常識

 
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常識というのは繰り返し聞かされたから信じているだけで、不当に偏っていたり、実は根拠がなかったりする。「常識を疑え」というだけならバカでもできるが、身に染み付いてしまっているのでちょっとどうにもならない。どれが常識で、どれが理詰めで得られた知識なのかを区別することが可能な人はごく少数で、できてしまうとだいたい変人扱いされる(チョムスキー先生とか)。 普通の人はもともと常識と知識を区別していないのではないか(知識の体系化については昔長々と書いたものがある)。


コリオリの力というものがある。北半球では台風は反時計回りになる、というアレである。南半球では時計回りになる。北は反時計回り、南は時計回り、これ常識。


さて、赤道直下の某観光地で「コリオリの力をお見せしましょう」というショーがあるそうな。バケツに水を入れて、底の穴にはめた栓を抜くと反時計回りに渦ができる。そして、数メートル歩いて赤道を越え(線が引いてある)、同じことをすると今度は時計回りに渦ができるのだ。常識のある見物客は感心してチップを払うのだが。。。


液体が入ったグラスの外側に水滴がたくさんついていれば、冷たい飲み物が入っている、と見ただけでわかるのも常識ゆえのことである。岐阜でも札幌でもミュンヘンでも通用する。水滴がつく原理から考えると科学的にも正しい。 空気中に水分子が泳いでいて、それが冷たいグラスのところへ行くと温度が下がるのに合わせて飽和水蒸気圧も下がるので液化してグラスの側面に付く、のである。


しかし、原理から考え直すなら、湿度ゼロパーセントのところでは冷たいグラスに水滴はつかない。気温が氷点下のときも通用しない。また、気温100度、液体の温度60度の場合でも湿度が高ければ水滴がつく。60度のお湯が入ったグラスに水滴がつくのだ。原理から推していけばついていける話ではあるのだが、実際にはなかなかついていけない。


ついていけないのは何が問題かというと、原理はさて置き、日頃は「グラスに水滴>>>中身冷たい」と短絡して活用しているところにある。一緒に、例えば「一年>>52週」、「カメムシ多い>>>今年の雪多い」、「オレオレ>>>詐欺!」、「ヒートテック>>>暖かい」、「ミルキー>>>ママの味」、「サムライ>>>西向く」など10万件くらいが並列している、と想像して頂きたい。我々はこれらの常識をハッシュしてカルタのように捌きながら(天の原>>三笠の山に出でし月かも)日々の問題をこなしている。湿度ゼロパーセントのときに冷たいグラスに水滴がつかない、というのはカルタ中には出てこない。(注1)


常識の中に間違いある(よくある)とか適用に限界のある常識がある(これもよくある)からどうにかしろと言われても、既に取り込んでしまったすべての常識を吟味し直す訳にもいかないし、万が一できたとしても(できないとは思うが)、理性で否定して済む話ではない。表面上は理性に否定されていながら無意識とか感性の中で生き残っている常識も多々あるのだ。常識に頼らない、という戦略なら場面を限ればどうにかならないでもないのかも知れない。つまり、ある状況下ではカルタはしない。できるのだろうか。(注2)



2024.3.2


注1)思考と連想(カルタ)の違いについてはこちら。10万件ならエクセルに収まるサイズである。リストアップできればおもしろい。1,000人分収集すれば、出現頻度をランキングして「常識の中の常識」や「常識というほどでもない常識」がわかる。地域差や時代による変遷もわかる。常識と常識がコンフリクトしているところも具体的に掴める。


注2)それができるのが天才、ということかも。


間違った常識をすべて撲滅せよ、と言っているわけではない。真実とはいえなくても味わい深いものもある。個人的には輪廻転生とかは好きである。魚や虫を擬人化して眺めるのに役立っている。アイヌの人のひとりが山へ入ったきり帰らなかった、何年かして山奥でその人に似たクマを見かけた、もう我々村人の顔はわからなくなっていたようだった、とかいう話にも耳を貸すことができる。サムライは西を向いても問題ない。


ヒートテックは確かに暖かい。が、公式説明によると仕組みは気化熱の利用で、これはエアリズムと同じなのである。どういうことだろう???


天才安部公房は団地を訪問する火星人に「田中一郎」と名乗らせた(人間そっくり)。当時の宇宙人のイメージからかけ離れた「非常識な」名前であり、私はそのネーミングの気味悪さに衝撃を受けた(その後も衝撃は続くのだが)。この感覚は攻殻機動隊(アニメ)の米帝エージェントの名前「ワタナベ・タナカ」と「サトウ・スズキ」にエコーしていると思う。



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