腫瘍病理学教室
岐阜大学大学院 医学研究科 腫瘍制御学講座
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腫瘍病理実習書
その3
TSH 1809 Renal cell carcinoma
この標本は淡明ないしは好酸性の細胞質をもつ腫瘍細胞の増殖からなる淡明細胞型腎細胞癌である。組織学的には血管性間質に囲まれ、胞巣を形成して増殖する。明瞭な腺腔形成傾向に乏しい胞巣構造や、明らかな内腔を形成する腺管構造、あるいは大小の嚢胞を形成する。境界は明瞭で、大型の立方状・円柱状・楔状、あるいは多角形を呈する。細胞質は淡明で、脂質およびグリコーゲンに富むが好酸性顆粒を呈することもある。
73-194 urotherlial carcinoma
この標本は、正常尿路上皮に類似する粘膜細胞からなる癌で尿路上皮癌である。膀胱癌の95%がこの型をとっており、細い血管結合織をコアとする乳頭状構造をとるものが多く、腫瘍上皮細胞は7層以上となる。異型度は細胞異型おおび構造異型の両方から付けられ、異型度分類を評価したときにこの標本はG3であると考えられる(G0〜G3で評価され、3に近いほど異型度が大きく予後が悪い)。細胞配列の乱れはほとんどなく、細胞異型度も軽度である。
830 Amyloidosis+Acute pyeronephritis(H.E.)
これは、急性腎孟腎炎であり、女性に多い疾患であるが、解剖学的に尿道が短く感染しやすい構造になっているためである。この腎炎は腎実質内と上部尿管への微生物の直接侵入により起こる。組織学的には罹患した腎実質においてびまん性の急性炎症細胞、特に多核白血球の浸潤を認め、さまざまな程度の尿細管炎、尿細管壊死、微小腫瘍を伴う。拡張した尿管が好中球で満たされるのが特徴である。 糸球体をみるとアミロイドが分葉体に沈着しており、アミロイドーシスの形成が確認される。アミロイドーシスは繊維状の構造をもつことが多く、病型については主に全身性と限局性アミロイドーシスの2種類存在する。
40-2 Infraction
これは、腎梗塞であり、大動脈や腎動脈の粥状硬化症が関与して発生する。梗塞巣では中心壊死部、辺縁壊死部、辺縁部の3つの部分に分けられる。中心部分では発症のごく初期で糸球体や尿細管周囲の毛細血管は血液で充満する。尿細管には著変はなく、尿細管上皮が基底膜からわずかであるが剥離を示す。中心部分の辺縁では多形核白血球が12時間で出現し、数日後崩壊しはじめる。そのため、中心部分に対して辺縁壊死部分では外側に多形核白血球が出現し強い壊死像を示している。時間とともに線維芽細胞、内皮細胞などが壊死組織に入り込み始め、結果として線維性瘢痕組織を示す。
T211 Polyarteritis nodosa (結節性多発動脈炎)
この標本は結節性多発動脈炎であり、腎臓における中・小型の筋性動脈に炎症が起こっている。PNはウイルスなどへの感染症やANCAなどによって引き起こされる。顕微鏡下では、血管壁が全周性に侵され壁組織が好酸性に染まったフィブリノイド壊死、血管壁の中膜構造が崩壊し周囲の組織と均一化されている像などが観察される。炎症血管の周囲では好中球、リンパ球、線維芽細胞などの浸潤を伴う炎症反応が起こっている。
4796 DIC(播種性血管内凝固症候群)
DICは、重篤な感染症などによって生体内における凝固系が過度に活性化され、細小血管内に播種性に微小血栓形成が起こり虚血性臓器障害を起こす症状である。この標本は腎臓のDICであるが、一部の糸球体内血管に好酸性に染色されるフィブリン凝固が見られ、それに伴い血管が努張している様子が観察される。尿細管壁の崩壊、壊死が目立つが、これは虚血性臓器障害によるものであると考えられる。
108-2 Benign prostatic hypertrophy (BPH;前立腺肥大症)
前立腺肥大症は高齢男性に多発する疾患で、50歳以上では50%、80歳以上では90%に認められる。肥大の原因は細胞数の増加であり、本疾患は腺、線維性間質、平滑筋がさまざまな割合で増加する。 この標本では、線維筋腺性肥大が観察される。腺は一部では円柱上皮が温存されているが、上皮細胞の過形成が起こり、のこぎりの歯状に増生しているのが分かる。しかし、核異型や分裂像、核内封入体などは乏しく、腺の二層性も温存されているため腺癌とまでは言えない。間質には好酸性に染色される平滑筋と線維性成分が増生している。
981881 Metastasis of urothelial carcinoma,Penis
移行上皮癌は正常尿路上皮に類似する細胞及び組織構造を示すもので、乳頭状の配列を示すことが多いが、隆起性や潰瘍形成性のものもある。 標本は移行上皮癌が陰茎に転移したものである。大小不同の腫瘍細胞が見られ、核異型も強い。また、核分裂像も認められ、悪性度は高い。
2771-1 Diabetic nephropathy(糖尿病性腎症)
糖尿病性腎症は腎症前期、早期腎症期、顕性腎症期、腎不全期、透析療法期の5つの病気に分類されている。組織学的にはT型及びU型(インスリン依存性及びインスリン非依存性)において同様な進行を示すと推測されている。 標本では、メサンギウム基質の増加と糸球体基底膜の肥厚がみられ、結節性病変を呈している。
HS39-2 Kidney Fungal embolism(真菌塞栓症)
真菌感染は免疫不全者に最も一般的に見られ、カンジダ種が最も多い。クリプトコッカス、アスペルギルス、ムコールなどの真菌も稀に原因となる。 標本では、腎糸球体内に真菌塊を多く認める。
99-2 Prostate Well differentiated adenocarcinoma + BPH (前立腺高分化腺癌+良性前立腺肥大症)
前立腺の高分化腺癌は、腺管がきわめて明瞭で、均一な管状腺管からなる。腺管の構造は二層構造なので、癌の見分けるポイントとして裏打ち細胞の有無があげられる。腺腔形成の単純腺管を主体とする比較的均一な成熟組織の優勢は腺癌で大腸管性の腺癌では部分的に乳頭状構造を示すことも少なくない。 前立腺の特異な組織分類としてGleason分類がある。スコアは最も優勢なパターン(primary pattern)と次に優勢なパターンの悪性度(1〜5)の合計で表わされる。大小不同な管状構造をなすものはスコア3、その管状が癒合・索状構造を示すものはスコア4、腺腔形成の極めて不良な前立腺上皮細胞の不規則な索状浸潤性増殖ないしは充実性増殖を示すものはスコア5である。本例は最も優勢なパターンが3であるが、次に優勢なパターンが見つからないので、3+3でGleasonスコアは6ということになる。
T1 urothelial carcinoma Urinary bladder (膀胱の尿路上皮癌)
尿路上皮は、通常3〜6層の細胞から成り、基底膜の細胞は密で立方状、中間層の細胞はより円柱状で核は基底膜と直角に配列し、最表層の細胞は傘細胞あるいはドーム細胞、umbrella cell、被蓋細胞と呼ばれる細胞が配列する。尿路上皮が7層以上あると癌だと言える。組織学的に膀胱の移行上皮癌は以下の組織学的異型度によって分けられる。 G1:乳頭状突起は腫瘍性の移行上皮で覆われているが、核の多形性と細胞分裂像が極めて軽度である。乳頭は長く繊細で、乳頭の癒合は部分的、限局性である。 G3:核の多形性が著明で細胞分裂の頻度が高く、乳頭の癒合が見られる。時に奇怪な細胞が出現し、部分的に扁平上皮への分化がしばしば見られる。 G2:悪性度1と3の中間。 本例の膀胱粘膜内側に乳頭状に増殖をしており、その表面の尿路上皮6層をこえており、比較的細胞は均一で傘細胞も見られる。しかし、2枚目の画像が分かる通り筋肉への浸潤が見られ、浸潤している核は大きく密に増殖していることから、G2だと考えられる。
99-1 Kidney Gouty + Chronic pyeronephritis (慢性腎盂腎炎と痛風腎症)
瘢痕部に線維化した間質に囲まれやせ細って拡張した尿細管と慢性炎症細胞が見られる。最も特徴的な尿細管変化は、甲状腺濾胞のコロイドに類似した好酸性硝子円柱を持つ上皮の高度に委縮した尿細管である。 また本例は痛風腎症も伴っており、痛風結節が見られる。尿酸は水溶性で通常のパラフィン切片では溶出するため、確認することはできず、溶出した跡が見られる。
108‐1 Chronic cystitis
膀胱炎はほとんどの場合、下部尿路からの二次的な感染によって起こる。膀胱感染の要因は患者の年齢と性、膀胱結石の存在、膀胱流出路の閉塞、糖尿病、放射線治療と化学療法である。女性は尿管が短いため、膀胱炎の危険度が高い。また、膀胱カテーテル留置による感染のリスクも高い。 標本においてはリンパ球の浸潤がみられ、小血管や線維成分の増生がみられる。
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