合も、本文には「市川崑の『黒い十人の女』においては、……である(市川 1961)。」と書いたうえで、「参考資料リスト」と連動させるのが筋であろう。

 文字情報以外の資料は複数の人物の共同作業で作られていることが多く、誰を参照したいか、どういう情報を強調したいかによって書式も変わってくる。下に挙げた例を参考にして、各自で自分の論文に合った方式を考案していただきたい。


(1)映画

【監督または参照したい人物、公開年、『映画タイトル』(補足情報)製作会社(参照したビデオ等の発売元、メディアの種類)。】といった形式が考えられる。

[例]

市川崑(監督)、1961、『黒い十人の女』(脚本: 和田夏十)大映。

瀬尾光世(脚本・演出)、1945、『桃太郎 海の神兵』(音楽: 古関裕而)松竹動画研究所(松竹
■■ホームビデオ、VHS)。

戸田奈津子(字幕翻訳)、1998a、『恋におちたシェイクスピア』(監督: ジョン・マッデン)
■■Miramax Film Corp. and Universal Studios(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、
■■DVD)。

笠智衆(主演)、1953、『東京物語』(監督: 小津安二郎) 松竹大船(松竹ホームビデオ、VHS)。


(2)音楽

【アーティスト名、発表年、「曲名」(補足情報)『アルバム名』参照した盤の発売元(メディアの種類)。】といった形式が考えられる。

[例]

ビーチ・ボーイズ、1966、「駄目な僕」(作詞: トニー・エイシャー、作曲: ブライアン・ウィルソン)
■■『ペット・サウンズ』東芝EMI(CD)。

ファットボーイ・スリム、1998、「ギャングスター・トリッピング」『ロングウェイ・ベイビー!!』
■■ソニー・ミュージックエンタテインメント(CD)。

フジ子・ヘミング(ピアノ演奏)、2000、「月の光」(ドビュッシー作曲)『憂愁のノクターン』
■■ビクター エンタテインメント(CD)。


(3)演劇などの公演

 作品そのものを参照したいのであれば、たとえば

【台本作者、初演の年、『タイトル』(補足情報)上演団体名。】という形式が考えられるし、特定の公演を参照したいのであれば、

【上演団体名、公演の年、『タイトル』(補足情報)地名: 会場名、日付。】といった形式が考えられる。

[例]

浅利慶太(台本・演出)、1991、『ミュージカル 李香蘭』(作曲: 三木たかし)劇団四季。

劇団四季、2000、『ミュージカル 李香蘭』(台本・演出: 浅利慶太)岐阜: 長良川国際会議場、
■■2000年8月2日。


(4)テレビ番組

【参照したい人物または団体、放送の年、「参照した回のタイトル」『番組のタイトル』(補足情報)放送局、放送された日付。】といった形式が考えられる。連続ドラマなど一定の期間にわたって放送される番組については、放送の年を明記し、放送された日付は省けばよい。

[例]

野田昌宏(出演)、1998、「日本SFの黎明期」『NHK人間大学 宇宙を空想してきた人々』NHK教育
■■テレビ、1998年9月10日。

渡辺あや(脚本)、2011-2、『カーネーション』NHK総合テレビ。

 本文中で連続ドラマなどの特定の回に言及する場合は、例えばすぐ上の例のドラマの第55回に言及する場合、(渡辺 2011-2, 55)のような文献注をつける。論文の中でシリーズの特定の回にしか言及していない場合や、テレビ番組をインターネット上の有料動画配信サービスなどを経由して視聴した場合の参考資料リストでの表記法については、以下の例を参照。

渡辺あや(脚本)、2011、『カーネーション』第55回、NHK総合テレビ、『NHKオンデマンド』2015年
■■10月28日。


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(c)内田勝(uchida.masaru.m7@f.gifu-u.ac.jp) 更新日: 2022-6-5

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