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気になることば 第42集   バックナンバー索引   同分類目次   最新    

*「気になることば」があるというより、「ことば」全体が気になるのです。
*ことばやことばをめぐることがらについて、思いつくままに記していきます。
*「ことばとがめ」に見えるものもあるかもしれませんが、その背後にある、 人間が言語にどうかかわっているか、に力点を置いているつもりです。

19980121
■「日がな一日」

 ほとんど使わないことばだけれど、だからこそ、間違えそうなことばである。 つまり「日長一日」とやってしまいそうになる。 もしかしたら、もう使われているかもしれない。 で、例によってgooで検索。

 「日なが一日」「日長一日」各一例。「日がな一日」は157例。 圧倒的に本来形が多かった。 これはなかなか感動的なことなのかもしれない。

 「日がな一日」。いろいろ変化しやすい要素はもっている。
人によって差があるだろうが、ナの子音だけでなくガの子音も鼻音になることがある。 ナとガは母音も同じなので転倒しやすい。

 意味の上でもそうだ。「がな」って何? と問われてすぐに答えられるほど、明瞭な語源ではなかろう。 となると、「あれ? ほんとうは『長』なんじゃないの?」という風にも考えてしまいそうだ。 使用者語源・民間語源というやつである。 実際、意味・ニュアンスのうえでも「長」との関係が濃いことばではある。

 というわけで、よくぞいまだに本来形が勢力を保っているものだと思うのです。

 試験監督2日間の後遺症か、いまだに頭がまわりません。

 Windows上で手軽にサウンドスペクトログラムが得られるソフトあったんですね。 他人(ひと)のサイトの注意書きはちゃんと読まないといけませんね。
19980122
■「正しい日本語のために」

 というのが、ときどき読んでいる補陀落通信の「最新号」である。 「やもうえない」「ふいんき」が出てきて、ドキッとする。 ひょっとして「気になることば」「芳名帳」を読んでらっしゃるのではと。

 しかし、うまく笑いに持っていくよなぁ。 誤りとされている言い方を駆使してらっしゃるのだが、あんまりうまいので誤りと気づかずに読み過ごすこともありそうだ。

 今度の試験で使ったりして。 これこれの文章から、日本語を使用するうえで問題となる点をすべて指摘しなさい、とか。 ま、冗談ですが。
 手抜きですみません。
19980123
■「首吊り」
 このおじいさんのは、個人専用の歌で、いわば、オーダーメード、特別仕立て、カスタム製である。 日本の「あなうれし」は、単語は詩語めいているが、だれでも同じのが歌える点では歌の「首吊り」だ。
青木晴夫『滅びゆくことばを追って』岩波書店・同時代ライブラリー
 いま、面白く読んでいる本。 言語調査で、はじめてのインディアン言語に接し、インフォーマントに1から10までの数を教えてもらうだけで、 序数詞(一つ・二つのツ)の存在や、喉頭化音や母音調和の存在や音交替まで見てとってしまう洞察力に なかばあきれた。
 それにしても、言語学の醍醐味はこういう未知の言語の記述にあるんだろうね。

 引用した部分では、インディアンが敵との戦いに勝利したときに歌う歌のことを言っている。 個人ごとに歌が決まっているそうだ。 が、日本の場合はそうではない、ということ。

 で、「首吊り」である。 既製服のことを「つるし」と言ったりするが、「首吊り」ははじめてだ。 ほんとうは「つるし」と書くところを、何か表現の綾で「首吊り」にしたのかもしれないが、 何度読んでもその綾が浮かんでこない。 やはり「首吊り」という言い方があるらしい。

 聞いたことのある方、いらっしゃったら教えてください。
19980124
■「『富士の美』展」

 天気予報だと、岐阜県平野部(美濃地方)は、今日の未明から雪が降りはじめるはずだった。 が、日中は風でいくらか飛ばされてきただけ。17時まえになってからかなり降りだしてきた。 東京の大雪では、天気予報の正確さが見直されたようだが‥‥‥ 

 やっぱり「天気予想」と呼ぶようにしませんか。 ま、テレビではすでに「気象情報」とか「ウェザー・リポート」(バンドの名前みたいだ)とか言っているようですが。

 昼すぎ、NHKテレビを付けっぱなしにしていたら、名古屋市美術館(?)で「『富士の美』展」が行われるとか言っていた。 アクセントは〇●●●〇〇。「博物館」と同じ。

 「〜展」という単語だと、テン(展)の直前までが高く発音される。 ただ、それは、「美術展」とか「古書展」とか、かなり熟した単語にふさわしいことだと思う。

 「『富士の美』展」の場合、これで一つの単語と認定せざるをえない。 が、一単語なみのアクセントを与えてしまうのはちょっと躊躇する。 単語としての成熟度が低いからなのだろう。 少なくとも私にとっては。
 私なら、「●〇〇● 〇〇」とするかな。テンの直前でちょっと区切りを入れて。

 さて、この放送を担当したアナウンサーは、声からすると松波順子さんのようだ。 なぜそんなことまで分かるかというと、うちの学部の卒業生だからです。 私の講義もとったことがあるらしい(以前、同僚に教えてもらいました)。
 多分、うちの学部の関係者で一番有名な人でしょうね。 gooで検索したら、ファンのような人もいるようだし、アイドル情報のページでも名前だけはあるみたいです。
 昨日の「首吊り」ですが、大阪に住んでらっしゃった方から、聞いたことがある、とのメールをいただきました。

 げっ、冗談じゃない降り方だ。あっと言う間に歩道が雪でおおわれてしまった。 早く帰ろう。(17時20分)
19980125
■CD-ROM版『群書類従』の使用感

 私にしては珍しく予算が少々あまったので買ってみた。
 注文したら数日できたので、ちょっと拍子抜け。ま、速いことに文句を言っても仕方がない。 来たのはCDケースだけ。普通のソフトのように大きな紙ケース入りかと思ったが、資源を消費しないのは結構である。 ただ、ありがた味に欠けるだけ。

 印刷されたマニュアルはない。 すべて、ファイル化されているのである。 省スペースはありがたいが、肝心のreadme.docは、MS−WORDのフォーマットである。 つまり、他のエディターでは、表示はするが、英数字の羅列になってしまう。 Windows95のワードパットでも最初の部分しか表示しない。これは不親切である。

 ともかく関係ソフトをインストール。 まず、システムファイルが古いので更新するぞ、と聞いてくる。 ビジュアルベーシックなどのモジュールを更新するのである。 Windows3.1時代、VBのモジュールでは泣かされたので、ちょっとどきっとする。 保険をかけるつもりで、現在の環境を保持してからokボタンを押す。 終了すると再起動して、セットアップ続行。

 さて、本文である。画像ファイルでの提供だが‥‥
 げげげげげげげげっ。かかかかか活字が、つつつつつつ潰れてる!!!!  やっぱりね。一見綺麗な本を画像ファイルにしたのね。 底本が新しければ、印字品質はどうでもいいのか。 ただ、底本は「訂正三版」なので、間違いは直っているのだろう。 仕方ないか。

 ビュアの動きはキビキビしており(PentiumU266MHzのマシンにて)、二重起動も可能。 ただ、ページめくりがちょっと変。 ウィンドウ下部の右向き・左向き三角形アイコンで進退するのだが、 次ページの表示には右端の右向き三角形をクリックする。 縦書きの画像を表示するのだから、左端・左向き三角形をクリックの方がしっくりくると思うのだが。
 なお、ページ送りのキー(pageup/pagedown)にも連動していない。 していてくれれば随分楽なのだが。

 画像ファイルは圧縮TIFF形式(MMR形式か)で、一枚(=見開き)120KB程度。 400dpiで入力したとうたっているから、非圧縮なら1MBくらいになりそうだ。 TIFFにこういう賢い規格があるとは知らなかった。
 この形式に対応しているソフトなら読み込める。 たとえば、Windows95のOSR2(4.00.950B)に付属の「イメージング」(ファクス原稿編集ソフト)など。

 さて、CDROM3枚となると連装CDドライブが欲しくなるが、私的使用ならハードディスクへのコピーは認められている。 「私的」の範囲が明示されていないが、私だけが研究室のマシンだけで見る分には許されるだろう。 厳密にいえば、国立大学の研究室で大学の予算で買ったマシンなのだから、「私用」はありえず「公用」なのだが、多分、大丈夫だろう。 ひとこと「研究目的で」云々と書いてあれば安心なのだが。

 単にコピーしたのでは使えない。1枚めだけはいけるが、2・3枚めには飛んでくれない。 導入した C:\Program Files\群書類従 フォルダにできる初期化ファイルを編集してもだめだった。 (編集といっても、初期化ファイルにはドライブ名情報しかはいってないが)
 切り換えるには、CDドライブ名を選択することになるが、その下の階層は指定できない。 つまり、2・3枚めは専用のフォルダを作ってコピーしてもだめで、するならパーティションを切り直すしかない‥‥ うう、面倒だ。
 そこで、「携速」とか「CD革命バーチャル」とかを使ってみる。 まるごとハードディスクにコピーしても、マシンからはCDROMと認識してくれる。 購入済の「CD革命バーチャル」でうまくいった。 圧縮もするが、すでに圧縮された画像ファイルばかりなので、圧縮率は期待できない。

 今日はこれにて。気づいたことがたまってきたら、また書きます。
19980126
■「名駅」

 名古屋駅の東側の地帯を「名駅」と呼ぶ。 地名辞典をひけば確実な由来がわかるのだろうが、たぶん、おそらく、きっと、ほとんど名古屋駅があっての地名だろう。 分かりやすすぎるくらいの地名だが、ちょっと味気ないね。 いやいや、他人(ひと)が善かれと思って付けたのでしょうから、そんなことを言ってはいけない。 スミマセン。

 このことば、私の頭の中で、ちょっと違ったありようになっている。 メイエキと言われても一瞬なんのことか分からない。 頭の中の“索引”をめくっていって、「名駅」という漢字表記がひっかかって、やっと、名古屋の駅前あたりだと把握できる。

 まぁ、岐阜に居るからそうなるのだろう。 つまり、そう頻繁にでかける場所ではないが、そこそこ近いのでその地名が耳に入る機会がある、というまことに中途半端な状態のためかと思う。

 もしもこれが勤め先とか、得意先とか、彼女の家があるとかいうことになれば違うのだろう。 もう、メイエキと言われたら「名駅」はおろか駅前の風景までありありと浮かべられそうな気がする。

 生活に必須のことばは、そういう風に、条件反射として音声と意味が結び付いたかたちで頭のなかにある。 そしてそういうことばを私たちは駆使して日常を送っている。 だからこそ、「名駅」のように、定着しかかっている宙ぶらりんのことばには思い至ることが少ないのではないか。

 だから、そういう「名駅」の存在は貴重だ。 なぜ宙ぶらりんなのか、何度もこの話をしているのにいまだに頭に定着しないのはなぜか、等々、ことばを考える切っかけを提供してくれるからである。

 定着しがたいのは、単なる老化現象かもしれません。

 昨日、映画「勝利への脱出」の最後のところを見た。 BGMがどこかで聞いたような、ちょっと勇ましいものになった。 ああ、ショスタコビッチの交響曲10番に似てるんだ。
 そこで参照された楽章は、同じリズムをくりかえす打楽器のうえに、メロディを奏でる楽器が少しずつ増えていくようになっている。 つまり、ショスタコビッチもラベルの「ボレロ」を参照したらしいのだ。

 「勝利への脱出」、最後にはショスタコの交響曲5番のフィナーレのようになった。 よくもパクリますねぇ。 ショスタコの5番といえば、昔、やはり最後だけみた「北京原人の逆襲」にもそのまま使われていたっけ。
 連想というか想起というか、これも不思議。 「北京原人の逆襲」にいたるとは予想だにしなかった。
19980127
■「都心」ふたたび

 今日、名古屋テレビから電話があった。 まえにとりあげた「名古屋は首都?」を見つけてコメントをせよ、という。 おそらく、視聴者のなかに、同じような疑問をもった人がいて、投書でもなさったのだろう。 そこで、調べているうちに「気になることば」にいきあたったようだ。
 なお、問題の「都心環状↑」となっている標識は、東名阪自動車道から名古屋高速に分岐する楠ジャンクションにある。

 さて、コメントをするとなると、実際に調べる必要もある。 たとえば、「都心」ということばはいつから使うようになったのか、他の都市で使っている例はないか、など‥‥

 とりあえず、gooで「都心」を検索すると6000件くらいある。 「東京・臨海・副都心」を除いても3000件以上あった。 いちいち見ていたのでは埒があかない。 オンラインソフトのアーカイブで、オートパイロットソフトをダウンロードし、サーチさせることにした(ふぅん。片仮名ばかりでも文が成立するのね)。

 これが、けっこうある。「都心」を首都の中心部以外の意味で使うのが。
 北から、旭川・石狩・札幌・釧路・帯広・盛岡・仙台・山形・新潟・金沢・福井・日立・川崎・横浜・鎌倉・豊橋・豊田・名古屋・東大阪・大阪・箕面(?)・堺・神戸・明石・岡山・広島・今治・北九州・福岡・久留米・那覇‥‥  唖然。これでも五分の一も見てないのだ。

 ただし、これらには顕著な傾向がある。 個人のレベルでの使用はなく、地方自治体やそれに近い建築業者・建築学科などが使うのである。 つまりは、職業語のようなものだ。 一般にまで浸透するのは、だいぶ先になりそうである。
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