応用生物科学部 生物有機化学研究室 Laboratory of Bio-organic Chemistry 本文へジャンプ
上野 (核酸有機化学)         研究業績はこちら→


核酸医薬開発に向けた研究(1):RNA創薬を指向した修飾siRNA及び修飾miRNAの合成

タンパク質の生体における機能は多種多様であり、代謝などの化学反応を起こさせる触媒である酵素もタンパク質の一つです。DNA上の遺伝情報をもとにタンパク質は合成されます。しかし、DNAから直接タンパク質ができる訳ではなくDNA上に書き込まれた遺伝情報が一度RNAと呼ばれるDNAと類似の高分子にコピーされ、その後、RNA上の遺伝情報をもとにタンパク質が合成されます。RNAにコピーされる遺伝情報はDNA上のごく僅かな領域に散在しており、これまで、それ以外の大部分は不要なジャンク(がらくた)と思われていました。しかし、最近の研究から、DNAの大部分がRNAにコピーされており、遺伝情報を持たないRNAが、遺伝情報を持つRNAに働きかけそれらの機能を調節していることが明らかとなってきています。これはRNA を用いることにより、間接的にタンパク質の機能を制御できることを意味しており、このことから今日RNAを利用した創薬科学が欧米を中心として展開されて います。比較的小さいものであれば全てのRNAを化学的に合成可能であることから、この方法はがんやウイルス感染など様々な疾患対する新しい治療法になるものと期待されています。私たちの研究室では、新しいRNA治療薬の開発を目指し様々な機能性RNAの合成を行っています。
 本研究の一部は、日本医療研究開発機構 (AMED) 「革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業」に研究課題「組織特異的送達能を有するコンジュゲートsiRNAの創成」として採択されています。

核酸医薬開発に向けた研究(2):アンチセンス医薬を指向したパイ電子充填型人工核酸の合成

核酸は糖-リン酸バックボーンに沿って各塩基がそれぞれ水平にスタックした構造からなります。天然の核酸は、リボースと各塩基がグリコシド結合したヌクレオシドを基本単位としています。私たちの研究室では、このリボースをベンゼンで置き換えたベンゼン-リン酸骨格からなる人工核酸の合成をおこなっていま す。ベンゼン環に直接塩基を結合させることによりビアリール型の構造となり、塩基とベンゼン環の間に二面角が生じます。これにより、ベンゼン-リン酸骨格に沿って塩基をそれぞれ水平に集積することが可能となります。研究室では、本人工核酸のアンチセンス医薬への応用を目指した研究を行っています。

遺伝子検出用核酸プローブの合成

遺伝子上の1000塩基に1塩基の頻度(0.1%)で現れる一塩基多型(SNPs)は個人差の原因の一つであり、薬物代謝酵素に対する感受性の個人差の原因の一つでもあります。従って、遺伝子中のSNPsを簡便に判定できれば、個々人の薬剤感受性に応じた薬剤の適切処方が可能となります。私たちの研究室では、標的塩基をピンポイントで識別可能な糖部開環型三環性ヌクレオシドアナログの特性を利用した新規SNPs検出法の開発をおこなっています。