SEC-SAXS実験のユーザーの流れ¶
SEC-SAXS実験におけるユーザーから見た流れを示す。
MainコントロールPCにある Data Collector から
からPilatus
設定画面を開く。検出器Pilatus
の外部トリガーをチェックする。Data Collector に必要なパラメータ
File Name Prefix
Exp.Time
Num.of Images
Home Directory
Ext. Trigger
チェック
を設定し、
START
ボタンをクリックし、injection
を待機する。あらかじめ平衡化したSECにサンプルを
injection
する。 LiquidLoader に必要なパラメータFlow rate
Void vol.
Temperature
は担当者が設定していてくれるはずなのでいじる必要はない。
** buffferを変更した後は必ずゼロ点を校正しておくこと **
Void vol
の後、X線を測定しだす。SAXS溶出プロファイルは並行して表示される。Data Collector で画面が変わったらX線測定は終了である。下段の ファイル名などの情報はコピペしてlogを残しておく。
X線の測定が終了したら、ハッチの中に入り LiquidLoader で
でセル の洗浄を行う。
SEC-SAXS実験の装置¶
正常に装置が動作している場合にはユーザーは装置制御に関して無関心でも良いが トラブルの際の参考のために装置の概要を記載しておく。
SEC-SAXS装置のnode¶
SEC-SAXS装置の構成要素は以下の通りになる。
- HPLC 装置
- X線検出器
- MainのコントロールPC/解析のPC
- SQLサーバー
- データstorageサーバー
が存在する。ユーザーはサンプルをinjectionした後に、データ計測を行い、
検出器のイメージファイルだけでなく、実験条件も含めたそれに付随するパラメータ
がSQLサーバーによってまとめられる。
実験と平行して \(I_{exp}(q)\) が計算され、 sub-i2-*_通し番号5桁.dat
として
生成される。このファイルが最も重要なデータである。
ファイル類は各run毎に以下のようなフォルダが自動的に作成される。
--- images
| *_通し番号5桁.tif :2次元の散乱画像
|- header
| *_通し番号5桁.xml :各画像取得時のパラメータファイル
|- analysis
| autorg.txt :各フラクションのRg、I(0)
| sub-i2-*.png :各フラクションのRg,I(0)の図
| sub-i2-*_通し番号5桁.dat :差分ファイル。BS値、時間で補正済み、絶対スケール化済み
|- 1D
| *_通し番号5桁.dat :単に1次元化したデータ
| i2-*__通し番号5桁.dat :1次元化の際にBS値で補正
| avrg-*_通し番号5桁.dat :*_通し番号5桁.datの平均値
|- avrg-i2-*_通し番号5桁.dat :i2-*__通し番号5桁.dat
注釈
たまにLANの調子が悪いと warning
が画面に出て *_通し番号5桁.xml
に変な値が入っていることがあるが
心配することはない。HPLC関連の情報はHPLCコントローラーのPCに、 Absorbance*.dat
として、BS値関連は
MainコントロールPCに *.ic
として残っている。
以下にアクティビティ図を示す。
全ての run
はサンプルを injection
することから始まる。HPLCのコントロールプログラム Liquid Loader は
MainコントロールPCのコントロールプログラム Data collector に司令を出し、X線データ取得が始まる。それが終了すると
ファイル類が生成される。
次に、一連のinjectionからのシークエンス図を示す。
注意しないといけないのは、 injection
したからといってすぐにX線データを取得するのではなく、 void volume
分だけ待って
X線データを取得する。
SEC-SAXS実験で考慮しないといけない条件因子¶
カラムサイズ¶
最初に考慮しないといけないのはカラムサイズである。
Superdex 200 Increase
10/300 GL
|
Superdex 200 Increase
3.2/300 GL
|
|
Bed Volume | 24ml | 2.4ml |
Flow Rate(sample) | 0.75 ml/min | 0.075ml/min |
injection volume | 25-500 μl
標準200 μl
|
4-50 μl
標準20 μl
|
Column Size | Φ1.0 cm×30 cm | Φ0.32 cm×30 cm |
Fractionation[Mr]
Globular Protens
|
1×10^4~6×10^5(Da) | 1×10^4~6×10^5(Da) |
Void volume | 5.0ml | 0.7ml |
Theoretical plates | >48000 | >48000 |
同一サンプルを同一流速で異なるカラムでSEC-SAXS実験を行った時のSAXS溶出プロファイルである。
図から明らかなように太いカラムだとBSAのダイマーピークとモノマーピークの分離がより明確となる。
しかし、太いカラムではより多くのサンプルが必要となり、希釈効果にともなうS/N比の低減などの
影響が出る。基本的には 3.2/300GL
のカラムを使用する。
放射線損傷¶
一般にはSEC-SAXS実験ではサンプルをフローさせるので通常のSAXS測定よりは放射線損傷の影響は小さいと 考えられるがゼロではない。
左図では、SAXS溶出プロファイルにおいて、最初の積分散乱強度レベルと300以降のレベルが明らかに違う。 後半部でのA280はゼロなので放射線損傷によるセルの汚れ等が影響していると考えられる。 一方、右図においては溶出前と後では積分散乱強度が同じである。
Exposure time
と Exposure period
¶
放射線損傷と関連して、どのようにX線散乱の測定を行うかが重要なパラメータとなる。 データ量からいくとSEC-SAXSをフローさせてい間連続して露光すれば最も良いが、 それだと放射線損傷が起きやすい。そこで Data Collecter は露光時間の間にシャッターを閉じて 間欠的に測定を行う。
Exposure time
:露光時間Exposure period
:露光時間+インターバル
injection
体積と濃度¶
同一母液でinjection体積を変化させた時のSAXS溶出プロファイルの変化を示す。
injection
体積を増やすとSAXS溶出ピーク幅は広がるが、別の溶出ピークと重ならなければ問題ない。
この例では#1に対する#2のピークの相対高さも変わらないが、平衡定数の大きさによっては変化する。
以下の図は各ピークにおける c で割った \(I(q)\) を表示したものである。絶対スケールに変換しているので
縦軸は同一で同じ高さにきていることがわかる。#2ピークの溶出位置がずれる理由はよくわからない。
実際には同じ形をしている \(I(q)\) を積算するのでピーク幅の広い injection
体積の大きい方はサンプル量に
みあうだけのS/Nの向上が期待できる。
injection
濃度¶
分子量にもよるが最低5mg/ml以上で10mg/ml程度は欲しい
具体的な設定例¶
3.2/300GLの場合¶
Void vol
: 0.7 ml , 実効上の溶出volume
: 2.4 mL * 0.85 =2 mL
Exposre time
: 1 sec Exposure time
:2 sec (放射線損傷を気にして1秒インターバルを入れる)
Flow rate
: 0.075 mL/min キャピラリー上では 0.4 mm/sec
計測しないといけない体積
2 (mL)-0.7 (mL) =1.3 (mL)
必要な
Num of Images
1.3 (mL)/0.075 (mL) * 60 (sec/min)/2 (sec/image) =520 frame
念の為 600 frame
10/300GLの場合¶
Void vol
: 5.0 mL、 実効上の溶出volume
: 24 mL * 0.85 =20 mL
Exposre time
: 1 sec Exposure time
:2 sec (放射線損傷を気にして1秒インターバルを入れる)
Flow rate
: 0.75 mL/min キャピラリー上では 4 mm/sec
計測しないといけない体積
20 (mL)-5 (mL) =15 (mL)
必要な
Num of Images
15 (mL)/0.75 (mL) * 60 (sec/min)/2 (sec/image) =600 frame
念の為 700 frame