☆養魚場におけるカワシンジュガイの増殖☆
カワシンジュガイは氷河期の残存種であり,北海道を中心に分布しています.本州では局地的な分布であり,多くの生息地が天然記念物指定を受けるなど保護対象となっています.本種の特徴と言えば何といっても長寿,そう100年以上生きるものもいます.
本種は幼生期間にサツキマス(アマゴ)やサクラマス(ヤマメ)に寄生します.寄生期間は2カ月と長いため,その期間寄宿魚が元気でいてもらわなければなりません.しかし,本州では釣りによる捕獲圧が非常に高く,寄生・変態が完了することは困難です.そのため,カワシンジュガイの保全には,宿主魚の保護が欠かせない要素となります.
当研究室では,現在,養魚場で多数飼育されているアマゴに寄生して増殖している本種個体群を対象に,養魚池における増殖メカニズムの解明を行い,本種の再生産に向けた水産業の活用を検討しています. |
☆水田地帯におけるスナヤツメの保全☆
スナヤツメは従来,水田地帯の水路や幹線排水路に多く見られましたが,現在では一部の河川に生息する程度です.その理由の一つに,本種の生態が関与しています.
本種は春になると砂礫底に産卵床を掘って産卵します.孵化した個体はアンモシーテス幼生と呼ばれ,眼や鰓孔は不明瞭でミミズのようです.幼生は遊泳能力が備わるまでの1年間ほど,生まれた場所近くの泥底に潜って生活します.さらに2年半後の晩秋に生まれ故郷の近くに戻り,変態して成魚になり,翌春に産卵して4年の生涯を終えます.本種は生まれた場所に戻ってくるのですが,これは幼生の出すフェロモンに反応します.つまり,産卵に必要な砂礫底と幼生の生息する泥底が近くに存在する必要があります.しかし,コンクリート水路や直線化された河川ではこのような環境は失われてしまいます.
環境の多様性を確保することは,スナヤツメに限らず生物の多様性を維持するための必要条件なのです.
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