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研究概要

免疫疾患

先天性免疫異常症(Inborn error of Immunity)は、免疫系の遺伝子群の異常により発症する先天性疾患であり、従来は原発性免疫不全症候群と呼称されていた疾患を内包しつつ、必ずしも易感染性を示さないような自己炎症性疾患、アレルギー疾患、易発癌疾患も疾患概念に取り入れた大症候群である。国際免疫学会連合の公表している疾患分類表によると550もの疾患が登録されているが、それぞれの疾患の発生頻度は稀でありいわゆる希少難病である。岐阜大学大学院医学系研究科小児科学教室では厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業の原発性免疫不全症候群および自己炎症性疾患の研究班に参加しており、これらの診断、病態解明、治療法開発、そして難病プラットフォーム上に構築された疾患レジストリ研究に協力している。希少難病研究室では、医療者、社会人大学院生、学生研究員にそれぞれ疾患に関するテーマを持って研究に取り組んでもらっており、(1)患者実態調査、(2)バイオマーカー開発、(3)疾患モデル開発(マウス, iPS細胞)、(4)患者解析(FACSによる免疫能評価, 遺伝子解析, サイトカイン, IFNスコア)、(5)遺伝子型機能評価 (TNFAIP3, NEMOなど)、(6)タンパク立体構造解析、(7)新規新生児マススクリーニング法開発などを行っている。
また、先天的な免疫系の異常により難治なアレルギ―病態を形成する症例もみられることがあり、アレルギー疾患の病態解明、治療法開発も行っている。アレルギー疾患自体は希少疾患ではなく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのコモンな疾患である。アトピー性皮膚炎においては、近年、特に中等症から重症例に対して、生物学的製剤や低分子化合物による全身療法が適用されるようになり、治療環境に劇的な変化がもたらされている。しかし、これら分子標的薬による治療中の免疫学的因子の変化については未解明な点が多く、希少難病研究室では免疫学的変化の解明に取り組んでいる。食物アレルギーは、アナフィラキシーショックを引き起こし生命の危機に直結するだけでなく、患者本人のみならず家族全体の外食や日常生活における不安を高め、生活の質を大きく損なう原因となる。岐阜大学大学院医学系研究科小児科学教室では、「食べて治す」アレルゲン加水分解食品の研究を端緒とし、IgE抗体のアフィニティー成熟や希少アレルゲンの解明などの実績があり、免疫学的知見に基づいた包括的な食物アレルギーの研究を進めている。

血管腫・血管奇形

血管腫・血管奇形は,脈管異常(vascular anomalies)とされるさまざまな疾患を包括する概念で、カサバッハ・メリット現象(Kasabach-Merritt phenomenon: KMP)を伴う血管性腫瘍や、リンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病などのリンパ管疾患、静脈奇形、クリッペル・トレノネー症候群などが挙げられる。これらは主に小児期に発生する希少難治性疾患であるが、有効な治療法は確立されておらず、小児慢性特定疾病、指定難病に指定されている。岐阜大学大学院医学系研究科小児科学教室では厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業の血管腫・血管奇形の研究班に参加しており、これらの診断、病態解明、治療法開発、そして難病プラットフォーム上に構築された疾患レジストリ研究に協力している。希少難病研究室では、医療者、社会人大学院生、学生研究員にそれぞれ疾患に関するテーマを持って研究に取り組んでもらっており、(1)患者実態調査、(2)バイオマーカー開発、(3)疾患モデル開発(マウス, 細胞)、(4)患者解析(遺伝子解析, サイトカイン, microRNA, シングルセル)などを行っている。
また、血管腫・脈管奇形の臨床試験などを積極的に行っており、これまで医師主導治験3件、企業治験2件を実施した。シロリムスについては小関道夫臨床准教授がAMED研究班の研究代表者として全国の施設と共同研究を行い、2024年に難治性脈管腫瘍および難治性脈管奇形に対する薬事承認を得ることができた。
また小関道夫が代表である「難治性血管腫・血管奇形 薬物療法研究班」が、シロリムスを中心に、薬や血管腫・血管奇形に関する正しい最新情報をホームページにて一般の方や医療者に対して提供している。
難治性血管腫・血管奇形 薬物療法研究班 情報サイト
https://cure-vas.jp/

代謝疾患

先天代謝異常症(Inborn Errors of Metabolism)は、酵素や代謝経路に関わる遺伝子の変化により、体内の代謝に支障をきたす疾患群であり、その多くは希少疾患に分類される。岐阜大学大学院医学系研究科小児科学教室では、厚労科研・AMED・こども家庭科研の研究班に参画し、アミノ酸、有機酸、脂肪酸、ケトン体、ライソゾーム、ペルオキシソーム代謝異常症など、幅広い先天代謝異常症に対して、診断法の確立、病態解明、新規治療法の開発に取り組んでいる。特に、AMED研究班では、新生児マススクリーニング(NBS)対象疾患を中心とした先天代謝異常症の症例解析、レジストリ登録(難病プラットフォーム等)の事務局を担当しており、2014年から全国の症例を幅広く受け付け、遺伝子解析や症例情報の集積を行なっている(http://www.jsiem.com)。最近では、先天性グリコシル化異常症(Congenital disorders of glycosylation:CDG)に関する研究も開始されており、全国レジストリ研究等の拡充が進められている(https://square.umin.ac.jp/cdg-japan)。希少難病研究室では、医療者、社会人大学院生、学生研究員にそれぞれ疾患に関するテーマを持って研究に取り組んでもらっており、(1)患者実態調査、(2)遺伝子・酵素機能解析(細胞やカイコ等の活用)、(3)疾患モデル開発(マウス、ゼブラフィッシュ)、(4)次世代シークエンスやオミックス解析を用いた病態解明、(5)NBSにおける診断精度向上や対象疾患拡大への取り組みなど、多角的な研究を行っている。
特にケトン体代謝異常症に関しては、β-ケトチオラーゼ欠損症(ACAT1)、SCOT欠損症(OXCT1)、HMG-CoA合成酵素欠損症(HMGCS2)などの遺伝子・機能解析による病態解明や、モデル動物を用いた研究によって、国内の診断・研究の中核的役割を担っており、国内外から多くの解析依頼を受けている。最近では、アスパラギン合成酵素欠損症においても国際的な解析依頼を通じて分子病態の解明に貢献している。
また、予防医学の観点から極めて重要なNBSの研究にも注力しており、岐阜大学の寄附講座「小児希少難病早期診断・予防医学講座」とも連携して、ろ紙血を用いた新しい診断技術の開発、対象疾患の選定基準の検討、学会ガイドライン改訂などに貢献している(https://www1.gifu-u.ac.jp/~gifuped/html/rare_disease.html)。さらに、従来の対象疾患を大幅に増加させた拡大NBSの全国的な展開が注目される中、岐阜県を中心に中部圏での事業を推進する東海マススクリーニング推進協会(TOMAS)と密接に連携し、拡大NBSの実装・研究・評価を積極的に進めている(https://www.tokai-mass.jp)。

問い合わせ先
岐阜大学大学院医学系研究科 希少難病研究室
〒500-1194 岐阜市柳戸1ー1
電話:058-230-6000

Laboratory of Intractable and Rare Diseases, Gifu University Graduate School of Medicine.
Graduate School of Medicine,
Gifu University
1-1 Yanagido
Gifu 501-1194, Japan
+81-58-230-6000 (ext 7754)

岐阜大学大学院医学系研究科 希少難病研究室
501-1194 岐阜市柳戸1−1
Laboratory of Intractable and Rare Diseases,
Gifu University Graduate School of Medicine
1-1 Yanagido, Gifu, 501-1194, Japan