野生動物医学研究室では,家畜や飼育・展示動物ではなく,野外に自由に生活する動物(野生動物)を主な研究対象にしています。人類はさまざまな形で野生動物と接してきました。それは,食料源,狩猟,信仰,レクリエーション,調査・研究,害獣など多様で,時代や地域によっても異なります。急速に進む過疎・高齢化により,野生動物と人との緩衝地帯として機能してきた里山の荒廃が加速しました。絶滅の危機に瀕する多くの種の保全が必要になる一方で,増えすぎた在来種や外来種の対策への社会的なニーズも高まっています。今や,野生動物に関する諸問題は深く複雑化しているのです。
このような時代にあって,社会から求められているのは,感覚的・感情的な保護運動や経済性最優先の野生動物排除論ではありません。最も大切なこと,それは冷静な科学の目を保ちながら「生物多様性の保全」を究極の目標にとらえ,自らが得意とする分野や手法で活動を続けることなのです。
このような基本認識に立ち,私たちは以下の「活動の3本柱」をもとに野生動物に関わる教育と研究を続けています。「野生動物医学研究室」は,応用生物科学部共同獣医学科の1研究室です。このため,獣医学をベースとしてはいますが,他分野の方々へも門戸を開いています。野生動物管理(ワイルドライフ・マネジメント)分野の研究や就職などに,強い関心と熱意がある学生をお待ちしています。
■活動の3本柱
1)保全生物学的研究の推進: 多様な視点からの野生動物研究を通じ,国内外における「生物多様性の保全」に貢献する。
2)人材の育成: 獣医学のみならず,生態学や保全生物学に関わる教育・指導も重視し,ワイルドライフ・マネジメントの現場で活躍できる実務者や研究者を育成する。
3)ワイルドライフ・マネジメントに関わる教育と普及啓発: 大学教育に加えてセミナーやシンポジウムなどを通じ,ワイルドライフ・マネジメントに関する考え方や手法を一般市民にも伝える。
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(注)野生動物医学研究室は,応用生物科学部共同獣医学科の所属研究室です。そのため,応用動物科学コースの学部3年次の研究室分属の際には所属することができませんが,大学院生(修士課程)は受け入れています。希望者は,大学院自然科学技術研究科
生物生産環境科学専攻 応用動物科学領域(野生動物管理学)を受験してください。 |
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