情報の集めかたについて

2024年4月8日 内田勝(岐阜大学地域科学部


内田セミナーで研究するテーマについて、情報を集める方法をいくつか紹介してみます。

もちろん、インターネットで検索する、というのはもっとも手っ取り早い方法です。誰でも執筆できる無料百科事典「ウィキペディア」<https://ja.wikipedia.org/>の記事が充実していたりすると、その後の情報集めがずいぶん楽になります。調べたい単語を Yahoo! Japan の「リアルタイム検索」<https://search.yahoo.co.jp/realtime> やツイッターで定期的に検索すると、その検索語について今誰がどんなことをつぶやいているかが分かり、つぶやきからより詳しい情報へのリンクが張られていることも多いです。また、自分の知りたいテーマについて、すでにマニアックなウェブサイトを作っている人物が存在した、というのもよくあることです。参考文献リストまで載せているサイトもあったりします。(ただしこうした個人サイトやウィキペディアの文章には、正確な事実が書いてあるとは限りません。そのことを分かった上で慎重に利用してください。)

運よくそういうサイトにめぐりあうことができればいいのですが、そうならなかった場合、とりあえず、そのテーマについてどんな本が書かれているかを調べてみましょう。一番てっとり早く教えてくれるのは、図書館蔵書検索サイト「カーリル」<https://calil.jp/>です。ここで任意の言葉を検索すれば、そのテーマについて書かれた本が表紙画像とともに続々と表示されます。あなたの近所の図書館に蔵書があるかどうかも分かります。ただしこのサイト、諸般の事情でアマゾンのデータベースに載っていない本は検索結果に現われないので注意が必要です。

そのアマゾン<https://www.amazon.co.jp/>などのオンライン書店を書籍データベースとして使えば、手軽に情報が手に入ります。それぞれの本の簡単な内容紹介まで載っていることが多いので助かります。一冊検索すると関連書が表示されたり、似たテーマの書籍を集めたリストが表示されたりもします。

新書検索専門サイト「新書マップ」<https://shinshomap.info/>は、「連想検索」を駆使してあなたに必要な新書を紹介してくれるたいへん便利なサイトです。気になった新書の書籍情報で「関連書籍を探す」というリンクをクリックすると、さらに新書以外の書籍にも連想検索の幅が広がっていきます。また、同じサイト内にある「書棚で見るテーマ一覧」<https://shinshomap.info/genre/>は、テーマ別に並んだ書棚をクリックするとそのジャンルの新書がずらりと表れ、それらの本の背表紙をクリックすればさらに関連書の紹介につながっていくという優れもの。何について調べればいいか迷っているセミナー新入生は、このページでいろんな本の背表紙をクリックしているうちに、読んでみたい本にめぐりあえるはずです。

試しにスマホでも見られる「書棚で見るテーマ一覧」で、「ファッション」「美容」「恋愛論、恋愛術」「日本の食文化」「食の文化史」「お茶を楽しむ」「ラーメン」「音楽」「歌と日本人」「ロック」「エレキギター」「笑いと文化」「落語」「大衆芸能」「ミュージカル」「演劇」「能と狂言」「映画論」「ハリウッド」「ディズニー」「漫画(マンガ)」「アニメーション」「オタク文化」「(アイドルなどの)エンタテインメントビジネス」「スポーツを考える」「古武術」「テレビゲーム」「テレビの見方」「ネットワーク社会」「情報とのつきあい方」「編集の仕事」「文化としての広告」「消費」「ヒット商品」「店づくり」「まちづくり、地域振興」「地方・地域からの発信」「リゾート」「旅行術」「いろいろな日本史」「いろいろな世界史」「芸術、美術の雑学」「絵画の見方、絵画論」「博物館と博物学」「妖怪」「魔女」「ファンタジーを読む」「ミステリ(推理小説)」「小説作法」「読書」「教養」「学歴」「若者の生態・心理」「現代の女性」「男性論」「孤独」「家族の問題」「(いじめなどの)子どもの危機」「庶民の太平洋戦争」「女性と太平洋戦争」「グローバリゼーション」「格差社会」「外国人労働者」「日本の雇用」「就職、転職」「プレゼンテーション術」「インターネット検索」「論文・レポートの書き方」といったテーマに、どんな新書が並んでいるか見てみましょう。

国立情報学研究所の「CiNii Research(サイニイ・リサーチ)」<https://cir.nii.ac.jp/>で検索すれば、そのテーマでどんな書籍や雑誌記事が書かれているかが分かります。試しに「まちづくり」「アニメツーリズム」「声優」「eスポーツ」「漫才」「ヒップホップ」といったフレーズを検索してみてください。ただしCiNii(サイニイ)で検索できる雑誌は学術誌や総合雑誌などが中心なので、『週刊文春』の記事は探せますが、ファッション雑誌の記事は探せません。ファッション雑誌や音楽雑誌などの記事を探すには、各雑誌の公式サイトで検索するのがいいでしょう。

ある分野の本や雑誌記事を一つ見つければ、その中で言及されている文献、引用されている文献、「参考文献」や「注」に挙げてある文献、同じ著者が書いた文献……という風に、次に読むべき文献は芋づる式に分かってきます。

なお市販されている雑誌の記事については、CiNiiでは目次が検索できるだけで、記事そのものを読むことができません。地元の図書館などであらためて雑誌のバックナンバーを探す手間が必要になります。地元の図書館では入手困難な雑誌記事については、私(内田)が岐阜大学図書館を通じて学外の図書館からコピーを取り寄せることも可能なので、お気軽に申し出てください。

一方CiNiiで見つかる記事の中でも、大学が発行する学術雑誌の論文には、PDF形式で無料ダウンロードしてパソコンやスマホで読めるものが多いです。あなたが選んだテーマの先行研究が見つかる可能性が高いので、ぜひ活用してください。

新聞については、岐阜大学のキャンパス内にあるパソコンから、岐阜大学図書館を通じて過去の記事を閲覧できる場合もあります。岐阜大学図書館のサイトにある「オンライン文献検索」<https://www.lib.gifu-u.ac.jp/academic/online_search.html>というページ(学内専用)に行き、下の方にある「聞蔵(きくぞう)II ビジュアル」(1945年以降の朝日新聞記事)【2018年4月、岐阜大学図書館の予算逼迫のため契約中止】、「中日新聞・東京新聞記事検索」(1987年以降の記事)、「日経テレコン21」(1975年以降の日経新聞・日経産業新聞・日経MJ・日経金融新聞記事)【2018年4月、岐阜大学図書館の予算逼迫のため契約中止】それぞれへのリンクをたどってください。

各種の法令や統計、およびスポーツ関連のデータなどについては、毎日新聞校閲センターが作成した調べものリンク集が非常に役立ちます。

戦前・戦中の新聞記事については、神戸大学附属図書館の新聞記事文庫が便利です。これは神戸大学経済経営研究所が蓄積してきた新聞記事の切抜帳をデータベース化したもので、明治末から昭和18(1943)年までの新聞記事を検索して読むことができます。このデータベースで試しに、「宣伝」「宣撫」「百貨店」「デパート」「商店街」「活動写真」「映画」「テレヴィ」「放送」「漫画」「ジャズ」「音曲」「少女歌劇」「漫才」「探偵小説」「洋裁」「オリンピック」「ライスカレー」「空襲」「防空」「荒鷲」「配給切符」「岐阜」といった言葉を検索してみてください。このサイトを国立国会図書館デジタルコレクション国立公文書館・アジア歴史資料センターといったデータベースと併用することで、戦前・戦中の文化について深く調べることができます。

図書館や大きめの書店に行って、あなたの研究したいテーマに関連しそうな書籍および雑誌を片っぱしから立ち読みしまくる、というのもよい手です。学術書は異様に値段が高いものが多いので、書店では立ち読みだけしてあとで図書館で借りるのがおすすめです。自分で買うなら、新書と文庫本を狙いましょう。まずは岐阜大学生協や地元の書店(岐阜大学の近所ならマーサ21の3階にある丸善岐阜店)から始めればよいのですが、名古屋まで足をのばせば、とにかく大きいのがとりえの有名書店、つまりゲートタワーモールの三省堂や栄の丸善(名古屋本店)といった店のほかにも、人文・社会関係の本なら圧倒的に強いジュンク堂書店(名古屋店[名古屋駅のそば]名古屋栄店があります)、アンダーグラウンド系に特化した特殊書店Bibliomania、意外な本が見つかる千種のちくさ正文館(残念ながら2023年7月で閉店)や今池のウニタ書店、ツイッターでの注目本入荷情報が面白い七五書店(残念ながら2023年1月で閉店)、各地のショッピングモールでもお馴染みの「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガードなど、個性的な本屋にも出会えます。

さて、どんな文献を読めばよいかが分かっても、肝心の本は高くて買えなかったり、すでに絶版になっていたりするものです。もちろん図書館を使えばよいわけですが、岐阜大学図書館<https://opac.lib.gifu-u.ac.jp/opc/>の蔵書検索で調べても、なかなか内田セミナーに役立ちそうな本は見つからないのが実情です。(とはいえときどき思わぬ掘り出し物が発見されるので、あきらめずに一応チェックしてみましょう。教員研究室が所蔵する本も、なんらかの手続きを踏めば借りられるのではないかと思います。そのあたりは図書館の窓口で問い合わせてください。)

岐阜大学図書館よりもあなたが住んでいる地域の図書館(市立図書館など)のほうが人文書が充実していることが多いですが、内田セミナー向けの本が多そうなのは、近場ではやはり岐阜県図書館<https://www.library.pref.gifu.lg.jp/>です。このサイトにはもうひとつ「岐阜県内図書館横断検索」<https://ufinity07.jp.fujitsu.com/gifu/?page_id=51>というページがあり、岐阜県図書館・岐阜市立図書館・大垣市立図書館など、ウェブサイト上で蔵書検索のできる県内市町村立図書館の所蔵を一括検索できます。なおJR岐阜駅経由で通学する人なら、駅と直結した岐阜市立図書館分館もおすすめ。

図書館の本はジャンル別に分類されて並んでおり、どういうジャンルの本であるかは本の背表紙に貼ってあるラベルの番号で分かります。これをNDC分類記号といいます。あなたが興味を持った本とNDC分類記号が同じ本や近い本は、同じジャンルの本ですから、内容的に関連していることが多いです。

たとえばあなたが「面白い脚本の書き方」に興味があって、図書館で『シナリオ・センター式物語のつくり方 : プロ作家・脚本家たちが使っている』という本を読んでみたとします。背表紙を見ると、この本のNDC分類記号は 901.27(文学理論・作法 - シナリオ. 放送ドラマ)です。ということは、同じ 901.27 の本を探せば、同じジャンルの本がいくつも見つかるわけです。NDC分類記号が同じ本や近い本は図書館でも同じ棚に並んでいるので、実際に図書館で確かめればいいのですが、ネットの蔵書検索でも同じことができます。試しに岐阜大学図書館でNDC分類記号 901.27 を検索したり、大学図書館の横断検索ができる CiNii Books(サイニイ・ブックス)でNDC分類記号 901.27 を検索してみてください。

実際の図書館では、脚本の書き方に関する本のすぐ近くに、隣接ジャンルである「面白い小説の書き方」に関する本、すなわちNDC分類記号が 901.3(文学理論・作法 - 小説. 物語)の本が並んでいるはずです。この感覚を疑似体験するために、岐阜大学図書館でNDC分類記号 901.3 を検索したり、CiNii Books(サイニイ・ブックス)でNDC分類記号 901.3 を検索してみてください。

このようにNDC分類記号を使って関連書を検索する方法については、 NDC(日本十進分類法)を使って同一ジャンルの本を調べる方法で、より詳しく説明してあります。

ところで、私(内田)自身の専門は文学研究ですが、内田セミナーで行なわれる研究のうち、特に音楽・ファッション・漫画・お笑い・テレビ番組・食文化・ネット文化などポップカルチャーの研究は「文化の社会学(sociology of culture)」と呼ばれる学問分野に含まれます。この学問分野がどんなものかをざっと知りたければ、佐藤健二・吉見俊哉編『文化の社会学』(有斐閣、2007年)[岐大図書館蔵書情報はここ]や吉見俊哉『現代文化論――新しい人文知とは何か』(有斐閣、2018年)[岐大図書館蔵書情報はここ]といった教科書がおすすめです。この分野でのレポートや卒論の書き方については、渡辺潤・宮入恭平編著『「文化系」学生のレポート・卒論術』(青弓社、2013年) [岐大図書館蔵書情報はここ]や カレン・M・ゴックシクほか『映画で実践! アカデミック・ライティング』(小鳥遊書房、2019年)蔵書情報]が非常に参考になります。井上俊・長谷正人編著『文化社会学入門 テーマとツール』(ミネルヴァ書房、2010年)蔵書情報]、遠藤知巳編『フラット・カルチャ――現代日本の社会学』(せりか書房、2010年)蔵書情報]、小川伸彦・山泰幸編著『現代文化の社会学入門』(ミネルヴァ書房、2007年)蔵書情報]といった本は、内田セミナーで研究可能なテーマとその研究のための文献案内として役立ちます。岐大図書館には南田勝也・辻泉編著『文化社会学の視座』(ミネルヴァ書房、2008年)蔵書情報]、井上俊『文化社会学界隈』(世界思想社、2019年)蔵書情報]、北田暁大・解体研編著『社会にとって趣味とは何か――文化社会学の方法規準』(河出書房新社、2017年)蔵書情報]といった本も入っています。「文化の社会学」の古典的名著を解説した本としては、井上俊・伊藤公雄編『ポピュラー文化』(世界思想社、2009年)蔵書情報]があります。また、「カーリル」などの図書館蔵書検索で「文化の社会学」という言葉を検索してみると、この学問分野でどんな本が書かれているかが分かります。岐阜大学の文化社会学・文化論関連書一覧[NDC分類記号361.5]はここ、CiNii Booksの文化社会学・文化論関連書一覧[NDC分類記号361.5]はここです。

(c)内田勝(uchida.masaru.m7@f.gifu-u.ac.jp) 更新日: 2024-4-8

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