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最近HPで昔話をまとめている。振り返ってみれば肌感覚で感じる頭のよい人というのはめったにいないことに気がついた。


頭の良い人例1 辻英夫(卒研時代の大ボス):話をしているときの言葉の選択が常に完璧 情報整理の達人


すべての話はとてもよく理解できる。曇りも歪みもないスーパークリアーなビジョンを持っておられるのだな、と感じられる。


頭の良い人例2 近藤孝男(学会関係者):ときどき何言ってるかわからない    


何を言ってるのかわからない、というのは「この人は私とは違う景色が見えている」というサインである。例えばガロワ(群論)。①いちおう論理で舗装された道を通ってきているのだが、②そもそも発想に飛躍があり、③時代的な文脈(注1)から外れている。もうすこしわかりやすい例でいうと、ウェゲナー(大陸移動説)、コペルニクス(地動説)。


これまで57年生きてきたが、私が出会った人のなかでは例3はいなかったかも知れない。


植物科学分野で言えば、お会いしたことはないが業績から判断するならAndrew Miller(概日時計)と John L. Bowman(花のABCモデル)は良い。遺伝学の講義の題材にしているFrancis Clickもとても良い。


頭が良いというほどではなくてもキレのある人というカテゴリーならもうちょっといる。 例:Joseph Ecker

キレがあるというのは、当然私よりは頭が良いのではあるが、、、地続きというか「手が届かないでもない」みたいな人(いや、実際には手は届かないのではあるが、、、仮想的にというか、万が一とか、、、)


あと、スジの良い人。 例:James Watson

スジが良い人は脱線しないで本質的なところに執着する。偉業を成し遂げた人には多いタイプかも知れない。


いずれにしても上記のような才能ある人たちは稀で、どこへ行ってもポツポツと散在しているだけだった。私は京大理植物、北大遺伝子と理植物、教養部、イェール大生物植物グループ、理研フロンティア、理研GSC、名大遺伝子、岐阜大応用生物、と在籍してきたが、どこもポツポツだった(注2)。


結局、端的に言えば研究者(注3)の95%は特に頭が良い訳ではない普通の人達である。 普通の人といっても能力的にはいろいろだが、ま、細かいことは気にしないでよい。


仕事が遅くて他人の2倍時間がかかるとか、理解が遅くて3倍かかる、としても10年間の積算で振り返るとクリティカルな違いは生じないし挽回のやりようはある。ただ、移り気と根性なしはアウト、臆病なのもよろしくない。


なので、サイエンスに興味がある若い人は臆せず参入されるとよいと思う。やる気と根気があればきっとうまくいく。経験を積んでいけば頭の使い方もうまくなる。英語は必須だが、時間さえかければ誰でも出来る。人生の中で最も時間を捧げるべき仕事中にワクワク出来て、その上カタギの安定職なのだからかなりお得(注4)。



2024.2.29


注1)常識ともいう。詳細はこちら


注2)東大医科研は違う。あそこには日本の叡智が集結している、と巷では言われているが私もそう思った。


注3)実験系ということにしておく。


注4)安定職になるまではちょっといろいろある。



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