臨床研修

最近の教室の状況

当科は、高度専門医療を行う大学病院の中で、特定の臓器・疾患に限定せず、複数の疾病が併存することが多い高齢者にも対応できる全人的診療を提供し、それができる医師を育成する部門「総合診療部」として創設されました。 1999年3月に石塚達夫先生が初代教授として就任され、2004年6月の新病院移転を機に入院診療を開始し、2007年11月から「総合内科」に名称を変更しています。 2014年6月に森田浩之先生が第2代教授として就任されています。 創設当初は紹介状を持たない初診外来患者を主として診ていましたが、入院診療に加え、外来診療でも先生方のご支援もあって最近では紹介率が約70%までアップし、リウマチ・膠原病および原因不明疾患の診断・治療を担当する内科の一部門として認知されるようになってきました。 2018年度に開始された新・専門医制度においては、内科専門医に加え、総合診療専門医の育成にも力を入れるようにしています。


※詳細は岐阜大学医学部記念会館だよりをご覧ください。

診療の概要

当科発足当初の司町の旧病院時代には外来での診療のみで、責任ある診療ができないでいましたが、2014年6月から入院病床4床をいただき、内科診療を完結できるようになりました。発熱疾患患者の治療や未診断患者の診断・治療を主に行っており、現在は12床です。近年では、当科の入院の60%がリウマチ・膠原病、約20%が感染症の患者です。発熱の原因疾患は多岐に亘り、診断に苦労することも多いですが、当科ではこれまで約1,000例の38℃以上の発熱入院患者の診療(図1)を行い、約半数が感染症、1/4が膠原病などの自己免疫疾患で、発熱の原因が不明だったものは最終的に4%でした。

当科の約300名の疾患重症度の高い指定難病患者(図2)のうち、膠原病がそのほとんどを占めており、岐阜大学医学部附属病院の難病診療の一翼を担っています。EBMに基づく最新の標準治療を心がけており、グルココルチコイド(ステロイド)が有効な疾患と無効な疾患と病態を見極め、無効な場合は、NSAIDs、コルヒチンや生物学的製剤等の投与で、有効な場合でも他の免疫抑制薬や免疫調整薬、生物学的製剤、血漿交換、免疫グロブリン大量静注療法を併用することで、早期寛解とその維持を目指しています。これによって、長期投与で多くの副作用が出易いグルココルチコイドを速く減量・中止することが可能になっています。

医療が発達した現在でも、診断が困難もしくは未知の疾患の患者が多く存在しています。その中から、周期的に高熱と体のどこかに強い痛みを起こす「家族性地中海熱」、周期的に強い嘔吐を繰り返す「周期性ACTH-ADH放出症候群」、顔面などに発作性に浮腫を起こし、窒息する可能性のある「遺伝性血管浮腫」、出生時から周期的に1つの四肢にのみ強い痛みを繰り返し、2016年に疾患として確立した「小児四肢疼痛発作症」などの希少疾患の診断と治療を行ってきました。また、膠原病の中でも結節性動脈周囲炎、脊椎関節炎、Bechet病、成人発症Still病、高安動脈炎等では特異抗体が出現しないことから、しばしば診断が遅れます。患者の発症病歴、身体所見、検査所見、画像所見を詳細に検討し、病態を正確に把握することによって正しい診断をすることを大切にしています。

総合内科での38℃以上の発熱患者の原因疾患

図1 総合内科での38℃以上の発熱患者の原因疾患



総合内科での指定難病患者数

図2 総合内科での指定難病患者数


※詳細は岐阜大学医学部記念会館だよりをご覧ください。

教育の概要

学生教育では、4年生が臨床実習に入る直前に行っている「臨床実習入門(症候学)」と「臨床推論」の講義と実習を担当しています。講義は基本的に疾患別に行い、病態・症状・診断・治療を学びますが、実際の臨床では患者はある症候・徴候・検査異常などで外来を受診します。症状からできるだけ鑑別診断を多く覚えることではなく、たとえば咳であれば咳が出るメカニズムを理解し、その患者の病態を推定し病変部位を特定することによって診断するというアプローチを学んでもらう点に重点を置いています。

臨床実習では、初診患者から同意を得て「外来実習」を行っています。これは、学生が独自で医療面接を行い、その情報を電子カルテに記載し、同時に診断を考えるというものです。その直後に身体診察を担当医と共同して行いますが、適切で診断に近づける医療面接をどのように行うのかについて、複数の評価票や指導医のフィードバックを交えながら教育し、コミュニケーションと病態から考えて診断するというスキルを身に着けることを目標にしています。

研修医に対しては、病棟研修に加えて2017年からは「総合臨床教育研修」を毎月1回ずつ、初診患者1~2名を対象に外来で行っています。医療面接に加え、身体診察、検査オーダー、患者への説明までの一連の外来診療を研修してもらい、診断スキルを磨いてもらうとともに、当科の指導医がサポートとフィードバックを毎回行っています。2020年度からは、初期臨床研修の2年間において、計20日間の「一般外来研修」が必修化されることが決まっており、それを先取りして行っていることになります。

全部で19ある基本領域の中では、「内科専門医」と「総合診療専門医」の2つの専門医の育成を行っています。「内科専門医」では70疾患群のうちの80%である56疾患群での症例経験が必要ですが、外来・入院とも疾患のバリエーションが高いため、内科の中でも取得しやすい診療科であると考えています。専攻医には、すべての患者の問題(疾患)をリストアップし、適切な診断と治療を行うだけでなく、その相互関係を考えることで患者病態を深く理解することを常に行い、総合内科医として高いレベルを目指しています。サブスペシャリティ専門医では、岐阜県では少ない「リウマチ専門医」を育成し、これまで関連病院を含めて6名が取得し、膠原病専門診療に従事しています。近年、非常に多くのリウマチ・膠原病関連の治療薬が次々と開発され、リウマチ専門医のみが使用することができる治療薬もあり、治療効果を適切に評価し副作用にも迅速に対応できる専門医の役割が増している領域となっています。

「総合診療専門医」は、入院診療より一般外来診療に重点を置き、生物心理社会(BPS)モデルに基づくアプローチと患者中心の医療を実践し、訪問診療や緩和ケアを含む終末期医療で活用するとともに、地域住民全員を対象に健康に関する啓蒙、生活習慣指導やワクチンなどの予防医療を積極的に行う最も新しい基本領域専門医です。複数の疾患を併せ持ち、さらに様々な心理・社会的問題を抱えることが多い高齢者への適切な医療提供には総合診療専門医が不可欠です。これまで大学病院では教育が困難であったこの領域ですが、現在3名の専攻医がこのプログラムで研修中であり、近い将来指導医として学生・研修医に対しても活躍してくれることを期待しています。


※詳細は岐阜大学医学部記念会館だよりをご覧ください。

研究の概要

基礎研究では、梶田准教授を中心として主に脂肪細胞の分化・増殖のメカニズムについての研究を行っています。脂肪組織中に増殖能を有しながら脂肪細胞特異的遺伝子を発現する細胞small proliferative adipocytes (SPA)を発見し、その細胞の役割を明らかにする研究を進めています。また、脂肪細胞に多数の神経細胞関連遺伝子が発現しているのを発見し、それらを負に調節している神経細胞遺伝子発現調節因子RESTと脂肪細胞での意義について研究中で、最終的には新たな肥満治療薬の開発を目指しています。

臨床研究では、発熱疾患の鑑別に結びつく検査マーカーの組み合わせ、発熱疾患でのガリウムシンチグラフィーとPET-CTの有用性の比較、関節リウマチでのサルコペニア、ループス腎炎での治療と予後予測、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の治療薬の効果比較、リウマチ性多発筋痛症と高齢発症関節リウマチの鑑別診断マーカー探索などの研究を行っています。膠原病では、前述のように高用量のグルココルチコイドを即効性と確実性を期待して寛解導入治療として用いることが多いのですが、投与初日から起こりうる副作用の1つとして高血糖があります。インスリン受容体基質IRS-1のセリンリン酸化、肝での糖新生酵素であるPEPCKの活性化、血中有利脂肪酸とグルカゴンの上昇などによってインスリン抵抗性が惹起されることによって起こるもので、しばしばインスリン治療が必要となります。グルココルチコイド投与前のスクリーニング検査からインスリンが必要になるかどうかをリスク因子の点数化によって予測するスコアリングシステムを開発しました(Kawashima M, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2018;140:72)。また、生体信号解析がご専門の工学部の横田康成教授との共同研究で、頸動脈エコーによる新たな動脈硬化度定量に関する研究や、眼球運動と種々の疾患との関連の研究を行っています。


※詳細は岐阜大学医学部記念会館だよりをご覧ください。

研修の方針と体制

総合内科医、総合診療医、そして家庭医を育成

総合内科医を目指す若手の育成に力を注いでいます。 後期研修2年目(卒後4年目)には専門医取得に必須の日本内科学会認定医資格を取得できるように教育しています。 認定内科医取得後も引き続き、他分野にわたる疾患を経験して専門性を高め、日本内科学会認定総合内科専門医取得を目指します。 上級医師の指導のもとで学会活動にも取り組み、その成果は研修開始後5年目までの筆頭演者に授与される日本内科学会東海地方会 優秀演題賞の受賞として表れています。 そして新たに、「岐阜総合診療医・家庭医養成プログラム」が、日本プライマリ・ケア連合学会後期研修プログラムVer.2.0に認定されました。 このプログラムは大学病院、地域中核病院、在宅診療を専門とする診療所から構成されており、2015年4月から開始しています。 高度先進医療から診療所・在宅診療まで、幅広く研修出来る環境が整っています。

日本糖尿病学会認定教育施設としての取り組み

日本糖尿病学会認定教育施設として、糖尿病専門医の育成をしています。

不明熱外来/関節リウマチ・膠原病に代表される自己免疫性疾患の診療

不明熱患者の内科診断を的確に行う能力を高めることにも務めています。 当科における不明熱患者の約30%が関節リウマチ、膠原病と診断されています。 専門医の育成を含めてリウマチ学会への発表を積極的に行っています。 現在は医学部学生のリウマチ・膠原病の講義や症候学のミニテュトリアルにも携わり、関節痛、筋肉痛、発熱などといった症候の診断教育にも力を注いでいます。

学会認定資格 常勤 非常勤
総合内科専門医 5名 3名
内科学会指導医 3名
糖尿病専門医 3名 2名
糖尿病学会指導医 3名
リウマチ専門医 4名
リウマチ学会指導医 2名
内分泌・代謝科専門医 2名
内分泌学会指導医 2名
老年病専門医 1名
老年病学会指導医 1名
日本プライマリ・ケア連合学会指導医 1名
消化器内視鏡専門医 1名
アレルギー専門医 1名
アレルギー学会准指導医 1名
病態栄養専門医 1名
病態栄養指導医 1名

専門研修プログラム

岐阜大学内科専門研修プログラム(定員30名)
岐阜県下唯一の国立大学である岐阜大学医学部附属病院を基幹施設として,岐阜県医療圏・近隣医療圏にある連携施設と協力することで内科専門研修を行い,岐阜県内各医療圏の医療事情を理解し,地域の実情に合わせた実践的な医療を行える内科専門医を育成することを基本理念とします。 三つの研修コースがあります。
「内科標準コース」「Subspecialty 重点 コース」「内科・Subspecialty 並行コース」

清流の国ぎふ総合診療専門研修プログラム(定員3名)
総合診療専門研修Ⅰ(外来診療・在宅医療中心)、総合診療専門研修Ⅱ(病棟診療、救急診療中心)、内科、小児科、救急科の5つの必須診療科と選択診療科で3年間の研修を行います。

お問い合わせ

当科にて実習・見学を希望される方、入局に関するお問い合わせは下記までお願いいたします。

  • お電話でのお問い合わせ
  • 058-230-6632
  • メールでのお問い合わせ
  • sogogifu-u.ac.jp
  • ※お電話・メールともに医局長: 池田貴英 まで