長らく当講座では精神病理学に基づく心理学的アプローチが盛んに議論されてきました。
社会的存在としての人間を治療の中心に据える事で、単に症状レベルにとどまらず、症状の根底にあるその人なりの意味を患者とともに理解をしていこうという方法論を採用していたのです。
この方法は今でも非常に有効です。こうした各人の生活歴・病歴のおさらいをすることで、その人自身が何かに気づき、よりしなやかな人生を送るためのヒントを得ることができるようになるからです。
しかし時代は進み、薬理学上の知見が多く得られるようになりました。また身体面からのアプローチも進んできています。こうした最近の情勢は、精神障害の治療における、精神療法と薬物療法という両輪の片側である、薬物療法が充実してきたことを意味しています。
「心の面からのアプローチ」と「体の面からのアプローチ」
この両面からのアプローチを今後の精神科医療では求められていくことでしょう。
こうした時代にあって、塩入俊樹先生を当講座の教授としてお迎えできたことは、身体面からのアプローチを指導いただける環境もまた当講座では整ったことを意味しています。
こうして精神科医療の両輪を得た当講座は、病に苦しむ方々を総合的に判断し、全人的に治療を進めていける環境が整ったことで、これから精神科医を目指す医師たちが自らの診療能力を切磋琢磨してゆくには、最適の場所のひとつとなることができたと自負しています。
岐阜大学医学部附属病院精神科