コントラストの計算¶
コントラストは溶質であるタンパク質と溶媒の電子密度の差である。同じタンパク質でも 溶媒組成が変わるとコントラストが変わるのでその都度計算する必要がある。
計算は、 MULCh の contrast module(http://smb-research.smb.usyd.edu.au/NCVWeb/input.jsp)を使用する。
以下は、 25 mM Tris 150 mM NaCl 3% v/v glycerol, pH 7.5 の溶媒とBSAとのコントラストを計算する例である。
初期画面でbufferの成分数 で数を選択する。 この場合はTris、NaCl、glycerolの3種類なので
3である。 また、 は0のままでよい。
3を選択すると子ウインドウが開き、それぞれの原子組成( 組成式で分子式ではない! )、濃度(mol/L)を入力する。 化学組成を入力する際は、Mをチェックする。
次にタンパク質の情報を入力する。 この場合タンパク質は1種類であるが2種類存在するように入力することに注意する。 defaultで
Number of components in subunit 1、Number of components in subunit 2が存在するがそのままでにしておき、1と2は同一の内容を入力する。具体的には、ラジオボタンは
P、Formulaの枠内にはアミノ酸入力を、Volume (A3)の欄には先ほど求めたタンパク質1分子の体積 ではなく0.0のまま、 \(\rm{N_{molecules}}\) は1のままで良い。
全て入力したら、 ボタンをクリックする。
警告
以前はタンパク質1分子の体積を別のソフトで求めた値を入力していたが、このソフトに任した方が良い
表示が変わり、結果が表示される。沢山の情報の中で重要なのは2つの表である。
Solvent and particle information in H2OとTabulated scattering length densities and contrastsで それぞれ重要な点を明示する。Solvent and particle information in H2Oについてこの表は、1分子に含まれる散乱長を体積で割って密度を算出する際の明細が示されている。
黒く塗りつぶされた列は中性子の散乱長 \(\Sigma b_N\) と散乱長密度 \(\rho_N\) は関係ないので無視する。 また、灰色で塗りつぶされたタンパク質の行が重複しているのでこれも関係ない。
重要なのは、赤い枠で囲まれたタンパク質とbufferのX線の散乱長密度 \(\rho_x\) である。これより電子密度差 \(\Delta\rho=\rho_{sample}-\rho_{buffer}\) が計算される。コントラストの計算のみであるならば次の表のみで よいのだが RAW を用いて分子量を計算する際は次の表のみでもよい。
\[\Delta\rho=\rho_{sample}-\rho_{buffer}=\rm{(12.363-9.530)\times 10^{10} cm^{-2}=2.833\times 10^{10} cm^{-2}}\]Tabulated scattering length densities and contrasts について
この表は実際に使用するコントラストの表となる。黒く塗りつぶした行は中性子用なので関係なし。 灰色で塗りつぶされた列はタンパク質の重複で表示されているので不要。必要なのは赤枠で囲んだ散乱長密度とコントラストのみである。
