研究内容


液晶とキュービック液晶

 
液晶、とくに温度変化の過程で現れるサーモトロピック液晶では、構成分子の分子形状が秩序構造形成の重要な支配因子である。
ネマチック相、スメクチック相、コレステリック相といったほとんどの液晶相において、分子形状と秩序構造の関係はほぼ解明されていると言って良い。
したがって、基盤研究としては、より複雑な高次の液晶相の秩序構造とそれが生み出す性質・機能に関心が移っている。
そのなかで、キュービック液晶は、未開拓の分野である。キュービック液晶(あるいはキュービック相)中で、個々の分子は、通常の液晶相と同様、液体中の分子と同じくらい激しく運動している。
一方、バルクの性質としては、三次元的な秩序構造をもつため、他の液晶相とは異なり、高粘性を、またその秩序構造はキュービック対称性をもつため、光学的には等方的に見える。
すなわち、ミクロにはダイナミックな性質をもちつつ、マクロには三次元的な周期構造をもつ不思議な液晶相である。
特に、ほぼ棒状の分子が、したがって光学的に異方的な分子が、なぜ、ある温度域で、どのようにして、全体としては、光学的に等方的な秩序構造を、しかも自発的に、形成するのか、はまさに「なぞ」であり、
その完全解明を目指して、研究を行っている。われわれは、特に、化学的な側面からのアプローチとして、構成分子の形状と秩序構造形成の関係解明に興味を持っている。

--> 当研究グループの成果

超分子

 
複数の分子が非共有結合的に集合して一つの複合体(集合体)を形成し、個々の分子にはない新しい化学的ないし物理的機能を生み出す場合、その分子は”超分子”と呼ばれる。
上述のキュービック液晶も超分子系のひとつであるが、より代表的な例としては、生体高分子であるDNAやポリぺプチドがあげられる。これらの系は、長距離にわたって形成される規則的ならせん構造をもち、それが特異な機能を発現している。
本研究グループでは、これら生体系を見ならい、分子間のπ-π相互作用、水素結合、疎水性相互作用などの非共有結合性相互作用を利用して、板状低分子から新規らせん棒状集合体を創製することを目的に研究している。
究極の目標は、分子構造を設計することで秩序構造とそれに基づく性質・機能を自在に「生体系以上に巧みに」制御することである。
これまでに、構造形成の過程で、不斉増幅挙動(キラルなだれ現象)などの特異な現象が、また開発されたらせん集合体は、その会合状態を敏感に反映した蛍光特性を示す、といったことが見つかっている。


アイオノマー

 
高分子はわれわれの生活になくてはならない素材である。
身の回りには、さまざまな高分子の成型品やフィルム、あるいは繊維製品などがあふれている。
われわれは、高分子の中でも特にアイオノマーと呼ばれるイオン性高分子に注目している。たとえば、エチレンアイオノマーは、エチレン鎖を主鎖とし、少量の(5mol%程度の)メタクリル酸を共重合し、その一部をさらに金属イオンにより中和(イオン化)した高分子であるが、もとの低密度ポリエチレンとは格段にすぐれた性質(成形性、強度、光学的透明性など)を示す。
このアイオノマーは、1964年に米デュポンのRees博士らによって開発されたものであり、すでに40年以上の歴史をもつが、実用が先行していて、ミクロ構造は意外なほどに解明されていない。
定性的には、アイオノマーの重要な特性は、導入された少量のイオン基が凝集することで形成されるイオン会合体に支配されている、と理解されている。しかし、その大きさや形状が紛れもない事実として認識されるようになったのは、ここ10年のことである。
われわれは、内部構造の詳細解明とその知見を生かした特性向上と精密制御、そして新しい機能付与などを目指して研究している。

--> 身の回りのアイオノマー

--> 当研究グループの成果



--> 当研究グループの紹介記事(岐阜大学工学部ニュース「匠」17号(2009年発行)p. 4 研究室紹介)
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