レポートの書き方マニュアル
2023年10月2日 内田勝
レポートや発表資料を作る手順についての、ごくおおざっぱな説明です。
[準備編]
(1)とりあえずのテーマについて、15の質問を考える。
たとえば「インスタントラーメン」について考え始めるなら、こんな感じで、その場で思い付いた質問を15個くらい書き出してみます。
1. インスタントラーメンは、いつ、どこで、誰によって、どのように発明されたのか?
2. 関東と関西でスープの味が違うというのは本当か?
3. 地域ごとにスープの味が違うとしたら、そこにはどんな食文化の違いが反映されているのか?
4. 他の麺類やお店のラーメンとは違う、インスタントラーメン独自の魅力とは何か?
5. 袋麺とカップ麺で、購買層にはどんな差があるのか?
6. ラーメン店での流行の味は、どのようにインスタントラーメンに反映されているのか?
7. インスタントラーメンを習慣的に食べることにはどのような批判があるか?
8. インスタントラーメンの歴史上代表的なCMは、それぞれどのような価値観を伝えているのか?
9. アメリカでのハンバーガーは、日本のインスタントラーメンと同じような役割を果たしているのか?
10. インスタントラーメンは、諸外国ではどのように受容されているのか?
11. イスラム圏でインスタントラーメンを売るためにはどのような工夫がされているのか?
12. インスタントラーメンの歴史上、画期的な変化があったのはいつといつか?
13. 発売されたもののすぐに消えてしまったインスタントラーメンにはどんなものがあるか? 消えた理由は何か?
14. インスタントラーメンが重要な役割を果たす物語作品(ドラマ・漫画など)は存在するのか?
15. インスタントラーメンは、何の象徴として用いられるか?
この時点では一貫性は必要ないので、思い付いたことを思い付いた順序に書き出してください。質問の数は最低限15個くらい必要ですが、もっといろいろ出てきたときは、出せるだけ出してください。
質問の中にはすぐに答えられるものや、ちょっと調べれば答が出るものもあるし、いくつか先行研究に当たらないと答えられないもの、はっきりした答が出ないものもありそうです。この時点では答を出す必要はないので、次の手順に進みます。手順を進める過程でどうでもよくなった質問は捨て去ればいいし、新たに生まれた質問は付け加えればいいです。
(2)先行研究を調べて文章の断片を集める。
先行研究をどうやって集めるかについては、このサイトの「情報の集めかたについて」を参照。集めた資料を読みながら、気になった文章、使えそうな文章は、その都度どこかに書き写したりコピペしたりしておき、少しずつ蓄積していってください。どの文献の何ページから書き写したか(ウェブページならURL[ページのアドレス])を記録しておくのを忘れずに。文章の断片を集めた文書の具体例については、このサイトの「ワープロを使った『カード取り』の実例」を参照。
(3)自分の思いつきを書き留めて蓄積する。
さっきの15個の質問について考えたり、先行研究を読んだりしている間に思いついたことを、上限140字程度の短い文章でどこかにメモして、そうしたメモを少しずつ蓄積していってください。自分の書いたメモを読み返していて新たに思いついたことがあれば、それもメモするわけです。
[実践編]
(1)仮の目次(アウトライン)を作る。
自分が本の著者になったつもりで、さまざまな新書の目次などを参考にして、論理的に筋の通った目次を作ってみましょう。卒論であれば3つくらいの章の下に小見出しをいくつか並べていくわけですが、レポートや発表資料の場合なら、どういう問いを立て、それらにどう答えていくか、そしてどういう順番で問いを並べ、最後にどうまとめるかを考えればいいです。
アウトラインを作るうえでは、Microsoft Wordの「アウトラインモード」が役立ちます。ただしMicrosoft Wordは初期設定のままではアウトライン作成ソフトとして使いにくいので、アウトライン作成用に設定し直したWord文書をここに置いておきます。ダウンロードしたら「アウトライン表示」にして、実際にアウトラインを作ってみてください。
アウトラインを作るうえで大事なのは、レポートや発表では必ず何らかの主張をする必要があることです。これについては同じサイトの「卒論を書くとは『調べてまとめる』ことではない!」を参照。主張自体は他人の借り物でも構わないことに注意。
(2)どこにどの引用が使えるかを考える。
これまで集めた他人の言葉や自分の言葉をあれこれ眺めて、どの場面でどの言葉が使えるかを考え、実際にそれらの言葉を原稿に並べていきます。この過程で目次(アウトライン)自体を変える必要が出たら変えていけばいいし、新たな質問と答が生まれた場合は、それらをどんどん取り込んでください。何度も読み返しながら少しずつ書き足したり削ったりして直していき、あなた自身がまあこれでいいだろうと思ったところで、でき上がりです。
[準備編の補足]
「問い」を立てるために生成系AIを使ってみるのもいいでしょう。たとえばChatGPT(https://chat.openai.com)は、以下のような問いを立ててくれます。
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User
私は大学で文化研究のゼミに所属しており、卒論でインスタントラーメンをテーマにしようと思っています。私が卒論で答えるべき「問い」を、15個ほど挙げてください。
ChatGPT
インスタントラーメンをテーマにした卒論の研究問題(問い)を考えてみましょう。以下は、様々な視点からの問いのリストです。これらの問いを参考に、独自の研究問題を構築できるかもしれません。
1. インスタントラーメンの歴史と発展について調査し、その人気の背後にある要因は何か?
2. インスタントラーメンが異なる文化でどのように受け入れられ、適応されてきたか?
3. インスタントラーメンの栄養価と健康への影響についての研究はどのように進展してきたか?
4. インスタントラーメンの製造プロセスと技術革新に関する研究を行い、持続可能性への影響を評価することは可能か?
5. インスタントラーメンのパッケージデザインが消費者の購買意欲に与える影響は何か?
6. インスタントラーメンの消費行動に関する消費者調査を行い、好みや選択基準についての洞察を得ることはできるか?
7. インスタントラーメンに関連する文化的なイベントや祝祭が存在する場合、それらがどのように根付いているか調査することはできるか?
8. インスタントラーメンの多様性(味、スタイル、ブランド)が消費者の選択に与える影響を分析することはできるか?
9. インスタントラーメン産業における競争力と市場動向についての調査を行い、今後の展望を予測することはできるか?
10. インスタントラーメンの食文化と、これが食事習慣に与える影響を考察することはできるか?
11. インスタントラーメンに関する広告やマーケティング戦略が消費者に与える影響を調査し、ブランド忠誠度を分析することはできるか?
12. インスタントラーメンが食品廃棄物に与える影響を研究し、持続可能な廃棄物管理策を提案できるか?
13. インスタントラーメンと健康意識の関連性について、消費者の意識や態度を分析することはできるか?
14. インスタントラーメンが異なる世代や文化間で持つ象徴的な価値について研究し、社会的な意味を探求できるか?
15. インスタントラーメン産業の未来に向けて、新たな商品開発や消費者ニーズの変化に関する戦略的提言を考案することはできるか?
これらの問いから、インスタントラーメンに関する卒論の興味深い研究問題を選択し、深く掘り下げて調査・分析することができます。
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(c)内田勝(uchida.masaru.m7@f.gifu-u.ac.jp) 更新日: 2023-10-2
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