昔から、地域で伝統的に食されてきた多くの発酵食品は、地産地消の原点となるものであろう。 地域の環境にあった食品を、地域の独自の方法で保存する伝統発酵食品中には、 多くの微生物が製造に関与している。 大豆、小麦や米の発酵食品では、もとの素材中に存在するアレルギー部分は分解されており、 逆に血圧降下作用のあるγ-アミノ酪酸(GABA)等の増加が認められる。 研究調査で様々な伝統発酵食品に出会うたび、人々の「生活の知恵」のすばらしさに驚いている。
連日、マスコミでは健康食品、サプリメントなどが取り上げられているが、 利用する前に今一度、身近な食品を思い出してほしい。 日本の伝統的な食事献立のみそ汁、納豆、漬け物等を、である。 古来の発酵食品中には、クローズアップされているアミノ酸、 ペプチドやイソフラボン等、機能性成分の宝庫である。
また、照葉樹林の地域には、多種多様な伝統発酵食品があるにもかかわらず、 食生活を支える縁の下の微生物については認識がうすい。 一方、急激な食生活の変化により、発酵食品も衰退してきている。 人々の理解を深めると同時に、後世に伝えていくことが、 教育・研究の重要な仕事のひとつであると捉え、次世代のために、 遺伝子操作される前の食由来微生物を保存することに努めている。
長野宏子「今もあたらしい伝統発酵食品」
(2005年6月28日岐阜新聞研究室から大学は今)