研究紹介
病理学における研究は、遺伝子レベルの基礎的なものから人体摘出検体を材料とする臨床病理的なものまでの広範な領域を占めてます。教室の伝統的な主要テーマである、腫瘍の発生から予防までの病理学的研究を継続して研究するとともに、再生医療、幹細胞医学にも関連した新規病理学分野の研究を行っています。
現在進行中の具体的研究事例
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(1) 遺伝子改変マウス作製技術を用いた発がんと幹細胞の分子機構解明
ES細胞での相同組み換え技術を利用した,コンディショナルノックアウトマウス,BAC(人工染色体)を用いたたトランスジェニックマウス,遺伝子発現誘導マウスを作製した上で,腫瘍発生のメカニズムと幹細胞の役割の解明を目指しています。また、臨床業務において、病理学は全身臓器の悪性腫瘍を診断対象としています。この特性を活かし、臓器別にではなく消化器癌や脳腫瘍など、腫瘍発生や腫瘍微小環境の共通性など幅広い視野を持ち、研究しています。
(2) 全身臓器を対象とした組織幹細胞の同定と疾患における役割の解明
上記に述べた遺伝子改変マウスの作製を行い、組織上での組織幹細胞の同定に取り組んでいます。細胞系譜法(lineage tracing法)を用いることで、幹細胞の由来・運命、さらには多くの疾患での役割を明らかにできます。病理学に基づいた多数の悪性腫瘍モデルの経験を持つ腫瘍病理では、組織幹細胞を同定するだけでなく、疾患の病態をも詳細に解析できます。
(3) 再生医療,幹細胞医学に関連する腫瘍発生の解明とその予防
再生医学の臨床応用が進んでいない理由の一つに,in vitroでの知見が必ずしもin vivoでは実現できていないこと,そして,ES細胞あるいはiPS細胞を組織再生に利用した場合,しばしば奇形腫として正常組織まで破壊する腫瘍性増殖をきたすことがあげられます。当教室では腫瘍病理学の知識をもとに再生医学の臨床応用の際に問題となる腫瘍発生を,がん幹細胞(cancer stem cell)と関連させて研究しています。
(4) 神経再生研究のための神経障害動物モデルの開発
神経軸索内を断片化DNAがダイナミックにシナプス部まで移動することを神経のアポトーシスに特異的現象として報告し,一過性脳虚血に伴う海馬CA1領域の遅発性細胞死がアポトーシスであることを証明しました。神経疾患モデルとしての扱いやすさから,マウス網膜に注目しています。神経細胞死とアポトーシスの関係を明らかにする一方,視細胞に対し選択的に傷害を与える新たなモデルを確立し,神経再生医学への応用としました。
(5) 悪性腫瘍に対する放射線治療における病理組織形態の変化とその分子メカニズムの解明
悪性腫瘍に対する放射線治療の果たす役割は年々拡大しています。しかし、放射線の腫瘍細胞への有効性とその耐性獲得のメカニズムは未だ不明です。岐阜大学放射線科と腫瘍病理との共同として、日本では未だ数少ない基礎放射線病理学を新規分野として開拓しています。
(6) 臍帯炎と周産期合併症の関連性の解明
岐阜大学医学部附属病院で,分娩あるいは帝王切開を受けられた方はこちらをご覧下さい。
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