研究室について (配属に少しでも興味のある学生さんは是非ご一読ください)
■ 計算化学とは?
我々の研究室は、量子力学に基づいた分子軌道法や密度汎関数理論といった量子化学計算手法を用いて、様々な興味深い化学現象を明らかにしようとする計算化学の研究室です。今日では、GAUSSIANやGAMESSに代表される分子軌道計算のためのプログラムパッケージが確立しており、簡単な化学反応の解析は、普通のノートパソコンで誰にでもできるようになりました。実験化学者が、実験で得られた結果の解釈や、より効率的な反応設計のために、簡単な理論計算を自ら行うことも今や当たり前となりつつあります。一方で、多数の分子を含んだ大きな系の複雑な化学反応や、物性・反応経路の詳細な解析には、計算化学・理論化学の専門家の知識・ノウハウが必要とされます。
量子化学計算を用いれば、反応経路上で最もエネルギーが高く、反応設計に非常に重要でありながら、不安定なため実験的な観測が難しい遷移状態や、短寿命の中間体についても、直接取り扱って解析することが可能です。そのような知見は、量子化学計算を用いなければ得ることが困難であり、つまりは量子化学計算が今日では化学反応を根本から理解するために必要不可欠な1つの実験器具としての地位を確立していることに他なりません。
身近なパソコンを実験器具として用いるため、逆に『パソコンが苦手だから…』と、量子化学の本質と異なるところで苦手意識を事前に感じてしまう学生さんも少なからずいるかもしれませんが、我々にとってのパソコンは、実験系研究室での実験装置・器具に相当します。実験系研究室に配属されたら、学生実験で習った実験器具・装置の使い方を復習したり、新しい器具・装置については使い方を1から学ぶように、量子化学計算に必要なパソコンの知識は、配属されてから学べば十分身につけることができます。
岐阜大学では3年次に、物質化学実験の1テーマとして、GAUSSIANに触れる機会がありますが、残念ながらカリキュラムの編成上、4回しか実習時間がありません。4回の実習では、自身を持って使い方を身につけたと言えるところまで慣れることはなかなか困難です。物質化学実験で、量子化学計算に対する技術的な不安を感じてしまっていたとしても、実際に研究室に配属されてからの研究に必要な技術・知識は、研究に真面目に取り組めば、必ずすぐに払拭することができます。計算化学、量子化学計算に対する興味を、パソコンに苦手意識があるからという理由で遠ざけてしまわないよう、是非お願いしたいと思います。
■ 当グループの歩み
当グループは、2014年度に発足したばかりの比較的新しいグループです。初年度である2014年度には、1名の修士修了者を酒井研から引き継ぐ形で輩出し、2年目および3年目の2015年度, 2016年度にはそれぞれ2名ずつの学士を輩出しました。まだ発足間もない比較的新しい研究室ではありますが、2015年度卒業生は、1年間の研究成果が在学中に量子化学の国際学術誌に掲載され、また、その成果が認められ、日本化学会東海支部長賞を受賞するなど、アクティブに研究に邁進して参りました。
2016年度からは有機・計算化学グループ 纐纈・宇田川研究室として研究室を運営しています。配属は
(1) 学科の研究室配属にて、纐纈・宇田川研究室の配属学生を決定
(2) 配属された学生内での話し合いにより、纐纈グループおよび宇田川グループへの配属を決定
の、2段階により決定されます。
■ 年間行事
様々な年間行事は、纐纈・宇田川研究室合同で行います。
- [主な合同開催年間行事]
- 新歓
- 月例報告会(月1回の研究進捗報告会)
- 中間報告会(7月末および12月末:夏はキャンプ場にて開催)
- 学科ソフトボール大会
- 講座旅行(秋、希望者のみ)
- 忘年会
- 追いコン
当研究室に興味がある学生さんは、お気軽に宇田川まで連絡(udagawa[at]gifu-u.ac.jp [at]を@に変更して下さい)の上、見学にお越しください。
■ 研究室生活
当グループでは、明確なコアタイムは設けておりませんが、研究時間およびディスカッションの時間を確保するためにも、遅くとも朝10時までには研究を開始し、夕方5時頃までは研究室で研究します。ただし研究が進むに連れ、コアタイム以上の研究時間を自発的に確保することが必要になります。体調不良や就職活動で止むを得ず休む場合には、連絡が必要です。欠席・遅刻自体は仕方のないことですが、欠席・遅刻した分の研究時間は、長いスパンで構いませんので、必ず補填して下さい。
また、上に挙げた有機・計算化学グループ合同での月例報告会の他に、当グループでの研究進捗報告会および勉強会を週1回ずつ行っています。勉強会では、量子化学のテキストを用いて、量子化学や理論計算の基礎について学びます。内容については、年度ごとに人数などの研究室体制を考慮した上で決定します。
■ 進路
当グループは、所謂「化学」と言われてイメージする実験化学の研究室とは少し異なる印象を持たれるかもしれません。しかしながら、未解明の化学現象に立ち向かっている点では、他の実験系研究室と何ら変わりはありません。研究を通じて、物事の本質を捉え、問題解決の道筋をたてるための論理的思考能力が重要であり、それは理論系・実験系に共通して身につけることが要求されるスキルです。他の実験系研究室と異なることはただ一点、我々にとっての実験器具がパソコンであるということだけです。
実際、当グループの卒業生の就職先は、本学物質化学コースの他研究室の卒業生と変わりません。以下に、卒業生・修了生の主な進路を示します。
・就職
三菱自動車、Harmony For、トヨタ車体、アピ、鍋屋バイテック会社、生活共同組合連合会大学生協東海事業連合、東邦液化ガス、カイインダストリーズ、田村プラスチック製品、ホンダロジコム、マルヤス工業、中部サイデン、メイラ、スギムラ化学、住友電装、東海染工、オンダ製作所、山九、美鈴工業、シーシーアイ、今仙電機製作所、豊和化成、大洋薬品工業、イビデン など
・進学
岐阜大学大学院、名古屋大学大学院