応用生物科学部 生物有機化学研究室 Laboratory of Bio-organic Chemistry 本文へジャンプ
柳瀬 (天然物化学)      研究業績はこちら→ 

茶カテキン類の酸化機構に関する研究


茶カテキン類は、緑茶中に含まれる代表的なポリフェノール類です。緑茶で期待される、酸化作用、消臭作用、抗菌・抗ウイルス作用等の機能性はカテキン類が担っています。 茶には日本人に馴染み深い緑茶のほかに、ウーロン茶や紅茶があります。これらは、緑茶が製造工程の最初に加熱することで茶葉に含まれる酸化酵素を失活させて成分の酸化を抑制するのに対し、ウーロン茶や紅茶はわざと成分を酸化させる(発酵という)ことで独特の色や風味を作り出している点が異なります。そしてこの発酵過程で主に酸化されるのがカテキン類です。

テアフラビン類は、紅茶特有の紅色色素です。その構造はカテキン類のB環部が酸化的に縮合した6員環‐7員環からなる特徴的なベンゾトロポロン骨格を持っています。テアフラビン類の合成及びその生成機構は、1960年代前半に報告されていますが、その機構について詳細な化学的証明はなされていませんでした。私達は、テアフラビン生成反応について詳細に研究して、生成中間体の単離や反応機構の化学的な証明を行ってきました。

紅茶中に含まれる色素成分は、テアフラビンとテアルビジンの2種類ですが、私たちがこれまで研究してきたテアフラビンは紅茶中では極わずかです。一方、紅茶色素の主成分はテアルビジンですが、これは複雑なポリマーで分離や検出が困難であるため、あまり明らかになっていません。私達は、カテキン類の酸化反応を研究することで未だ未解明のテアルビジンの謎に迫りたいと日々研究しています。



アントシアニンの分離精製とその化学反応性に関する研究

アントシアニン類は、ポリフェノール類の一種です。赤色から紫色を呈する色素成分で果物や花などに広く分布していて、赤ワインなど食品中にも含まれています。他のポリフェノールでも知られている、強い抗酸化性、抗がん作用、抗炎症作用などに加えて、アントシアニンでは(本当かどうかは分かりませんが)眼疲労回復や眼性疾患にして効果があるといわれています。

アントシアニン類の構造は、フラビリウムカチオンであるアグリコン部と配糖体部から成り、アグリコン部の水酸基やメトキシ基の数や位置の違いにより、また配糖体部の種類により数多くのアントシアニン類が知られています。しかし、多数の混合物であることに加え化学的に不安定であるために、単一成分を充分に得ることは大変です。私達は、カシスアントシアニン類をはじめとするアントシアニン類の大量分離法の研究を行い、独自の分離精製技術を活かすことで純粋なアントシアニン類を結晶としてグラムスケールで分離することに成功しました。

さらに、これまで純粋な化合物が充分に得られなかったことから、あまり研究されてこなかったアントシアニンの化学反応性について研究を行っています。アントシアニンの代表的な機能性は抗酸化作用です。私達は、アントシアニン類のラジカル酸化反応におけるメカニズムについて研究を行っています。
    


赤米の濃色化機構の解明

赤米は有色米の一種であり,果皮・種皮の部分にタンニン系の赤色系色素であるプロシアニジン類を含んでいます。プロアントシアニジン類はポリフェノールに分類される化合物群で,カテキン類が高度に重合した構造を持っています。赤米の他,ブドウや柿など植物に広く含まれており,抗酸化活性や抗腫瘍活性をはじめとする優れた食機能性が注目されている物質です。この色素成分は赤米の登熟過程において,徐々に生合成されることが知られていますが,収穫後の貯蔵期間にも色が濃くなる現象(濃色化現象)が古くから観察されています。しかし,そのメカニズムはおろか化学構造すら明らかになっていません。私たちは,これまでの研究成果からこの現象が赤米に元来含まれているプロアントシアニジン類の空気酸化による劣化現象であると推定しています。この研究はこの変化を化学の立場から明らかにすることを目指したものです。




天然物の単離・構造決定

植物や、和漢薬、また古来から食用に用いられてきた食品等の中にも、抗菌、抗癌、抗アレルギーなどの機能性を持つ有機化合物が含まれています。私達は、これらの機能性物質の研究を始めるにあたって、まず大量分離法の確立を行っています。単にクロマトグラフィーで分けるだけでなく、その化合物の持つ性質を最大限に活かすことで、効率よく分離する方法を目指しています。

 

小豆種皮色素の構造解析

小豆は古くから食品や生薬として利用されてきた植物です。小豆の赤色は,タンニン系色素であるといわれていますが,実は構造の全容は分かっていません。この研究は、小豆色素だけでなくタンニン系色素全体の解明を目指したものです。