アルバック・ファイ Quantera-SXM |
装置の概要
ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)は固体の5〜50 Aの極表面層の元素およびその結合状態を分析する効果的な方法であり、X線光電子分光法(XPS)とも呼ばれている。この方法は軟X線照射によって放出した電子(光電子)の運動エネルギーを測定することによって、固体表面の内殻電子の結合エネルギーを求める方法である。一般に内殻電子の結合エネルギーは原子核によって固有の値を有する(例えばO1s電子の場合532
eVである)ので、絶縁物を含むあらゆる固体表面の組成元素の定性、定量分析が可能となる。また、内殻電子の結合エネルギーは原子の化学結合状態によって数eV程度シフトするので、原子価数、酸化数、官能基の種類や量などの極表面での化学状態を明らかにすることもできる。さらに、イオンエッチングを行えばそれらの深さ方向への変化を知ることができる。 |
【特徴】 Quantera-SXMは、細く絞った単色化したAl-Ka線というX線(9〜100 mmfで可変) を走査型電子顕微鏡(SEM)のように2次元に走査して試料表面に照射して測定することができる画期的な装置です。機器分析分野も所有しているSEM-EDXではSEM観察している試料表面の元素の定性・定量を行うことができます。本装置はSEMほどの高倍率観察とはまいりませんが、元素の定性・定量分析に加えて、試料表面の元素がどのような化学結合状態で存在するかという面分析、線分析なども行うことが可能です。さらに従来の装置では、試料の位置を決めて測定することができませんでしたが、本装置では同時に観察する光学像、下図に示す走査X線像とあわせてこまかく位置を指定した分析も可能です。 また、従来の装置は、直径10 mm以内、厚さ5 mm以内の一つの試料を一つの試料台に載せるという制限がありました。新しい装置では試料台の大きさが75×75 mmと大きくなり、大きい試料や多くの試料をこの一つの試料台に載せることができるようになったことも特徴です。厚さが20 mmまでの試料も導入できますので、従来は測定のために測定表面を汚さないように試料を準備する非常にやっかいな前処理をおおきく簡略化することができます。さらに試料交換、超高真空排気などが全自動化されたため、従来のように分析者の手違いなどで分析室、予備排気室で試料台を落としてしまう、高真空を誤ってやぶってしまうといった心配も軽減されます。 図 【測定例】図に透過電子顕微鏡観察で試料の固定に用いる目の細かな銅製メッシュの表面に9 mmに絞ったX線を2次元に走査して照射した時に得られる走査X線(SXI)像と銅の2p3/2軌道の電子(光電子)の強弱による面分析像(明るいところに銅の存在)を示します。画像から銅でできた網状の構造を反映した情報を得ることができることがわかります。 |
主な応用分野: |
岐阜大学
生命科学総合研究支援センター
機器分析分野
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